筆者が本当に楽しみにしていたレース、今年のNHKマイルカップが終わってしまった。なんなら、結末を見たくなかった。
こんな感覚は、昨年のジャパンカップでイクイノックスとリバティアイランドが初対決した時以来です。
結果は、2歳牡馬チャンピオンのジャンタルマンタルの圧勝。しかし、なんだかスッキリしない感じがするのは筆者だけではないはず。
今回は、そのNHKマイルカップ2024を振り返ります。
以下のレース展望の記事も合わせて読んでいただくと、さらにわかりやすいかと思います。
<NHKマイルカップ2024のレース展望>
NHKマイルカップ2024 レース結果
こちらがNHKマイルカップ2024の全着順です。
2歳牡馬チャンピオンと2歳牝馬チャンピオンが人気を分け合った今年のNHKマイルカップは、前者の2番人気ジャンタルマンタルが勝ちました。勝ちタイムは1分32秒4。勝ったジャンタルマンタルは、昨年の朝日杯フューチュリティステークスに続いてGⅠ2勝目。前走皐月賞からのローテーションでNHKマイルカップを勝ったのは、2015年のクラリティスカイ(皐月賞5着)、2019年のアドマイヤマーズ(皐月賞4着)に続いて3頭目ということになります。
この記事を書きながら気づきましたが、ジャンタルマンタルのこれまでの戦歴(デイリー杯2歳S1着→朝日杯FS1着→共同通信杯2着→皐月賞負け→NHKマイルカップ1着)はアドマイヤマーズと全く同じですね。ビックリ。
2着に2歳牝馬チャンピオンの1番人気アスコリピチェーノが入り、荒れるレースというイメージがあったNHKマイルカップでしたが、結果的に今年はガチガチの結果に。3着に人気薄の10番人気ロジリオンが入ったので波乱要素があったように思われるかもしれませんが、正直にいって、上位2頭の実力はここでは抜けていました。ブービー負けした3番人気のボンドガールは不利があって不運でしたが、スムーズにいったとしても難しかったでしょう。
- 優勝馬ジャンタルマンタルのプロフィール
- 父 Palace Malice
母 インディアマントゥアナ(母父 Wilburn)
馬主 社台レースホース
生産者 社台ファーム
調教師 高野友和(栗東)
通算成績 6戦4勝(24’GⅠNHKマイルC、23’GⅠ朝日杯FS、23’GⅡデイリー杯2歳S)
NHKマイルカップ2024 レース展開
4番イフェイオンと16番ジャンタルマンタルが好スタート。これとは対照的に、5番人気の18番アルセナールが立ち遅れてしまいました。
ハナを奪いに行ったのは、なんと5番ボンドガール。そして、予想どおり9番キャプテンシーと15番マスクオールウィンが先行争いに加わります。結果的に、先行争いをした3頭が最下位に沈んでしまいました(偶然だとは思いますが)。
14番アスコリピチェーノも好スタートを決め、ジャンタルマンタルをマークするように前目のポジションを取りに行きます。6番ロジリオンも予想より前のポジションへ。
5番ボンドガールが逃げるかと思いましたが、向正面で9番キャプテンシーがやはりハナを奪いました。
16番ジャンタルマンタルは好位、前から5番手の外。14番アスコリピチェーノはその内で6番手の位置にいます。6番ロジリオンはその2頭を前に見る形で、馬群の中に入りました。
4番人気の12番ゴンバデカーブースは中団の外目、出遅れた18番アルセナールは後方2番手でレースを進めます。
9番キャプテンシーのリードはわずか1馬身で各馬は第3コーナーへ。
5番ボンドガールは結局3番手の内に控える形になり、これを見るように16番ジャンタルマンタルと14番アスコリピチェーノが4番手、5番手で続きます。
13番シュトラウスは、前走の中スポ賞ファルコンステークスと同様に最後方で折り合いに専念・・・ということだと思いますが、終始口を割ってまったく折り合えていませんでした(悲)
9番キャプテンシーを先頭にほぼ隊列は変わらないまま第4コーナーへ。
