競馬を学ぶために仮想の競馬世界「Winning Road」で馬主体験をすることになったあなた。
北海道の日高地方(北海道の南部にある日本最大の馬産地)にある小さな牧場でサラブレッドを生産しながら、所有馬での凱旋門賞(フランスで開催される世界最高峰のレース)制覇を目指していきます。
前回は日本最大のサラブレッドセリ市であるセレクトセールへの参加を通じてサラブレッドの入手方法を学びましたが、今回は庭先取引で入手した2歳馬のデビューに向けた動きの中で騎手と調教師について学びましょう!
何のことだかさっぱり分からない、という方は以下の記事をご覧ください。
※この物語はフィクションです。
ノーザンファームで2歳馬を入手しよう!
いやー、すごい施設ですね。うちの牧場とは規模が全然ちがう。
そうですか。うちの牧場もここまで大きくするには時間がかかりましたが、やはり強い馬を作り続ければ自然と施設も大きくなっていくものですね。
なるほど。うちもこれから強い馬をどんどん作って大きくしていきたいです。
こちらにいるのが、まだオーナーが決まっていない2歳馬たちです。もしこのまま決まらなければ、私の個人名義で所有しようと思っている馬たちですが、気に入っていただける馬がいれば是非お譲りします。
ありがとうございます!どの馬がいいかなあ・・・
(おい、須貝先生がいないのにお前でいい馬が選べるのか?)
(大丈夫ですよ。ノーザンファームの馬ですよ?みんないい馬に決まってるじゃないですか。)うーん、この馬はいい顔してるな。この馬がいいかな?
(は?顔で選ぶのか?大丈夫か?)
わかりますよ。サラブレッドは走るために生まれてきた生き物ですから、走る気満々の馬はこの頃からでも「走るぞ」っていう顔つきをしてるものです。この子はここにいる馬たちの中でも一番いい時計で走っている馬です。
(マジか・・・)
そうですか!牡馬だし・・・この馬に決めました!お父さんがエフフォーリア?・・・でお母さんがポルカリズムか。
(エフフォーリアは2021年の皐月賞、天皇賞(秋)、有馬記念のGⅠ3勝した名馬だ。ノーザンファームの代表産駒で・・・)
お母さんは現役時代は強かったんですか?
新馬戦を勝った後は期待された成績が挙げられませんでしたが、この牝系は結構いい馬が生まれていますので、期待している繁殖牝馬の1頭ですよ。お父さんのエフフォーリアとの相性もいいと思います。
なるほど。そんないい馬をいただけるなんて、本当に感謝します。ありがとうございます!
いえいえ。これからもお互いにいい馬が作れるように頑張っていきましょう!この馬は、中内田厩舎に入厩(厩舎に入って調教を始めること)することが決まっていますから、後で中内田先生にも連絡しておきます。
何から何までありがとうございます。私からも中内田先生に挨拶しようと思います。
馬名を決めよう!
中内田先生に挨拶もできたし、あとは入厩する日を決めるんだけど、その前に何かしろって言われたんだよなあ。なんだったっけかなあ・・・
馬名の登録だろ?
あ、そうでした。馬名を決めるんですよね。初めてだから、さてどうしようかな?
馬名の決め方はいろいろあるぞ。例えば、「キタサンブラック」のように冠名をつける方法だな。「キタサン」が冠名なんだが、冠名を馬名につけると、その馬がどのオーナーの馬かっていうのがすぐ分かるところがメリットだ。キタサンブラックが歌手の北島三郎さん(キタ=北島の北、サン=三郎の三)の馬だっていうのが競馬を知らない人にまで浸透しただろう?
そうでした。北島三郎さんが競馬場で「まつり」を歌う映像もよくニュースで見ました。
あとは、血統表に自分の冠名の馬が並ぶのを見るのもロマンがあっていいな。メジロマックイーンという名馬がいたんだが、この馬の血統表を見ると「メジロ」という馬の名前が父系にも母系にも代々続いているのが分かるだろ?
