今週末は若き乙女たちの戦い、GⅠ阪神ジュベナイルフィリーズが開催されますね。
このレースが開催されると聞くと、「ああ、今年ももう少しで終わりか・・・」と1年の早さをしみじみと感じます。そんな気持ちとは裏腹に、毎年このレースでは2歳牝馬たちの熱いレースが繰り広げられていて、昨年は牝馬3冠馬リバティアイランドが衝撃的な強さを見せつけました。
ということで、今年2023年の秋競馬の見どころを解説するシリーズ最終回は、来年のクラシックを狙う素質馬たちが揃った2歳戦線編です。
2歳戦線と秋競馬について知ろう!
前回は、今年のダート戦線について教えてもらったんですが、秋競馬といっても、もう12月になりましたよ?今回は2歳戦線の見どころを教えてもらえるそうですけど、なぜこんな時期なんですか?
それはだな・・・決してサボっていたわけではないぞ(少しはあるか)
そもそも2歳という年齢が馬にとってどういう年齢かわかっているか?
2歳・・・ですか?まあ、若いっていうことですかね。
うーん、「若い」か。そりゃそうなんだが、大ざっぱだなあ。
馬が産まれた年を0歳(当歳)として、その翌年1月1日になると馬はすべて1歳になるんだ。そして、さらに翌年(産まれた翌々年)の1月1日に2歳になる。
馬の年齢を人間におきかえると、数え年(実際の年齢+1歳)×4といわれているから、馬の2歳というのは人間の12歳((2+1)×4)にあたるわけだ。
えー!ということは2歳でデビューする馬たちっていうのは、中学1年生くらいということなんですね。まだまだ子供じゃないですか。
そうだ。ズバリ、2歳戦線というのは子供たちの運動会みたいなものだ。
いやいや、「運動会」ってそんな優しいものではないでしょう、競馬のレースって。
いや、誇張した言い方に聞こえるかもしれないが、あながちそうでもないぞ。
さっきの年齢の話を突き詰めると、馬の1歳は人間の8歳にあたるから、馬は1年で人間の4歳分の歳をとることになる。つまり、3か月で人間の1歳分の歳をとるんだ。
馬は大体3~4月に産まれることが多いんだが、早い馬は1月に産まれるし、遅い馬は7月に産まれたりする。ということは、同じ2歳馬でも誕生日に6か月の差があると、人間でいう2歳分の歳の差ができてしまうということだ。
なるほど。中学校1年生から3年生までの子供たちが混ざり合って走るわけだから「運動会」ということなんですね。
2023秋競馬の見どころはコレだ!
思い出してみろ。自分が子供のときに中学校でやたら脚が速い1年生とかいなかったか?
あー、そういえばいましたね。陸上部とかで1年生の時からバンバン活躍している人とか。運動部だと”あるある”ですよね。やたら体格がいい1年生もいましたし。
そう。中学生というのはちょうど成長期にあたるから、成長の速度によって体格や運動能力に差が出やすい時期だ。
馬でも同じことが言えて、2歳馬は一般的には誕生日が速い馬のほうが有利なんだが、成長速度の違いによって馬の能力に差が出やすいし、精神面においても同じことが言えるんだ。
中学生も思春期っていうのがあるだろ?同じクラスの中で小学生のようにはしゃぐやつもいれば、やたら大人びたやつもいたようにな。
そうか。じゃあ、2歳馬のレースというのは馬の能力や体格、精神面の成長度合いを見極めることが大事になるんですね!
2歳戦線(牝馬)まとめ
じゃあ、まずは今年活躍している2歳牝馬(メス馬)たちをまとめたから見てくれ。
馬名(性齢) | レーティング (5点満点) | 戦績 (主な勝ち鞍) | 次走予定 |
アスコリピチェーノ (牝2) | ★★★ | 2戦2勝 (23’新潟2歳S) | 阪神ジュベナイルフィリーズ |
コラソンビート (牝2) | ★★★ | 4戦3勝 (23’京王杯2歳S、23’ダリア賞) | 阪神ジュベナイルフィリーズ |
カルチャーデイ (牝2) | ★★★ | 2戦2勝 (23’ファンタジーS) | 阪神ジュベナイルフィリーズ |
ボンドガール (牝2) | ★★★ | 2戦1勝 (23’サウジアラビアRC2着) | 未定 |
チェルヴィニア (牝2) | ★★★ | 3戦2勝 (23’アルテミスS) | 未定 |
ドナベティ (牝2) | ★★ | 4戦2勝 (23’すずらん賞、23’ファンタジーS2着) | 阪神ジュベナイルフィリーズ |
ナナオ (牝2) | ★★ | 4戦2勝 (23’もみじS、23’函館2歳S2着) | 阪神ジュベナイルフィリーズ |
サフィラ (牝2) | ★★ | 3戦1勝 (23’アルテミスS2着) | 阪神ジュベナイルフィリーズ |
その他多数 | ★★ |
「レーティング」っていうのはKBさんの独自評価で、星★の数が多ければ多いほど馬が強いことを示しているんですよね(満点は★5つ)。
今回は満点評価の馬と4点の馬はいなくて、3点(★3つ)の馬が5頭か。2点の馬が・・・「その他多数」って、そんなに混戦なんですか?
