今日のジャパンカップはイクイノックスとリバティアイランドの一騎打ちムードになっていますね。この2頭と鞍上のルメール、川田の両ジョッキーばかりが注目を集めていますが、ジャパンカップの見どころはそこだけではありません。
ジャパンカップの醍醐味、それは外国人騎手と外国馬の未知なる走り。
昨年のジャパンカップはヴェラアズールとライアン・ムーア騎手が狭い馬群を割って一気にぶっこぬく姿に唖然としました。
そこで今回は、2023ジャパンカップに出走する外国人騎手と唯一の外国馬イレジンについて、初心者の競馬ファンにもわかりやすいようにどんな騎手や馬かを解説したいと思います。きっと、これを見ればジャパンカップがさらに面白くなるはず!
文章を読むのが苦手な方や、読む時間がない方はこちらの動画でお楽しみください。
2023ジャパンカップに参戦する外国人騎手
今年2023年のジャパンカップに参戦する外国人騎手は以下のとおりです。
2番イクイノックス(日本) クリストフ・ルメール(フランス→日本) 4番スタッドリー(日本) トム・マーカンド(イギリス) 7番イレジン(フランス) マリー・ヴェロン(フランス) 9番ヴェラアズール(日本) ホリー・ドイル(イギリス) 10番ダノンベルーガ(日本) ジョアン・モレイラ(香港→ブラジル?) 15番ショウナンバシット(日本) ミルコ・デムーロ(イタリア→日本) 17番スターズオンアース(日本) ウィリアム・ビュイック(イギリス)
以上7名です。
ルメール騎手とデムーロ騎手はJRA所属で日本を拠点としているので、日本人ジョッキーと変わらない、どころか日本人ジョッキー以上に日本では有名かもしれません。
モレイラ騎手も、短期免許で来日して150勝以上を挙げているので、その存在を認識している人は多いはずです。
一方で、今回出走するイレジンを含め、ヨーロッパで活躍している騎手や馬のことを詳しく知る機会は少ないと思います。
今回はイギリスとフランスで活躍する4人の騎手と、そのうちの1人の騎手と固い絆で結ばれているイレジンという馬について紹介します。
ウィリアム・ビュイック騎手(イギリス)
ビュイック騎手は1988年生まれの35歳。ノルウェー出身ですが、現在はゴドルフィンというドバイの王族が運営している馬主団体の主戦騎手としてイギリスを中心に活躍しています。
なんと今年2023年はイギリスの騎手リーディングで1位。昨年から2年連続での1位だそうで、まさにイギリスのナンバーワンジョッキーということです。年齢的にも、日本の川田将雅騎手のような存在でしょうか。今が一番あぶらが乗っている頃だと思います。
ナサニエルやアダイヤーといった名馬でヨーロッパのGⅠレースをたくさん勝っていて、日本でも、2018年のマイルチャンピオンシップをステルヴィオで勝利しています。
私がビュイック騎手の騎乗を初めて見たのは、ソングラインが出走した今年の米国ブリーダーズカップマイル。このレースでビュイック騎手はマスターオブザシーズという馬で大外一気の差し切り勝ちを収めています。ソングラインがモタモタする中、ビュイック騎手はほぼ最後方から溜めていた脚を一気に爆発させる走りを見せました。
末脚が持ち味のスターズオンアースにとって、これほど頼もしい相棒はいないのではないでしょうか。
ジャパンカップでの成績は、2013年のトーセンジョーダンで3着だったのが最高順位で、今回スターズオンアースと初制覇を狙います。
ホリー・ドイル騎手(イギリス)
今回、ライアン・ムーア騎手の負傷で急遽ヴェラアズールに乗ることになったドイル騎手。
ドイル騎手は1996年生まれ。27歳の女性ジョッキーです。実はドイル騎手。何を隠そう、このあと紹介するトム・マーカンド騎手の奥様なのです。マーカンド騎手とは見習い時代に所属していた厩舎で一緒だったようで、今回も夫婦仲良くそろって来日しています。
ドイル騎手もイギリスでは素晴らしい成績を上げていて、今年2023年はイギリスの騎手リーディングで5位という成績でした。2019年には116勝してイギリスの女性騎手によるシーズン最多勝記録を塗り替えています。
昨年から今年にかけてナシュワという馬でフランスオークスなどGⅠを3勝したほか、今年も短距離と長距離のGⅠを制するなど、大舞台でも大活躍しています。
昨年から短期免許で来日するようになりましたが、これまで日本国内での重賞勝利はありません。ジャパンカップでの騎乗は今回が初めてになります。
ドイル騎手は、女性騎手とは思えない力強い手綱さばきを見せてくれます。ズバリ、かっこいいです。
今回のパートナー、ヴェラアズールは跳びが大きくて力強い走り方をする馬ですが、ドイル騎手であれば十分に乗りこなせるでしょう。
トム・マーカンド騎手(イギリス)
