開発中から盛んにSNSで宣伝されていたことで、自分の頭にも知らず知らずに刷り込まれていたのかもしれない。
というわけで、ついポチっと購入してしまった。Steam版(PC版)の「Full Stride」。
【Steamサイト】https://store.steampowered.com/app/4181970/Full_Stride/?l=japanese
高校から大学までの間にプレイステーションで遊び倒していた「ギャロップレーサー」というゲームがあったのだが、当たり前とはいえ、全然違うゲームだった。
まず、ゲーム中の馬の動きが、良い意味で”ゲームっぽくない”。
リアルかどうかと言われれば、自分は馬でレースを走ったことはないので(乗馬でまたがったことはある)わからないが、ギャロップレーサーのように簡単に馬が動かないところがリアルっぽい気がする。つまり、自分が馬を動かしているというよりは、馬に動くよう促しているイメージだ。
馬は車ではない。ハンドルやアクセル、ブレーキでキビキビ動く”乗り物”ではないわけで、馬が騎手の言うことを聞かなければ思い通りに動かすことなどできないのだ。
「馬は動物である」という点を考慮したのか、加速、減速、左右(横)の移動など、ゲームとはいえ思うように馬が動かないこともある。また、無理やり動かそうとすると馬が”イヤイヤ”してバランスを崩すこともある。馬が”かかる”ことはギャロップレーサーでもあったと思うが、よりリアリティを出そうとした結果かもしれない。
巷ではこのゲームが難しいという評価もあるようだが、1つには馬の動かし方にコツがいるという点があるのかもしれない。自分も、最初は戸惑ったが、やり進めていく中でうまく馬が動いてくれたときの快感を感じて楽しめるようになっていった。
そして、このゲームの面白いところは、スタミナとスプリントという2つの要素が与えられていることだ。
スタミナは、当然ながら馬の体力のことで、レース中に徐々にスタミナが減っていって、ゲージが0になるとスタミナ切れで失速するというパラメータだ。だから、できるだけスタミナがガツンと減らないように馬のスピードや機嫌をコントロールする必要がある。これはギャロップレーサーにもあった要素だ。
一方、スプリントというのは、ギャロップレーサーにはなかった要素で、Full Strideを攻略するためのもう1つのポイントになる。
スプリントとは、要するに瞬発力のことで、スピードアップやスピードの維持に必要なパラメータなのだ。このスプリントも、スタミナと同じようにレース中に徐々に減っていって、ゲージが0になるとスピード(速度)がガクンと落ちてしまう。
つまり、スタミナもスプリンも勝負所までは十分に温存し、最後の直線からゴールまでの間に使い切る、というのが最適な管理なのだ。では、スタミナとスプリントの決定的な違いは何か?
私の解釈では、スタミナは有酸素性エネルギーのことで、スプリントは無酸素性エネルギーのことだと考えられる。
有酸素性エネルギーは、その名のとおり酸素を体内に取り込むことで生まれるエネルギーで、有酸素運動と言われるような持続的で比較的強度の低い運動時に使われるエネルギーである。わかりやすい例は、マラソンだ。トップスピードはそこまで速くないが、一定の速度を長い時間キープする必要があるマラソンでは、酸素をしっかり取り込み、心臓から送り出された血液によって体の隅々に酸素を送り続けることで、有酸素性エネルギーを有効に使うことができる。いわゆる「スタミナ」や「心肺機能」というのは、こういった運動能力に必要な要素なのだ。
一方、無酸素性エネルギーに酸素や心肺機能は必要ない。必要になるのは、グリコーゲンという筋肉に蓄積されたエネルギー源である。瞬間的なスピードを必要とする場面では、筋肉中のグリコーゲンが分解されてすぐにエネルギーを生みだすので、有酸素性エネルギーよりも素早く筋肉にエネルギーを供給できる。わかりやすい例は、100mなどの短距離走だ。できるだけ早くトップスピードに乗る必要がある短距離走では、短時間に莫大なエネルギーが必要になるので無酸素性エネルギーが動員されるわけだ。
「だったら、無酸素性エネルギーが無限に供給できれば最強じゃないか」と思ってしまうが、そうはならない。無酸素性エネルギーを作り出すための材料であるグリコーゲンの貯蔵量には限界があるからだ。筋肉中のグリコーゲンを使い果たしてしまうと、無酸素性エネルギーは使えなくなるので、有酸素性エネルギーでそれを補う必要がある。つまり、運動は続けられるがトップスピードを出せなくなってしまうのだ。
Full Strideをやっていると、スプリントよりもスタミナの方が早く0になるパターンと、スタミナよりもスプリントの方が早く0になるパターンがある。スタミナが0になっても、スプリント(無酸素性エネルギー)があれば最後までトップスピードで走り切れるが、スプリントが0になってしまうと、いくらスタミナが残っていてもスピードが出ずに勝負所で抜かれてしまうことになる。
いずれにしても、馬の動きとスプリントという要素が、このゲームの奥深さと難しさを生み出している気がするのである。ただ難点は、うまく乗れた時とうまく乗れなかった時の落差が大きすぎるところだ。騎手の腕だけでそんなに結果が変わるはずないのだが、そのあたりのゲームバランスは今後改善されることを期待したい。