先週からの風邪が長引いているのと、年末の仕事の忙しさでブログの更新が遅れてしまいました。皆さんは健康管理、時間管理ができていますか?この時期は難しいですよね。
ということで言い訳はこのくらいにして、先週の朝日杯フューチュリティステークスを振り返っていきたいと思います。
今回は、私の本命で、まさかの惨敗を喫したシュトラウスについて取り上げます。
レース展開
なんと、いきなり17番シュトラウスが出遅れ。早くも波乱の匂いがプンプンします。
やはり6番セットアップがハナを奪いにいきました。人気の8番ダノンマッキンリーも好スタートから思いのほか前目につけています。これに紅一点の5番タガノエルピーダ、9番クリーンエアが絡んで先団を形成。
勝った3番ジャンタルマンタルは五分のスタートからスッと中団の内側に馬を収めます。このあたりの馬の制御のしやすさ(いわゆる操縦性)が負けたシュトラウスとの決定的な差になりました。
今回2着に頑張った1番エコロヴァルツは先行争いに加わるかと思いきや、武豊騎手が思い切って最後方でレースを進めるという戦法に出ました。これもなかなか痺れる展開。
3コーナーに向かうところで、出遅れたシュトラウスが一気に加速して大外から先頭まで位置を上げてきました。なんという「自由奔放」「天真爛漫」なレースぶり。ファンになっちゃうじゃないか(笑)
3コーナーにかかるところでついに17番シュトラウスが逃げる6番セットアップに並びかける形となり、この2頭が一気にペースアップして隊列も縦長になります。
前半800mが46秒1を計測。後半800mが47秒7ですので、結果的にはハイペースだったということでしょう。前の週の阪神ジュベナイルフィリーズは前半800m46秒4、後半800m46秒2でしたので、単純にタイムだけで比較してはいけないのかもしれませんが、もしかすると阪神ジュベナイルフィリーズの方がレースのレベルが高かった可能性があります。
3〜4コーナーの中間ではシュトラウスがさらにペースを上げて単独で先頭に立ちました。3番ジャンタルマンタルは変わらず中団の内でジッとしています。1番エコロヴァルツも最後方で脚を溜めていました。
スタートは良かったものの、後でモタモタしていた14番ジューンテイクがここで大外から一気にまくっていきました。
4コーナーにかかる頃には17番シュトラウスと6番セットアップのペースがガクッと落ちたのか馬群がギュッと固まる形に。3番ジャンタルマンタルはここから内ラチ沿いをスルスルと抜け出して一気にポジションを上げていきました。
大外から14番ジューンテイクがまくって上がっていく中、1番エコロヴァルツと武豊騎手はまだ最後方でジッとしています。
最後の直線に向くと、シュトラウスの脚はパタっと止まってしまい、ズルズルと後方に後退していきます。代わりに、最内から抜け出したジャンタルマンタルが早くも先頭に。エコロヴァルツはようやくここで大外に出すアクションをとりましたが、まだ最後方です。
抜け出した3番ジャンタルマンタルは後続を突き放してセーフティリード。そして、最内をスルスルと抜け出した4番サトミノキラリが気付かないうちに2番手まで上がっていました。3番手まで上がった8番ダノンマッキンリーは思いのほか脚色が良くありません。
残り200mで外から5番タガノエルピーダ、14番ジューンテイク、12番タガノデュードが一気に前の馬に迫ります。そして、ここで大外に出した1番エコロヴァルツが一気に加速して末脚を爆発させます。
早めに抜け出したジャンタルマンタルは流石に最後は脚が止まってしまいましたが、リードを保って1着でゴール。エコロヴァルツは惜しくも届かなかったものの、直線だけで15頭をごぼう抜きして2着に追い込みました。
3着にはなんとキャリア1戦の牝馬タガノエルピーダが入り、続いて追い込んだジューンテイク、タガノデュードが4着、5着に入ってともに大健闘。
セットアップ7着、ダノンマッキンリー8着、シュトラウス10着と人気馬、素質馬が惨敗するという波乱の結果となりました。
レース映像はこちらからどうぞ。
各馬の評価と今後
勝ったジャンタルマンタルはやはり強かった。これについては以下の記事でも解説しているので、そちらをご覧いただければと思います。
https://toproadoor.net/2023/12/09/2023autumn_midokoro_2year/では、ジャンタルマンタルはクラシックで勝てるのか?これについては、正直未知数です。血統的にデータがないのです。ただ、父パレスマリスは米GⅠベルモントステークス(ダート2,400m)を勝っていますし、その兄弟にはジャスティンパレス(23’天皇賞(春))やアインアンバローズ(23’ステイヤーズS)がいますので、もしかすると中距離以上もいけるかもしれません。操縦性と気性の良さも距離が延びた時に武器となります。