3人目はドイル騎手の旦那さん、マーカンド騎手です。今年のジャパンカップではスタッドリーという人気薄の馬に騎乗します。
マーカンド騎手は1998年生まれの25歳で、奥さんよりも2歳若い騎手です。
やはりイギリスで活躍していて、今年の騎手リーディングは奥さんよりも1つ上の4位という好成績でした。年齢的には、日本の横山武史騎手や坂井瑠星騎手といった実力派の若手騎手のイメージでしょうか。
オーストラリアのクイーンエリザベスステークスという2,000mのGⅠを連覇したアデイブという馬の主戦を務めていましたが、今年も同じレースをドバイオナーという馬で勝ちました。
ドイル騎手と同じく昨年から短期免許で来日していますが、やはり重賞勝ちはありません。今年はエリザベス女王杯でサリエラという馬に騎乗して6着に入ったのは記憶に新しいと思います。
ジャパンカップは昨年に続いて2回目の騎乗で、昨年は牝馬3冠馬デアリングタクトで4着に入りました。デアリングタクトは当時5番人気でしたので、人気以上に馬をもってきたというところで、今年のスタッドリーも穴として面白いかもしれません。
マリー・ヴェロン騎手(フランス)
最後の4人目は、唯一の外国馬イレジンとともにジャパンカップに臨むヴェロン騎手です。
ヴェロン騎手は1999年生まれの24歳。ヴェロン騎手もドイル騎手と同じく女性ジョッキーです。
若いとはいえ、ヴェロン騎手は今年、本拠地のフランスで72勝を挙げており、騎手リーディングで7位という好成績をあげています。そして2022年には、今回騎乗するイレジンでGⅠ初制覇を果たしています。年代的には日本の藤田菜七子騎手に近いですが、実績は藤田騎手よりもヴェロン騎手のほうがずっと上です。藤田騎手も今回のジャパンカップに参戦しますが、ぜひ負けずに頑張ってほしいと思います。
ヴェロン騎手が日本のレースで騎乗するのは今年が初めてで、この夏の札幌で6戦して1勝を挙げています。もちろんジャパンカップも今回が初騎乗になります。
では、そんなヴェロン騎手が今回騎乗するイレジンとはどんな馬なのでしょうか?
2023ジャパンカップ出走馬 イレジン(フランス)
・性齢 6歳 セン馬(去勢されたオス馬)
・父 Manduro
・母 Inanga(母父 Oasis Dream)
・調教師 ゴーヴァ(フランス)
・戦績 19戦13勝(2023GⅠガネー賞、2022GⅠロワイヤルオーク賞)
前述のように、イレジンはヴェロン騎手の手綱で2022年にフランスGⅠロワイヤルオーク賞を勝っています。まったくの圧勝で、ヴェロン騎手も初G1がうれしかったのか派手なガッツポーズを見せていました。
そして今年、ガネー賞というフランスGⅠを勝ちました。このレースにはヴァデニという昨年のフランスダービー馬も出走していたのですが、最後方でためていた脚を直線で一気に爆発させて大外から差し切り勝ちを収めたのです。このときのヴェロン騎手の騎乗ぶりは圧巻で、「まさか女性騎手だったとは」とレースを見た方は驚くと思います。
そして、この馬の応援ポイントとしては、デビュー戦を除いて、ヴェロン騎手がすべてのレースの手綱を握っているというところです。そう、ヴェロン騎手もイレジンも、お互いにずっと寄り添ってここまで成長してきたということです。
ヴェロン騎手も、この馬への愛情や思い入れは相当なものがあるでしょう。会見のインタビューでも自信と手ごたえにあふれた彼女の表情が印象的でした。「私のイレジンが無様なレースするわけないでしょ!」という感じがヒシヒシと伝わります。
正直、調教師さんも言っていましたが、ジャパンカップでパンパンの良馬場になるとこの馬には分が悪いと思います。イレジンが勝ったレースはかなりの確率で重馬場なのです。
イレジンの父Manduroという馬はドイツ生まれで、そのお父さんのMonsunという馬もドイツにゆかりのある血統です。いかにもヨーロッパの力のいる馬場で長距離をガンガン走りそうな馬に見えますが、イレジンの母父はOasis Dream、母の母の父がWoodmanでスピードタイプの血も入っています。
実際、ガネー賞のレースを見ると、走り方も含めて瞬発力がかなりありそうな気がしています。ジャパンカップの2,400mという距離はベストだと思いますし、ハイペースになってタフな競馬になれば、脚をためていたイレジンが一気に追い込んでくる展開もありうると思います。
何より、イレジンとヴェロン騎手との信頼の絆が一番の武器ではないでしょうか。
まとめ
今日のジャパンカップ、ぜひ外国人騎手とイレジンに注目をしてみてください。
私もイレジンの応援馬券を買いたいと思っています。
でも・・・やっぱりイクイノックスとリバティアイランドの対決が一番楽しみだなあ(笑)