今週のチャンピオンズカップは、今年のフェブラリーステークスを勝ったレモンポップが人気を集めています。
一方で、多くのファンが心配しているのは「果たして距離(1,800m)がもつのか?」ということでしょう。そう、レモンポップはこれまで距離が1,600mまでのレースしか使われていないのです。
「レモンポップは短距離馬ではないか?」という意見に対して、私は「短距離馬ではない。1,800mでも強い(はず)」と言い切れます。今回は、私がそう言い切る3つの理由ついて解説します。
ちなみに、レモンポップの強さについては、以下の記事で解説しています。
https://toproadoor.net/2023/11/03/2023autumn_midokoro_dirt/「1,800mでも強い」と言い切れる3つの理由
私が「レモンポップは1,800mでも強い」と言い切れる理由は以下のとおりです。
- マイル(1,600m)レースを圧勝する馬はスタミナもある
- 1,400mのレースは能力だけで勝てる
- 血統的に中距離向きである
それでは、1つずつその理由を解説していきます。
マイル(1,600m)レースを圧勝する馬はスタミナもある
私は前走のマイルチャンピオンシップ南部杯でレモンポップが大差勝ち(2.0秒差)したレースをみて「この馬は相当強い」と確信しました。
皆さんは、マイル(1,600m)の重賞レースを大差勝ちした馬がどんな馬たちか知っていますか?1986年以降にJRAのマイル重賞を大差勝ち(1秒差以上)した馬はなんと9頭しかいません。それが以下のとおりです。
どうですか?そうそうたるメンバーでしょ?
牝馬2冠馬マックスビューティ、栗毛の弾丸サッカーボーイ、芦毛のアイドルオグリキャップ、マイル女王ノースフライト、ダートの怪物クロフネ、GⅠ7勝ウォッカなど歴史的な名馬ばかりです。
しかも、いずれの馬も2,000m以上の重賞レースを勝っています。さらにマックスビューティはオークス(2,400m)、オグリキャップは有馬記念(2,500m)、クロフネはジャパンカップダート(2,100m)、ウォッカはダービー(2,400m)といったGⅠレースも勝っているのです。
マイルレースというのは短距離というよりも中距離に近いレースです。単にスピードがあるだけではなく、スタミナも持ち合わせた馬でないと重賞クラスのレースは勝てない距離だとよく言われています。
レモンポップは地方交流重賞ではありますが、2.0秒差という大差でマイルGⅠを勝っています。2秒以上の差をつけてマイル重賞を勝った馬はこれまでいません(1986年以降)。これは並大抵のスタミナではないと思っています。
1,400mのレースは能力だけで勝てる
「スタミナがあるのはわかった。でも・・・」
そう、何だか短距離馬だという印象が拭えない、そんな方も多いでしょう。それは、おそらくレモンポップの1,400mのレース成績がとびぬけて優れているように見えるからではないでしょうか。
マイルの成績もいいのですが、1,400mに関しては7戦5勝2着2回とほぼパーフェクトな成績で、この距離のレースが勝ち星の半分以上を占めているのです。
でもよく見て!唯一の着外が1,200mですよ!
