先週は2024年初めての中央GⅠフェブラリーステークスが開催されました。いよいよ、春のGⅠ戦線が始まるということで、ウキウキしているKBです。
さて、今回はそのフェブラリーステークスの回顧をします。
レース結果は、まったく予想もしなかった大波乱に。
今回は、大波乱の一因となったオメガギネスの”過大評価”について考察しました。
レース展開
巨漢馬15番ドンフランキーが抜群のスタートとスピードで一気にハナを奪いました。
スタートが懸念された2番シャンパンカラーはやはり出遅れましたが、一気に挽回して中団まで押し上げます。
そして、1番人気の5番オメガギネスは予想どおり先行策をとる中、2番人気の14番ウィルソンテソーロは気合をつけて2番手のポジションをとりにいきました。結果的に、このウィルソンテソーロの積極策がレースのポイントになりました。
4番ドゥラエレーデも外によれながら先行争いに加わり、ペースが一気に上がります。勝った9番ペプチドナイルも先団に加わりました。
7番ガイアフォースは思ったよりも前には行かず、8番セキフウはいつもどおり後方待機策をとりました。
15番ドンフランキーが先頭で向正面を進み、これに9番ペプチドナイルを含む4頭が追走。ハイペースによって馬群は縦長になりました。
5番オメガギネスは先団に加われず7番手あたり。7番ガイアフォースがその後ろにつけて、8番セキフウは後方3番手で脚をためていました。
馬群は縦長のまま第3コーナーに向かいます。
前半800mはなんと45秒6!15番ドンフランキーの快速に14番ウィルソンテソーロら人気馬が競りかけたことで超ハイペースになりました。
そんな中、9番ペプチドナイルは悠々と4番手外目に出していつでも仕掛けられる態勢に。ハイペースの中、前の馬の中で一頭だけ余裕がある走りです。
7番ガイアフォースは中団のまま。8番セキフウはハイペースについていけず、前からかなり離された後方3番手です。
15番ドンフランキー先頭で第4コーナーをカーブしていきます。ここで、後方3頭を除いて馬群が少し詰まってきました。
先団にいた1番イグナイターは内側から、14番ウィルソンテソーロと9番ペプチドナイルは外側からドンフランキーに並びかけようとします。4番ドゥラエレーデも5番オメガギネスもこれについて行きたかったと思いますが、思いのほか手ごたえが悪く、モタモタとしていました。
7番ガイアフォースも本当は早めに先頭に並びかけたかったと思いますが、やはりついていけません。ガイアフォースはここで無理をしなかったことが、結果的にはいい方向に向きました。
4コーナーから直線に向くと、馬群は一気に横に広がりました。
ハイペース逃げていた15番ドンフランキーはまだまだ手ごたえがあり、早めに並びかけたかった14番ウィルソンテソーロら後続馬たちはモタモタして捕まえにいくことができません。しかし、9番ペプチドナイルだけは絶好の手ごたえで今にも直線を突き抜けそうな勢いでした。
5番オメガギネスはこの時点で一杯になり、ズルズルと後方に下がっていきます。
7番ガイアフォースは中団から外に持ち出して直線での末脚勝負にかけていました。
ハイペースの追走に苦労していた8番セキフウは、同じく後方にいた13番レッドルゼルとともに大外に持ち出し、「ここから届くのか?」という位置です。
残り200mまでは15番ドンフランキーが先頭で粘っていましたが、この馬のリードはここまで。9番ペプチドナイルが外から交わして一気に先頭に立ちました。
14番ウィルソンテソーロ、4番ドゥラエレーデはハイペースがたたって全く伸びません。
先行馬に代わって、後方にいた10番タガノビューティー、7番ガイアフォース、8番セキフウが外から一気に追い込んできました。さらに、内からは同じく11番キングズソードも伸びてきます。
しかし、ペプチドナイルの脚色は衰えず、そのまま先頭でゴールイン!