ただ、クラシック候補と言った時にしっくりくるのはエコロヴァルツの方でしょう。
父ブラックタイド、母父キングカメハメハ、鞍上は武豊騎手ということで、まさにクラシックの合言葉が揃った馬です。さらに、逃げても追い込んでも強いということで、競馬センスの良さもこの馬の魅力です。この馬の新馬戦での強さについても以下のブログ記事で解説しています。
3着に入ったタガノエルピーダは阪神ジュベナイルフィリーズを除外になってこちらに出走してきましたが、陣営も期待している馬なのでしょう。その期待通りの激走を見せてくれました。ただ、レース展開のところでも書いたように、今年の2歳は牡馬よりも牝馬の方がレベルが高い可能性があります(あくまで現時点で)。アスコリピチェーノやボンドガールあたりと比べると正直そこまでの実力はないかもしれません。まだ1勝クラスですので、次走で確実に勝っておきたいところです。
7着に敗れたセットアップは完全にシュトラウスに潰されましたね。ただ、直線では盛り返してきていますので、中距離以上でマイペースで逃げることができれば怖い馬なのは間違いありません。
8着のダノンマッキンリーは、やはり距離が長かったと思います。血統は魅力ですしモーリス産駒ですので、これからの成長に期待したいところです。
シュトラウスという馬は何だったのか
さて、そこで問題はシュトラウスです。上で紹介した過去記事でも書いていますが、この馬の実力が世代で抜けていることは間違いないと思うのです。敗因は間違いなく、大外からぶっ飛ばして行ったせいでバテてしまった、ということでしょう。
本番での圧倒的な勝利を夢見たあの強さは何だったのか?シュトラウスという馬は幻なのか?
その答えを探るべく、シュトラウスを過去の名馬に重ね合わせて考えてみたいと思います。
その過去の名馬とは以下の3頭です。いずれも、私が個人的に「シュトラウスに似てるかも」と直感的に思った馬です。
- 「シュトラウスと似てるかも」と思った過去の名馬3頭
- ・サイレンススズカ(98’宝塚記念)
・オルフェーヴル(11’クラシック3冠、11’13’有馬記念、12’宝塚記念)
・エピファネイア(13’菊花賞、14’ジャパンカップ)
シュトラウスはサイレンススズカなのか
いきなり「えっ?」という馬を出してきましたが、朝日杯のシュトラウスを見た私は、サイレンススズカのあるレースを思い出したのです。
それは、1997年の弥生賞です。
新馬戦を7馬身差で逃げ切ったサイレンススズカは、デビュー2戦目のこのレースでも2番人気に推されました。しかし・・・まさかの大出遅れ。中山競馬場は悲鳴が飛び交っていました。スピードがあるおかげですぐに馬群に取りついたのですが、結果は8着。
能力はあるのに、幼さゆえの危うさ。まさにシュトラウスのことではないでしょうか。
このあと、サイレンススズカは抑える競馬を覚えさせてプリンシパルステークス1着。ダービーの優先出走権をとったのですが、同じように抑える競馬で臨んだダービーではサニーブライアンの逃げ切り勝ちを前に9着に沈みました。
そのあとは、この馬の天性の逃げ脚を生かす競馬で2,000m前後の中距離を勝ちまくる結果を出しています。
サイレンススズカのレースで気になるのは4歳(満3歳)時のマイルチャンピオンシップで15着と惨敗したこと。
同世代のキョウエイマーチが悠々と逃げる中、サイレンススズカは早々にバテてしまっています。シュトラウスもスピードがあるので逃げることはできるのですが、マイルを逃げ切るほどのスピードの持続力はない可能性があります。実際、シュトラウスが9馬身差で逃げ切った新馬戦は1,800mですし、貫録勝ちを見せた東スポ杯2歳ステークスも1,800mです。
新馬戦のように中距離を逃げ切るレースがシュトラウスにはベストの形かもしれません。
- シュトラウスがサイレンススズカだったら・・・
- ・3歳終わりから精神面の成長がみられるかも
・抑える競馬を試してみた上で、最終的には逃げ馬として覚醒するかも
・2,000m前後が適性距離かも(マイル以下は苦手かも)
シュトラウスはオルフェーヴルなのか
続いて「気性難の貴公子」(私が勝手に言っているだけです。ファンの皆さん、ごめんなさい)、3冠馬オルフェーヴルです。