そうだな。なぜかというと、そもそも2歳は早くても今年の6月にデビューして、ここまで2戦~4戦程度しかレースを走っていないから、その程度のレース数では馬の評価に差をつけにくいからだな。それと、これらの馬同士が直接対決したことはほぼないから、序列が決められないということもある。
なるほど。そうすると、次走が「阪神ジュベナイルフィリーズ」(阪神JF)になっている馬が多いから、そこで初めてしっかり順位付けができそうですね。阪神JFっていうのはどんなレースなんですか?
阪神JF(阪神競馬場 芝1,600m)は、その年の2歳牝馬ナンバーワンを決めるGⅠレースだ。すべての2歳牝馬はここを目指してデビューし、レースを使ってきているぞ。
それと、このレースは来年の牝馬クラシックを占う上で重要なレースだ。なぜなら、牝馬クラシック1冠目のGⅠ桜花賞は阪神JFと同じ競馬場、同じコース、同じ距離で開催されるからだ。
今年の牝馬3冠馬リバティアイランドも昨年のこのレースを勝っているぞ。
阪神JFに出走する有力馬
まあ、そうなるな。この3頭はいずれも2歳の重賞レースを勝っている馬たちだ。このうち、アスコリピチェーノとコラソンビートは牡馬との混合レース(GⅢ新潟2歳S、GⅡ京王杯2歳S)を勝っているから、なかなか強そうだぞ。
カルチャーデイは牝馬限定のGⅢファンタジーSというレースを人気薄で勝っているが、そこでオープンクラスの実績馬たちを根こそぎ倒しているから侮れない。問題は距離適性だな。
距離適性?
カルチャーデイはここまで1,400mまでのレースしか使われていない。2点評価(★2つ)のドナベティやナナオもここまで強さを見せているが、いずれも1,200m~1,400mで実績を上げている馬たちだ。
阪神JFの距離は1,600m、いわゆるマイルレース(※1マイル=1,600m)だ。マイルレースというのスピードだけでなくスタミナも要求されるレースだ。
カルチャーデイらは確かにスピードはあるかもしれないが、マイルを勝ち切るスタミナを持っているかどうかは未知数だ。そういう点で、マイルレースで実績のあるアスコリピチェーノやコラソンビート、それに2点評価だが、アルテミスSというマイルの重賞レースで2着に入ったサフィラのほうが現時点では有力かもしれない。
なるほど。来年のクラシックもすべて1,600m以上(桜花賞1,600m、オークス2,400m、秋華賞2,000m)で開催されますもんね。
アルテミスSを勝ったチェルヴィニアっていう馬も強そうだなあ。今回は阪神JFに出ないようですけど、来年のクラシックは楽しみですね。
伝説の新馬戦
もう1頭ここで触れないといけない馬がいる。それは、ボンドガールだ。
この馬のオーナーは、あの「ウマ娘 プリティーダービー」のCygames(サイゲームス)や「ABEMA」で有名なサイバーエージェントの藤田晋社長なんだ。
そして、この馬のお兄さんには昨年のクラシックでも活躍したダノンベルーガという強い馬もいる良血馬だ。
へえ、そうなんですね。確かにこの馬も評価は3点でアスコリピチェーノらと並んでいますが、重賞を勝った馬ではないですよね。なぜ、そんなに評価が高いのですか?
その理由は、「伝説の新馬戦」といわれるこのレースのためだ。
- 2023.6.4 東京競馬場 5R 2歳新馬 芝1,600m(伝説の新馬戦)
- 勝ちタイム1:34.6
1着 ボンドガール
2着 チェルヴィニア(その後、アルテミスS勝ち)
3着 コラソンビート(その後、京王杯2歳S勝ち)
4着 マスクオールウィン(その後、未勝利戦勝ち)
5着 アンジュグルーブ(その後、未勝利戦勝ち)
6着 キャットファイト(その後、2連勝)
ちょっと待ってくださいよ。2着がチェルヴィニアで3着がコラソンビートだったんですか!?