前半800mは46秒3とほぼ平均ペース。
14番アスコリピチェーノは、16番ジャンタルマンタルと8番エンヤラヴフェイスが外にいるせいで馬群の中に閉じ込められた状態です。これが直線でのアクシデントにつながった要因の1つでしょう。
第4コーナーをカーブして直線に向くと、早くも逃げる9番キャプテンシーは手ごたえがなくなり、外から15番マスクオールウィンが、内から5番ボンドガールが先頭に並びかけます。
ここで16番ジャンタルマンタルは抜群の手ごたえ。持ったままで、外から4番手に進出します。
一方、14番アスコリピチェーノは外にジャンタルマンタルが、内にボンドガールがいるせいで、抜け出すための進路がありません。しかし、手ごたえはやはり抜群の様子。
アスコリピチェーノがもたついている間に、その後ろから6番ロジリオンが代わりに外に持ち出して追い込み態勢に。
そして、問題の直線。
残り400mを切って、絶好の手ごたえだった16番ジャンタルマンタルが追い出すと、ほぼ同時に14番アスコリピチェーノも負けじとスパート。しかし、抜け出そうとしたインコースのわずかな隙間に前の15番マスクオールウィンが同時に切れ込んだせいでアスコリピチェーノは前が壁に。
すると、アスコリピチェーノの内にいた9番キャプテンシーとさらに内にいた5番ボンドガールは、内ラチとアスコリピチェーノの間に挟まれる形になってあわや落馬、あるいはコースアウト寸前の状態になりました。
そんなアクシデントはつゆ知らず(いや、川田騎手は薄々わかっていたかも・・・)、何の不利もなく楽々と抜け出したジャンタルマンタルは弾けるように後続を3馬身突き放して1着でゴール。
態勢をなんとか立て直したアスコリピチェーノは、あれだけの不利を受けたにも関わらず、インを猛然と追い込んでなんと2着に滑り込みました。不利がなかったらと思うと、本当に残念。
3着には、アスコリピチェーノと対照的にうまく外に持ち出して追い込んだ6番ロジリオンが入りました。4着には、外から終始スムーズに競馬を進めた久々出走のゴンバデカーブースが、5着にはインで脚をためて追い込んだイフェイオンが入り、中団から前にいた馬たちで上位5頭を占める結果に。
一方、アスコリピチェーノ以上の不利を受けたボンドガールは17着に惨敗し、かわいそうな結果に。最終的に、ボンドガールとキャプテンシーに対する走行妨害(斜行)と判断されたマスクオールウィンの岩田康成騎手とアスコリピチェーノのクリストフ・ルメール騎手には過怠金3万円が課されました。
YouTubeのレース映像もぜひご覧ください。
NHKマイルカップ2024 主な出走馬の短評
- ジャンタルマンタル(1着)・・・まさに圧勝。アスコリピチェーノとのガチンコ勝負を見たかったが、これも勝負の世界。川田騎手の見立てどおり、マイル適性は高かった。距離こそ違えど、天皇賞(春)のテーオーロイヤルのような横綱相撲。予想どおり前目につけてあとは押し切るだけ。以下は川田騎手のレース後コメント。
本当によく頑張りました。(この馬が一番強いと)お見せできればという話をしていましたが、1600mで走ることに関しては絶大なる自信を持っていますので、この同世代であれば、普通に走りさえすれば負けることはないと思っていましたので、ただ、皐月賞からの中2週というところで、疲れがどうなのかなというのは一番の懸念点でしたが、それでもこうやって勝ち切ってくれましたので、やはり素晴らしい走りができる馬だなと思います。彼のリズムを大事にしながら、とてもリズムよく走ってくれました。とても雰囲気よく道中回って来られましたし、もう負けることはないなと思いながら道中乗れるくらい、素晴らしい雰囲気でしたので、あとはもう無理しない程度に、とはいえGIなので、最後までしっかり走りきってというところでした。朝日杯FSもこのレースも素晴らしい走りを見せてくれましたし、適距離ではない皐月賞でもあれだけ頑張って、素晴らしい走りをしてくれていましたけれど、これから、よりこのマイルという距離で、この馬が日本で一番強いんだというレベルまでいければいいなと思っています