ご存じのとおり、オルフェーヴルは3冠を達成した菊花賞のゴール後に鞍上の池添騎手を振り落としたり、その翌年の阪神大賞典で2週目の3コーナーを逸走して競走中止・・・したかと思いきや再びレースに復帰して2着に入るなど、その荒くれぶりと想像を超える強さでファンが多かった馬です。
私がシュトラウスとオルフェーヴルを重ね合わせた理由は、気性難の裏側にある闘争心の強さに注目をしたからです。
常に口を割って騎手が馬を抑えるのに苦労しているところはそっくりです。
オルフェーヴルが初めてメンコ(覆面)を装着した天皇賞(春)で11着に惨敗したように、余計なことをして闘争心を邪魔してしまうと途端に走らなくなる可能性をシュトラウスにも感じています。朝日杯FSのレース後に鞍上のマーカンド騎手が次のようなコメントをしていたのが気になります。
出負けはあったけど引っかかったわけではなく、道中リラックスしていました。
朝日杯FSレース後のトム・マーカンド騎手のコメントより
何が原因かはわかりませんが、マーカンド騎手のコメントが本当だとするとシュトラウスは闘争心がオフの状態で朝日杯JFを走っていたのかもしれません。シュトラウスは騎手と戦っている状態(口を割っている状態)のほうが走る可能性も考えられます。
シュトラウスも、オルフェーヴルと同じように圧勝と惨敗を繰り返してしまうかもしれませんが、名馬への道を目指すには余計な処置をせずにこの馬の能力と闘争心の強さに懸けるべきだと思います。
- シュトラウスがオルフェーヴルだったら・・・
- ・圧勝と惨敗を繰り返すかも
・メンコをしたり馬の制御を放棄したりして、闘争心を削ぐようなことをすると走らなくなるかも
・3冠は難しいかもしれないが、皐月賞や有馬記念ならすんなり勝ててしまうかも
シュトラウスはエピファネイアなのか
最後に取り上げるのは、同じキャロットファームのエピファネイアです。
なぜこの馬かというと、単にオーナーが同じというだけではなく、エピファネイアの主戦騎手だった福永祐一調教師のコメントでその共通性を見たからです。
シュトラウスは、エピファネイアと同じように「口が重い」タイプ
福永祐一調教師のオンラインサロンでの発言より
「口が重い」というのは騎手独特の表現ですが、要するに「馬のパワーが強すぎて手綱を引っ張ると重量感を感じる」という意味だと思います。このあたりはオルフェーヴルにも言えることかもしれません(池添騎手に聞いたわけではありませんが)。
そして、福永調教師によると、エピファネイアは4戦目の弥生賞でビュイック騎手が乗ったときに馬が扱いにくくなったそうです。こちらがその弥生賞の映像。
勝負服が同じせいか、シュトラウスの走りそっくりに見えます。ただ、直線で抜け出す感じはエピファネイアのほうが瞬発力を感じますが。
これも福永調教師が言っていたことですが、エピファネイアは手綱を握っていて恐怖を感じる瞬間があったそうです。パワーがありすぎてコントロールが効かない。いわば、ハンドルが壊れた車を運転しているようなイメージでしょうか。
結局、乗り手が乗りこなせなければ、いくらパワーがある馬であってもそのパワーを生かし切れない、逆にそれをうまくコントロールできる騎手が乗れば、その有り余るパワーを強力な武器に変えることができるわけです。福永調教師が乗った菊花賞、クリストフ・スミヨン騎手が乗ったジャパンカップは、エピファネイアのパワーと爆発力を発揮した他馬を圧倒するレースでした。
マーカンド騎手が乗ったことで、シュトラウスはエピファネイアのようにさらに扱いが難しい馬になってしまうのでしょうか?それとも、次に乗る騎手がパワーを生かす騎乗でシュトラウスを復活させるのでしょうか?
- シュトラウスがエピファネイアだったら・・・
- ・マーカンド騎手の騎乗によってより扱いが難しい馬になるかも
・乗り手次第でパワーを生かした圧倒的な勝ち方を見せるようになるかも
まとめ
このレースで私はシュトラウスのファンになりました。ぜひ、これからも応援していきたいと思います。
当然、勝ったジャンタルマンタルや2着のエコロヴァルツは来年のクラシックの有力候補ですが、2歳から3歳にかけての成長度合いによってシュトラウスとの位置づけはひっくり返る可能性もあります。
そして、来週はもう一つの2歳GⅠホープフルステークスが開催されます。こちらに出走するゴンバデカーブースやシンエンペラーも強い馬ですが、爆発力という点ではシュトラウスのほうに魅力を感じます。
さて、シュトラウスはどこまで成長するのか?そして、将来はどんな馬になるのか。今からとても楽しみになってきました!