「もしかして短距離は苦手?でも1,400mは強いし・・・どっちなの?」
そんな疑問に対して私の回答はズバリ「1,400mのレースは能力だけで勝てる」ということです。
これはある競馬評論家の話。菊花賞や天皇賞(春)などを勝ったビワハヤヒデという馬が2歳時に1,400mの重賞を勝ったことについて「(ビワハヤヒデは)短距離馬ではない。1,400mという距離は(絶対的なスピードがなくても)能力だけで勝てることがある」と言っていました。
これを思い出して実際に調べてみました。そうすると、やはりこの話は本当かもしれないと思ったのです。その結果がこちら。
- 新馬戦または未勝利戦で1,400mのレースを勝ちあがったGⅠ馬
- ・サクラローレル(96’天皇賞(春)、96’有馬記念)
・ネオユニヴァース(03’皐月賞、03’日本ダービー)
・スティルインラブ(03’牝馬3冠)
・スイープトウショウ(04’秋華賞、05’宝塚記念、05’エリザベス女王杯)
・モーリス(16’天皇賞(秋)、16’香港カップなどGⅠ6勝)
・テーオーケインズ(21’チャンピオンズC、21’帝王賞、22’JBCクラシック)
- 2~3歳で1,400mの1勝クラスorオープン特別を勝ったGⅠ馬
- ・マックスビューティ(87’桜花賞、87’オークス)
・メジロドーベル(97’オークス、97’秋華賞などGⅠ5勝)
・ファレノプシス(98’桜花賞、98’秋華賞、00’エリザベス女王杯)
・カワカミプリンセス(06’オークス、06’秋華賞)
- 1,400mの重賞レースを勝ったGⅠ馬
- ・メジロラモーヌ(86’牝馬3冠)
・ニッポーテイオー(87’天皇賞(秋)、87’マイルCS、88’安田記念)
・ヤマニンゼファー(92’93’安田記念、93’天皇賞(秋))
・ビワハヤヒデ(93’菊花賞、94’天皇賞(春)、94’宝塚記念)
・グラスワンダー(98’99’有馬記念、99’宝塚記念、97’朝日杯3歳S)
・エルコンドルパサー(98’NHKマイルC、98’ジャパンC、99’サンクルー大賞典)
これもそうそうたるメンバーでした。中距離以上で活躍した歴史的名馬たちがこれだけ1,400mのレースを勝っているということです。
そう、ここで私が言いたいのは、「レモンポップはたまたま1,400mを使い続けてきたから短距離馬に見えるだけで、実は短距離が苦手なのではないか?これまでは能力だけで勝っていたのではないか?」ということです。そうでなければ、この馬の能力を考えたときに、いくら海外GⅠとはいえ1,200mのレースで10着に惨敗する理由がみつからないのです。
血統的に中距離向きである
最後に、この馬の血統についてよく見ると、どう考えても中距離向きだという結論になりました。
こちらがレモンポップの血統表です。
まず、レモンポップのお父さん、Lemon Drop Kidの産駒がどれだけJRAで走っているかご存じですか?検索をかけると、JRAで走ったことがある馬はたった22頭です。そのうち、勝ち星をあげた馬は14頭しかいません。14頭のつみあげた勝利数は全部で25勝。そのうちの9勝をレモンポップが占めています。
Lemon Drop Kid産駒の25勝の内訳をみると以下の通りです。
- Lemon Drop Kid産駒(JRA出走歴あり)の勝利レースの内訳
- 1,000m~1,300m・・・4勝
1,400m~1,600m・・・13勝(うち9勝がレモンポップ)
1,700m~2,000m・・・8勝(1,700m1勝、1,800m6勝、1,900m1勝)
2,100m~・・・・・・・0勝
ご覧いただけばわかるとおり、レモンポップの成績を除けば、1,700m以上のレース、特に1,800mのレースの成績が優れています。
Lemon Drop Kid産駒の海外での活躍を見ても、パシフィッククラシックS(ダート2,000m)、ケンタッキーオークス(ダート1,800m)、カナディアン国際S(芝2,400m)といった中長距離GⅠの勝利が多くなっています。日本でもおなじみの代表産駒ビーチパトロールも、セクレタリアトS(芝2,000m)、アーリントンミリオン(芝2,000m)、ターフクラシックS(芝2,400m)といった芝の中長距離GⅠを勝っています。
Lemon Drop Kid自身も、現役時代はベルモントステークス(ダート2,400m)でGⅠ初制覇を果たしていますし、その後も1,800m以上のダートGⅠを3勝しています。そう、スピードが求められる米国において、Lemon Drop Kidはスタミナを生かした競馬を持ち味としていたのです。
最後に、レモンポップの母系からはエーピーインディという米国の名馬を輩出しています。エーピーインディも現役時代はベルモントステークスを勝っていますし、ブリーダーズカップクラシック(ダート2,000m)も勝ちました。産駒もやはり中距離で活躍していますし、今回チャンピオンズカップに出走するメイショウハリオも父系をたどるとエーピーインディに行きつきます。
まとめ
ここまで書くと、やはりチャンピオンズカップはレモンポップを本命に推さずにはいられなくなります。
レモンポップのもう一つの不安材料として言われているのが、コーナー4つのレースが初めてということ。しかし、前記のとおり日本で走ったLemon Drop Kid産駒は1,700m以上のレースで好成績を挙げています。この距離で挙げている8勝は全てコーナー4つのレースです。問題ないのではないでしょうか。
あとは、大外枠がどうかというところ。1コーナーまでの直線が短いことと、先行馬が外枠に偏っていることがどう影響するか。スタートを決めて早めに内に切れ込んで好位につければ、レモンポップの圧勝劇が見られる気がしています。
皆さんはどう見ますか?