しかも4着から6着までの馬もそのあとのレースで勝っているんですね。
まさに、伝説の新馬戦。これを勝ったボンドガールは最強かもしれませんね。
そうかもしれない。まあ、この新馬戦は6月のレースだから、その後にほかの馬も成長しているし、現状の能力差をこのレースだけで測ることはできないけどな。
本当はボンドガールも阪神JFに出走する予定だったんだが、右前脚の打撲で回避することになってしまった。残念だが、チェルヴィニアらとの再戦は来年の春まで持ち越しだ。
でも、来年が楽しみですね。阪神JFも注目します!
2歳戦線(牡馬)まとめ
じゃあ、次は今年活躍している2歳牡馬(オス馬)たちを見ていこう。
馬名(性齢) | レーティング (5点満点) | 戦績 (主な勝ち鞍) | 次走予定 |
ゴンバデカーブース (牡2) | ★★★★ | 2戦2勝 (23’サウジアラビアRC) | ホープフルS |
ジャンタルマンタル (牡2) | ★★★ | 2戦2勝 (23’デイリー杯2歳S) | 朝日杯フューチュリティS |
シュトラウス (牡2) | ★★★ | 3戦2勝 (23’東京スポーツ杯2歳) | 朝日杯フューチュリティS |
セットアップ (牡2) | ★★★ | 3戦2勝 (23’札幌2歳S) | 朝日杯フューチュリティS |
シンエンペラー (牡2) | ★★★ | 2戦2勝 (23’京都2歳S) | ホープフルS |
アスクワンタイム (牡2) | ★★ | 4戦2勝 (23’小倉2歳S) | 朝日杯フューチュリティS |
エンヤラヴフェイス (牡2) | ★★ | 4戦2勝 (23’デイリー杯2歳S2着) | 朝日杯フューチュリティS |
ヴェロキラプトル (牡2) | ★★ | 2戦2勝 (23’野路菊S) | ホープフルS |
ダノンエアズロック | ★★ | 2戦2勝 (23’アイビーS) | 未定 |
その他多数 | ★★ |
おっ?牡馬は1頭抜けている評価の馬がいますね。ゴン・・・カーブ・・・って呼びにくい名前だなあ。
ゴンバデカーブースな。中東のイランにあるレンガ造りの塔の名前らしいぞ。
それより、この馬が評価が抜けている理由は、2歳牝馬のボンドガールが関係しているぞ。
ボンドガール?・・・あ、わかったぞ。ボンドガールが2着に敗れたサウジアラビアロイヤルカップを勝った馬なんですね。
そうだ。このレースは2歳3強がそろったレースで非常に注目されたんだ。
その3強とは、ボンドガール、シュトラウス、そしてゴンバデカーブースの3頭だ。
レース前はボンドガールとシュトラウスが圧倒的な人気になっていて、ゴンバデカーブースは離れた3番人気だったんだが、結果はゴンバデカーブースの完勝だった。
ほんとだ。すごい瞬発力で差し切りましたね。ボンドガールも頑張ってたけど。
シュトラウスは評価が3点ですが、この馬も強そうですね。
そうだな。この馬も「伝説」とまではいかないが、なかなか強烈な新馬戦の勝ち方だったんだ。
上のボンドガールの新馬戦の動画にもそのレースが出てくるが、持ったまま(※ムチをつかわないこと)で9馬身差をつけて勝ってしまったんだ。
へえ。でも、次走はゴンバデカーブースがホープフルステークス(ホープフルS)で、シュトラウスは朝日杯フューチュリティステークス(朝日杯FS)になっていますね。この2つのレースはどんなレースなんですか?
両方とも2歳ナンバーワンを決めるGⅠレースだ。ホープフルSは中山競馬場の芝2,000mで開催されるし、朝日杯FSは阪神競馬場の芝1,600mで開催されるんだ。牝馬も出走できるが、前に言ったように牝馬は阪神JFを目指すことになるから、実質は2歳牡馬のためのレースと考えていいだろう。
もともと2歳牡馬のナンバーワンを決めるレースは朝日杯FSだけだったが、2017年からホープフルSがGⅠに格上げされたことに伴い、前者は短距離~マイルが得意な馬が、後者は中距離~長距離が得意な馬が出走するレースとして住みわけがなされたわけだ。
朝日杯FSに出走する有力馬
そうだな。その中でも最も注目なのは、やはりシュトラウスだろう。なんといっても、あの新馬戦の勝ち方、そしてサウジアラビアRCでの好走、さらに前走の東京スポーツ杯2歳ステークスを勝ったことも大きい。
うん、強いですね。サウジアラビアRCよりも東京スポーツ杯のほうがスムーズにレースが進めているように見えました。
この馬は気性面がもっと大人になると強くなりそうなんだがな。そこは今後の成長に期待だ。なんせ、まだ2歳だからな。
それに、この東京スポーツ杯2歳Sは「出世レース」と言われていて、あの世界最強馬イクイノックスも勝ったレースだ。過去には3冠馬コントレイルがこのレースを勝っているし、ワグネリアンやディープブリランテといったダービー馬も勝っているんだ。
へえ、すごいレースなんですね。
じゃあシュトラウスが1番手として、あとの2頭、ジャンタルマンタルやセットアップはどうですか?
