ディープインパクトとブラックタイドは全兄弟であっても全く異なるDNA(遺伝子)をもっている

ディープインパクトとブラックタイドは全兄弟であっても全く異なるDNA(遺伝子)をもっている

有名な話だが、ディープインパクトとブラックタイドは全兄弟である。ブラックタイドが1つ上の兄、1つ下の弟がディープインパクトで、当然ながら、父サンデーサイレンス×母ウインドインハーヘアという血統構成は2頭とも同じである。

勘違いしている人も多いかもしれないが、ディープインパクトとブラックタイドがもっているDNA、言い換えれば2頭がもっている遺伝子というのは、お互いに全く異なっている。

兄弟姉妹間で全く同じDNA(遺伝子)をもつのは、一卵性双生児の場合だけである

あなたも兄弟や姉妹がいる場合、よく考えてみてほしい。「果たして、(相手が)自分と全く同じDNAをもっているのだろうか?」と。同じ親の子とはいえ、顔も違えば、性格も体格も、いろいろな才能や能力も違うことをよくわかっているはずだ。

実は、ディープインパクトには栗毛の産駒が存在しない。ディープインパクトは鹿毛だが、栗毛の仔を生むためには自身が栗毛の遺伝子をもっていないといけないので、おそらくディープインパクトには栗毛の遺伝子がないのだろう。

一方、ブラックタイドからは栗毛の産駒が生まれている。これはブラックタイドが栗毛の遺伝子をもっていたからであって、この事実だけ見ても、ディープインパクトとブラックタイドの遺伝子が異なっていることを実感できるだろう。

なぜ同じ兄弟であっても異なる遺伝子をもつことになるのか、といえば、それは同じ父親の精子であっても、精子ごとにもっている遺伝子が異なるからであり、同様に、同じ母親であっても、卵子ごとにもっている遺伝子が異なるからである。

つまり、同じサンデーサイレンスの精子であっても精子ごとに遺伝子が異なるわけだから、サンデーサイレンス産駒ごとに父から受け継いでいる遺伝子は異なるわけで、ディープインパクトもブラックタイドも、またフジキセキもネオユニヴァースもゼンノロブロイも、それぞれに異なる遺伝子をサンデーサイレンスから受け継いでいるわけである。

母についても同様だ。ディープインパクトとブラックタイドの全兄弟同士はもちろん、レディブロンド(父Seeking the Gold、レイデオロの祖母)やニュービギニング(父アグネスタキオン)といった半姉や半弟たちも、互いに異なる遺伝子をもった卵子から生まれているからこそ、同じウインドインハーヘアの仔であったとしても母から受け継いでいる遺伝子はそれぞれに異なるのである。

周りくどい言い方になったが、とにかく、ディープインパクトとブラックタイドは全く異なる遺伝子をもった種牡馬同士ということになるから、その子どもたちの特徴が互いに似ていなかったとしても自然なことなのだ。先述の栗毛の産駒が生まれるかどうか、ということもその1例だが、その他にも産駒の性格や体格、距離適性、絶対的な競走能力なども2頭の間で違いが出てくる。

ブラックタイドの代表産駒といえば、やはりキタサンブラックだろう。遅咲きだったがGⅠ7勝を挙げて18億円以上も稼いだところなど、ブラックタイドの現役時代を考えれば想像もつかないような大出世である。

一方、ディープインパクトの代表産駒といえば・・・たくさんいて絞り切れない、という印象をもつ人が多いのではないか。逆に言うと、キタサンブラックのような突き抜けた存在がいない、もっと言えば、父ディープインパクトを超えるような名馬が生まれなかったとも考えられる。ジェンティルドンナやコントレイルといったクラシック三冠馬もいるが、「父を超えた存在」と言えるかどうかは微妙だ。

ただでさえディープインパクトとブラックタイドの全兄弟同士でも遺伝子が異なっているのに、同じ種牡馬の精子同士ですら遺伝子が異なっているわけである。さらに、どちらの種牡馬の産駒であろうと父だけでなく母からも遺伝子を受け継いでいるわけだから、父同士が全兄弟だからといってもキタサンブラックとコントレイルでは受け継いでいる遺伝子に相当の違いが生じているはずなのである

そして、親からどんな遺伝子を受け継ぐかは完全にランダムに決まる。いわば”ガチャ“のようなシステムである。

サンデーサイレンスとウインドインハーヘアの間から2頭の名馬(名種牡馬)が生まれたということは、サンデーサイレンスにもウインドインハーヘアにも、それぞれのガチャ(遺伝子)に”当たり“がたくさん含まれていたのだろう。そして、父と母から”当たり”の遺伝子を受け継いだディープインパクトとブラックタイドにも、たくさんの”当たり”を含んだガチャが用意された。

キズナやコントレイルといった”当たり”をコンスタントに出したディープインパクトに対し、”当たり”は少なかったが、キタサンブラックという1発の”大当たり“を出したブラックタイド。

確かに、キズナやコントレイルは種牡馬としてもコンスタントに”当たり”を出しているが、まだ”大当たり”は出ていない。しかし、キタサンブラックは早くもイクイノックスという”大当たり”を出している。現役のクロワデュノールもまだまだ活躍しそうな雰囲気である。

ディープインパクトとブラックタイド。全兄弟だが、”当たり”の数や大きさを見ても、親から受け継いだ遺伝子は確かに違うようだ。もしかすると、ディープインパクトを超えるような名馬はブラックタイドの子孫から現れるのかもしれない

【参考書籍】
生物学・遺伝学に基づくサラブレッドの血統入門(堀田茂、星海社)

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