一目見ただけでわかるメムロボブサップのヤバさ――ばんえい競馬の魅力発見

一目見ただけでわかるメムロボブサップのヤバさ――ばんえい競馬の魅力発見

「食わず嫌い」というのか、正直に言って、ばんえい競馬には全くと言っていいくらい興味がなかったし、レースを観ようともしていなかった。

なぜなら、「どうせ面白くないし、普通の競馬レースのほうがスピード感があって面白いでしょ」という感じで、ばんえいレースをスポーツの1つとして認めない自分がいたし、いわば”子どもの遊び”的な半ば見下したような評価をしていたかもしれない。

今回、その評価が間違いだったと気づいた。

実際に映像でばんえいレースをじっくり見たのだが、まずレースの駆け引きが面白いし、最初から最後までエキサイティングでもある。

ばんえいレースは、たった200mの距離しかない。

「200mなんて短い距離で駆け引きなんてあるの?」という疑問もあるだろう。ただ、その200mの距離を2分や3分もかけて走り切るのである。天皇賞や有馬記念と同じくらいの時間をかけて200mを走り切るのがばんえいレースなのだ。

時速にして6km/h。なぜ、ばんえいレースの馬たち、いわゆる”ばん馬”は成人の歩く速度と同じような速さでしか走れないのか?それは、馬が重い重いソリをひきながらゴールを目指すからだ。

そもそも、ソリは鉄製で重さが450kgもある。ここにジョッキーが乗るから、全体では500kg以上の重量物を馬がひいて走るのだ。ただ、ばん馬自体が1トンもの馬体重がある超大型馬なので、彼らのパワーは計り知れないところがある。

ここで大事になるのがペース配分

平地レースにも逃げや追い込みがあるように、ばんえいレースにも戦法がある。スタートから勢いよく飛ばしてしまうと、途中でスタミナが切れてゴールまで走り切れなくなる。疲れて一度止まってしまうと、そこから重いソリを動かそうとしてもビクともしなくなるのだ。実際、膝をついて動けなくなってしまう馬の姿も珍しくない。

だから、騎手は前に進もうとする馬をあえて止まらせて、いったん力を溜めてから、障害(坂)を一気に登らせるようなテクニックを使う。

爽快さやスピード感はないが、まあ、手に汗握るエキサイティングなレースが行われているのである。

ばんえい競馬の面白さについては、TBSアナウンサーの安住紳一郎さんが自身のラジオ番組の中で秀逸な解説を披露していたので、そちらを参考にしていただきたい。

【日曜天国 傑作選】「 爽快感ゼロの競馬」(YouTubeチャンネル 安住紳一郎の日曜天国【公式】より)

そして、私が驚愕したばんえいレースが今年2026年に行われた「ばんえい記念」

とにかく、まずはYouTubeのレース映像を見てほしい。


第58回ばんえい記念(YouTubeチャンネル ばんえい十勝【公式】より)

「ばんえい記念」とは、わかりやすく言うとGⅠ有馬記念のような位置づけで、毎年3月に行われるばんえい競馬の最高峰レースである。格式、賞金額ともにトップを誇るこのレースの開催地はもちろん、国内で唯一ばんえい競馬が開催されている帯広競馬場である。

ばんえい記念は、各出走馬に課される斤量(ソリと騎手の重さ)が最高クラスで、なんと1トンもの重量をばん馬たちはひいて走るのだ。先ほどいったように、通常であればソリは500kg程度の重さだが、これに重りをドンドン追加して2倍の重量にするわけだ。

今年のばんえい記念を勝ったのがメムロボブサップという10歳馬。なんと、このレースが118戦目(!)で通算59勝目、重賞レースは27勝目という信じられないような成績だ。昨年のばんえい記念も制していたので、これで連覇達成。レース自体は3勝目となった。

メムロボブサップは昨年のばんえい記念を勝利した際に、通算収得賞金が1億円を超えた。これは2006年にスーパーペガサスという名馬が達成して以来の偉業で、ばんえい競馬で”1億円ホース”になった馬はメムロボブサップを含めて過去8頭しかいない。

現時点でメムロボブサップの通算重賞勝利数と通算収得賞金額は歴史上ナンバーワンであり、まさにばんえい競馬史上最高の競走馬といってもいいかもしれない。

数字はもちろん凄いのだが、もっと驚いたのが先述した2026年のばんえい記念。

1トンもあるソリをひいているにもかかわらず、第2障害(2つ目の坂)を越えて降りた瞬間にメムロボブサップが数秒だけ”走った”のだ。しかも、いわゆるトロット(速歩)ではなくて、キャンター(駈歩)で1トンのソリを引っ張っていた。歩いてソリをひくのがやっと、という私の常識を覆す衝撃的な映像に、私は思わず笑ってしまった。

何というアスリートだ。

ばん馬のルーツは明治時代以降の北海道開拓で使われていた西洋の大型馬たち。トラクターや大型トラックなどがなかった時代に、彼らは人間のために一生懸命働いてくれていた。モータリゼーションによって働く場を奪われた彼らは、今、アスリートとして我々に興奮と感動を与えてくれている。

レース実況にもあったとおり、まさに「世界一長い1ハロン(200m)戦」という唯一無二のばんえい競馬。

私はすっかり魅了されてしまった。

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