川田将雅騎手レース後のコメントより(netkeiba.com)
- アスコリピチェーノ(2着)・・・まさか不安要素が騎手だったとは。直線で前が詰まったのは、岩田康騎手とルメール騎手が同時に内に切れ込んだのが原因。ルメール騎手にしては珍しく焦ったのか。それにしても最後の伸びは素晴らしく、スムーズに言っていればと思うと本当に惜しい。負けてなお強し。
- ロジリオン(3着)・・・東京1,400m実績馬が来るというデータどおり好走。アスコリピチェーノと対照的に、戸崎騎手がうまく外に出せた。能力は高いが、前の2頭とはまだ差がある。1,400mならこちらが強いかも。
- ゴンバデカーブース(4着)・・・半年以上の休養明け、3歳初戦だったが、やはり能力は高かった。次走が楽しみ。距離は2,000mまでいけるかも。ダービー、菊花賞は厳しいか。
- イフェイオン(5着)・・・東京との相性はよかった。一叩きして良くなっていた様子。桜花賞惨敗から立て直して大健闘。来年のヴィクトリアマイルまでさらに成長できれば面白い。
- アルセナール(9着)・・・出遅れが痛かった。上がり最速(33秒8)で伸びたが、このメンバーではさすがに厳しい。血統的にも、距離をもう少し伸ばしてはどうか?
- シュトラウス(16着)・・・まったく折り合いがつかず、終始最後方で馬と騎手がケンカ。これでは競馬にならない。東京なら好走できると思ったが、そういう次元ではなかった。逃げ・先行のほうがいいのでは?
- ボンドガール(17着)・・・最内が開いて抜けようとしたところで、アスコリピチェーノとマスクオールウィンが内に斜行。キャプテンシーと内ラチに挟まれてしまった。アンラッキーではあったが、それにしても直線の手ごたえはそこまで良くなかった。成長力に疑問が・・・。
今後の見どころ
勝ったジャンタルマンタルは、川田騎手のコメントのとおり、今後はマイラーとしての道を歩むことになるでしょう。皐月賞を見る限り、2,000mまではこなせそうですが、今回のNHKマイルカップの走りを見れば生粋のマイラーと言っても過言ではないかもしれません。
ジャンタルマンタルはダービーには出ず、春は休むことになるでしょう。秋は毎日王冠または富士ステークスをステップにして、マイルチャンピオンシップ→香港マイルという王道のローテーションになるのではないでしょうか。
一方、負けたアスコリピチェーノも、これも負けず劣らずの名マイラーのような気がします。マイルチャンピオンシップでジャンタルマンタルとの再戦が見られればファンとしてこれ以上ない楽しみです。ただ、鞍上のルメール騎手からは「(距離は)もう少し長くても大丈夫」というコメントが出ていて、もしかすると秋は秋華賞が目標になるかもしれません。
4着のゴンバデカーブースは3歳初戦がこのNHKマイルカップでした。これだけのレースができるなら、次は日本ダービーでも面白いかもしれません。果たして、次のレースはどこを選ぶのか?
個人的に残念なのは、シュトラウス。2歳時にあれだけの強さを見せていたのに、3歳はレースに出てもまともに競馬ができないという「もどかしさ」。でも、私は信じています。この馬はいつか覚醒する、と。
厳選6頭の結果
最後に、レース展望でピックアップしたNHKマイルカップの厳選6頭の結果をお伝えします。
なんとGⅠ3戦連続でワイド馬券を的中することができました。YouTubeのライブ配信で最終評価をお伝えしていますので、次回もお楽しみに。
- NHKマイルカップ2024 厳選6頭の結果
- S評価 14番アスコリピチェーノ→2着 16番ジャンタルマンタル→1着
A評価 5番ボンドガール→17着 13番シュトラウス→16着 12番ゴンバデカーブース→4着
穴評価 6番ロジリオン→3着