2頭とも好素質馬であることは間違いない。
ジャンタルマンタルはGⅡデイリー杯2歳ステークスを勝っているが、デビュー2戦目なのに相手に付け入るスキを与えず楽勝してしまった。新馬戦の勝ち方も強かったし、注目の馬だ。
デイリー杯は過去にセリフォスやアドマイヤマーズといった名マイラーたちも勝っているから、この馬ももしかするとマイルは得意かもしれないな。
セットアップは夏のGⅢ札幌2歳ステークスを勝っているが、それ以来の久々の出走だから、そのあたりがどうかだな。このレースは強かったから、あとは精神面も含めてどのくらい成長しているかだろう。
なるほど。ジャンタルマンタルは順調にレースで使われていて有利な気がしますが、セットアップはなんか一発がありそうな馬ですね。
評価が2点の馬はどうですか?アスクワンタイムとかエンヤラヴフェイスとか。
正直、このあたりは前出の馬とは能力差がありそうだな。2頭以外にも同レベルの馬たちはいるが、距離適性やこれまでのレースぶりから見て勝負になりそうな馬は見当たらない。
そうすると、朝日杯FSは3強ムードになりそうな感じですね。
ホープフルSに出走する有力馬
朝日杯FSが3強だとすると、ホープフルSは2強になりそうだな。
2強?ああ、さっきのゴンバデカーブースですね?もう1頭は・・・評価が3点のシンエンペラーですか?
そうだ。シンエンペラーもボンドガールと同じくサイバーエージェントの藤田社長の馬だ。
この馬は、なんと凱旋門賞馬ソットサスの全弟(※父と母が同じ弟のこと)という超良血馬なんだ。
凱旋門賞ってフランスで開催される世界最高峰のレースですよね?すごいな、藤田社長。どうやってそんな馬を手に入れたんだろう?
血統もすごいが、シンエンペラーは前走のGⅢ京都2歳ステークスを強い勝ち方で勝っているからな。実力も間違いないだろう。
潜在能力の高さという点からも、ゴンバデカーブースを倒せるのはこの馬くらいかな。
そうですか。評価が2点のヴェロキラプトルはどうですか?
2戦2勝で前走の野路菊ステークスも好タイムで勝っているし、不気味といえば不気味だな。この馬も9月以来の久々のレースだから、そこがどうかだな。
ほかにも出走する馬はいるだろうが、上位2頭に匹敵する素質や実績がある馬はいないから、本番では2頭のマッチレースが見られるかもしれないな。
牡馬クラシックの注目馬
いやあ、2歳の牡馬も楽しみですね。朝日杯FSやホープフルSから来年のクラシックホースが出るかもしれませんね。
来年のクラシックを考えたときに、もう1頭触れないといけない馬がいるぞ。それが、ダノンエアズロックだ。
ああ、評価が2点の馬ですね。次走は「未定」になっていますけど、この馬がどうしたんですか?
この馬は、なんとセレクトセールというセリ市で4億9,500万円という超高額で取引きされた馬なんだ。
4億!?いや、ほぼ5億円か。そんなにすごい馬なんですか?
この馬は重賞を3勝したプリモシーンという馬の半弟(※母は同じで父が異なる弟のこと)という良血でもあるんだが、ここ2戦のレースがかなり強かったんだ。
高額取引馬は意外とレースで走らない馬も多いんだが、ボンドガール(セレクトセールで2億3,100万円で取引き)にしても、この馬にしても、評判どおりに強いレースを見せる馬というのは、良血からくる能力をしっかり受け継いでいるということだから、大物になる気がするんだ。
はあ。よくわかりませんが、KBさんはそう感じているんですね。ボンドガールもダノンエアズロックも、来年のクラシックでどんな活躍をするか注目ですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
初心者向けにわかりやすく2歳戦線の見どころを解説したつもりですが、「この記事を見たことでより秋競馬が楽しみになった」と思っていただけると幸いです。
今年の中央競馬もいよいよクライマックスです。2歳戦をしっかり楽しんでいただいて、有馬記念、そして来年の競馬につなげていただけると幸いです。
最後に、2歳戦のカギは「成長度合い」ですよ!お忘れなく!