2着争いは接戦でしたが、7番ガイアフォースが最後にグイっと伸びて2着に滑り込みました。3着は写真判定の末、13番人気のセキフウが入り、3連単は153万円という大波乱の結果になりました。
1番人気のオメガギネスはなんと14着に惨敗。2番人気ウィルソンテソーロは8着、3番人気ドゥラエレーデは12着と人気馬総崩れ(一時X(旧Twitter)のトレンドワードに)。
レース映像はこちらをご覧ください。
各馬の評価と今後
勝ったペプチドナイルは今回が初マイルでした。これまで1,700mから2,100mの中距離ダートで活躍していたため、マイルへの距離短縮が疑問視されていたと思います。結果的には、マイル適性が異常に高かったといえるでしょう。
それと、重賞未勝利の中でよくGⅠを勝つことができたと思いますが、ペプチドナイルは重賞勝利はないものの、リステッド2勝とオープン特別1勝の実績があります。この馬が同じく重賞未勝利のオメガギネスよりもずいぶん低い評価になっていたことに私は違和感を覚えます。
もう1つペプチドナイルの好走要因はパサッパサの乾いた馬場ではないでしょうか?この馬はどうも重馬場や不良馬場が苦手なようで、前走の東海ステークスもそれが敗因のような気がします。オメガギネスは逆に乾いた馬場よりも湿った馬場が得意のようですが・・・。
2着のガイアフォースは、実績だけでいうと出走馬の中で1、2を争う馬でしたが、初ダートがどうなのか判断が難しかったと思います。結果的に、ダート適性も高かったということでしょう。しかし、この馬にはなんとかして大きなところを勝たせてあげたいですね。
3着のセキフウは、直線で全く視界に入らない位置にいたのですが、いつの間にかスルスルと上がってきて気が付いたら3着に。昨年8月のエルムステークスを素晴らしい末脚で勝ったときには「強いな」と思いましたが、その後成績が上がらずに評価が下がってしまいました。2年前のユニコーンステークスでタイム差なしの2着だった馬なんですけどね。
4着のタガノビューティーは、一瞬2着に入ったかと思うほど素晴らしい末脚でしたが、結果的に最後に脚が止まってガイアフォースとセキフウに抜かれてしまいました。この馬を狙っていた方も多かったと思いますが、さぞ悔しい思いをしていることでしょう。
5着のキングズソードは、馬体重も増えていたし、パドックでも太く見えました。あれではなかなか切れる脚も使えなかったと思いますが、結果的に5着にまで入れたのはこの馬の実力でしょう。目指すは帝王賞でしょうか。中距離ではかなり手ごわい馬だと思います。
「人気馬総崩れ」は馬券を勝った人に原因があるのでは?
今年のフェブラリーステークスは「大波乱」となりました。しかし、競馬関係者、もっといえば競走馬自身の気持ちになって考えると、「いや、勝手に大波乱って言われても・・・」という感じではないかと。
つまり、人気馬が総崩れになった原因は、「実力以上に人気を集めてしまった馬が単に勝負で負けただけ」ということではないでしょうか?
そうだとすれば、「人気馬総崩れ」の原因は人気馬の馬券を買いまくった競馬ファンということになります。
私自身、馬券は得意ではありません。そして、今回のフェブラリーステークスではウィルソンテソーロとドゥラエレーデのワイド馬券も買っていました(オメガギネスは買いませんでしたが)。そんな私がただこう言っただけでは全く説得力がありませんので、今回の「現象」を少し掘り下げて考察してみたいと思います。
客観的に見ておかしいのはオメガギネスが1番人気だったこと
まず客観的な事実をもとに、今回の人気が適正だったのか検証してみます。次の表を見てください。
馬名 | オメガギネス | ウィルソンテソーロ | ドゥラエレーデ | ペプチドナイル | ガイアフォース |
単勝人気 | 1人気 | 2人気 | 3人気 | 11人気 | 5人気 |
着順 | 14着 | 8着 | 12着 | 1着 | 2着 |
GⅠ実績 | 初出走 | チャンピオンズC2着など | ホープフルS勝ちなど | 初出走 | 安田記念4着など |
ダート実績 | リステッド勝ちなど | 重賞勝ち多数 | チャンピオンズC3着など | リステッド2勝など | 初ダート |
マイル実績 | リステッド勝ち | 2勝クラス勝ちなど | 初マイル | 初マイル | 安田記念4着など |
前走着順 | 東海S2着 | 東京大賞典2着 | 東京大賞典3着 | 東海S6着 | チャレンジC6着 |
乗り替わり | あり | あり | なし | なし | あり(調教で騎乗) |
競馬を真剣に予想する人はもっと詳しく馬を見ているかもしれませんが、直接的に人気に関わりそうなわかりやすい指標を使って上の表で各馬を比較しました。
これを見ると、オメガギネスが単勝3.2倍の1番人気になったことに対してあらためて疑問を感じてしまいます。ふつうに、ウィルソンテソーロが1番人気でよくないですか?(負けましたが)
予想家やユーチューバーがオメガギネスを猛プッシュしていた訳でない
オメガギネスが1番人気に推された原因として1つ思いつくのは、競馬紙や予想家の予想の影響です。なぜなら、少なくともnetkeibaさんではレースのかなり前の段階から予想オッズでオメガギネスを1番人気に推していたからです。
本来オッズというのは馬券の売れ行きで変動するものですが、予想オッズというのは、馬券が発売される前からいろいろなデータや予想を解析して独自に算出している数値です。つまり、netkeibaさんが予想オッズの段階でオメガギネスを1番人気に推していたのは、その時点でオメガギネスを推す競馬予想家が多数いたからではないかと思うのです。
では、実際に競馬紙の予想がどうだったか見てみましょう。
- 競馬予想サイト・競馬新聞のオメガギネスの評価(2024フェブラリーステークス)
- ・netkeiba(本紙)⇒○(対抗)
・日刊競馬(本紙)⇒▲(単穴)
・優馬(本紙)⇒注
・ケイユウ(本紙)⇒▲(単穴)
・東スポ(本紙)⇒◎(本命)
当然すべてのサイトや競馬新聞を調べることはできませんでしたが、無料・有料含め調べてみると、どのサイト・新聞もオメガギネスにグリグリに印がついていたわけではなさそうです。
じゃあ、なぜ?なぜ、オメガギネスが1番人気に推されたのか?
もしかして、ユーチューバーか?
ということで、有名な競馬ユーチューバー(YouTubeをやっている芸能人を含む)がオメガギネスにどんな評価をしていたのか調べてみました。
- ユーチューバーのオメガギネスの評価(2024フェブラリーステークス)
- ・ネクロマンシー中井(ニートボクロチキン)⇒▲以下(おさえ)
・粗品(粗品 Official Channel)⇒◎(本命)
・ゆうま(うまログ)⇒×(消し)
・タコル(うまログ)⇒▲以下(おさえ)
・けんしろう(けんしろう競馬)⇒▲以下(おさえ)
・田原成貴(東スポレースチャンネル)⇒○(対抗)
・安藤勝己(アンカツちゃんねる)⇒◎(S評価)
・じゃい(じゃいちゅ~ぶ)⇒×(消し)
・岡井元憲(UMAJIN Ch)⇒◎(S評価)
う~ん。別にユーチューバーが一生懸命オメガギネスを推していたわけではなさそうですね。粗品さんが本命にしているんですよ・・・。逆に人気が下がるならわかるのですが。
オメガギネスの人気が何故ここまで高くなったのか、ますます謎が深まっていきます。
X(旧Twitter)のポストを調べたら迷宮入りに
「それなら」ということで、巷の競馬ファンが当時オメガギネスをどう見ていたのか、オメガギネスに関するX(旧Twitter)のポストを検索して調べることにしました。
すると、いよいよこの問題は迷宮入りすることに。
なんと、オメガギネスに関するポストの約3分の1くらいは否定的または消極的な評価になっていました。
確かに、「調教がよかった」とか「安定感がある」といった意見でオメガギネスを好評価するポストもありましたが、私が見た限り、Xユーザーの中にオメガギネスが1番人気に推されるような雰囲気はありませんでした。
だとすると、あとは競馬初心者、情報弱者、ネットが使えない高齢者層などがオメガギネスを買っていた説、誰かが(何の理由かわかりませんが)オメガギネスの単勝馬券を大量に買っていた説などが浮上しますが、これらを証明することはできません。
netkeibaさんのオメガギネスの予想オッズが1番人気だった謎は未解決のまま
そしてもう1つの説。netkeiba誘導説。
netkeibaさんは、こんな内容をXでポストしていました。
予想オッズが1番人気だったということもあるでしょうが、トップでオメガギネスを紹介しています。
そもそも、月曜日の段階でnetkeibaさんのオメガギネスの予想オッズが1番人気になっていた(結果的に馬券販売直前まで1番人気のまま)のは、いったいどんな分析からだったのでしょうか?
netkeibaさんのサイトの「よくある質問」では次のように説明されています。
【ご質問】予想オッズって?(対象レースや公開時間について)
【回答(抜粋)】予想オッズはAIにより算出し、リアルタイムで更新しています。
netkeiba「よくある質問」より引用
さらに、netkeibaさんは2023年10月から本格的にAIによる予想オッズを導入することになりましたが、この時に次のような発表をされていました。
AI導入前の予想オッズは、予想大会「俺プロ」の投票データをもとに算出していたため、俺プロの投票がない一般レースの「出走想定」では表示することができませんでしたが、この度「過去の戦績や俺プロの投票データなどをもとにnetkeibaが独自に開発したAIによって算出」することで、全レースの表示を実現することができました。(中略)多くの方が気にする重賞レースの1番人気に関しては、過去の戦績や調子だけではなく「人の感情(馬を応援するファン心理)」の影響も大きいと考えられ、今後の課題として更なる精度向上に努めてまいります。
netkeiba「AIによる予想オッズ&出走想定オッズをリリース!」より引用
ここで「俺プロ」というキーワードが出てきました。再び、netkeibaさんの「よくある質問」を見てみましょう。
【ご質問】「俺プロ」って?
【回答(抜粋)】『俺プロ』は、誰でも無料で参加できる予想大会です。レースを選んで印をつけるだけで簡単に予想ができます。(中略)参加にはnetkeibaのアカウント(メールアドレス(ログインID))が必要です。
netkeiba「よくある質問」より引用
つまり、「俺プロ」はnetkeibaのユーザーによる競馬予想コンテストのようです。ここでの予想がnetkeibaの予想オッズの算出に関与しているということなのですが・・・。
ちなみに、「俺プロ」で成績最上位のユーザーの競馬予想が見られるのですが、どの成績上位ユーザーもオメガギネスは買っていませんでした。どういうこと?謎が謎を呼びます・・・。
今回「俺プロ」について詳しく調べることはしませんでしたが、netkeibaユーザーの中ではオメガギネスを評価する声が多かったということなのでしょうか。だとすれば、netkeibaさんの予想オッズに引っ張られてオメガギネスを勝ってしまったnetkeibaユーザーは、ある意味仕方なかったのかもしれません。
netkeibaユーザーではない競馬ファンは、netkeibaさんの予想オッズを見るときにはその仕組みをしっかり理解した上であくまで参考程度に見てもらいたいですね。