なるほど。これを見ると牧場の歴史を感じて「自分の代も強い馬を作らなきゃ」っていう気持ちになりますね。
冠名をつけるか、つけないかは自由だが、冠名をつけない馬主さんも多いぞ。例えば、ソダシのオーナーだった金子真人さんは「ディープインパクト」とか「キングカメハメハ」みたいな冠名のない馬名ばかりつけているぞ。世界的に見たら、冠名をつける文化は日本独特のものだ。
そうなんですね。うーん、迷うなあ。父エフフォーリアと母ポルカリズムだから・・・「エフフォーリアリズム」とか?
父名や母名から馬名をつけるのは王道だけど、残念だが馬名は9文字までと決まっているんだ。
エフフォー・・・そうか10文字か。でも9文字以上の馬名を見たことありますよ?
それは外国馬だろう。海外では馬名の文字数制限はないんだ。
へー、9文字って難しいですね。冠名つけたらなおさら選択肢が限られますよね。凱旋門賞狙うんだからなあ・・・それじゃあやっぱり「ガイセンモン」だな。
は?そんな安易な名前の付け方でいいのか?
そんなこと言われても、いまは凱旋門賞を勝つことしか考えてないんで。他に思いつかないですね。
まあ、いいか。馬名にはオーナーの想いを込めるのが1番いいと思うからな。じゃあ、早速申し込みな。中内田先生も待ってるから。
わかりました。いよいよ初めての所有馬デビューが近づいてきたぞ!
調教師について学ぼう!
お会いするのは初めてですね。このたびはガイセンモンを預かっていただき、ありがとうございます。凱旋門賞を狙っている馬ですので、よろしくお願いします。
(おいおい(汗)いきなりそんな挨拶ないだろ)
こちらこそ。ノーザンファームの吉田さんからお聞きしています。凱旋門賞を狙えるかどうかはこれからの成長次第ですが、ガイセンモンはいい素質を持っていると思いますよ。
そうですか!早速ですが、デビュー戦はいつ頃になりそうですか?
ノーザンファームでの様子を聞くと仕上がり(デビュー)は早そうですね。これからトレセンで乗り込んでいきますので、様子を見ながらですが、9月の阪神(競馬場)でデビューすることになると思います。これからゲート試験もありますし。
トレセン?ゲート試験?
すいません、中内田先生。こいつはオーナーブリーダーを始めたばかりで何にも知らないんですよ。
そうでしたね(笑)トレセンというのは、「トレーニング・センター」の略で、競走馬を調教して鍛える施設のことです。中央競馬(JRA)では茨城県の美浦トレーニング・センターと、ここ滋賀県の栗東トレーニング・センターの2箇所があります。われわれ調教師も、トレセンの中に厩舎を構えて馬の調教と管理を行なっています。
そうか。ここは栗東のトレセンの中だったんですね?
そうです。私は栗東トレセン所属の調教師ということになりますし、ガイセンモンは私の管理馬ですので「関西馬」という言い方をします。逆に、美浦の調教師さんの管理馬は「関東馬」ということです。
ちなみに、須貝先生も栗東トレセン所属だな。
なるほど。あと、ゲート試験とはどんな試験なんですか?
競走馬がレースに出るためには、ゲート試験に合格しないといけません。
実際のレースでは・・・
ゲートの中に入る
↓
ゲートの中で大人しく立って待つ
↓
ゲートが開いたら走り出す
という一連の流れを馬が問題なくこなす必要があります。これらが1つでもできないとレースが成り立ちませんし、場合によっては馬や騎手の怪我にもつながります。
ですから、デビュー前に必ずゲート試験を行って、レースに出ることができる状態かどうかチェックするわけです。
デビュー後であっても、ゲートに難がある場合は再試験を受けることもあります。
そうなんですね。ということは、試験に受からない限りデビューはできないということか。
そうなりますね。ただ、安心してください。ノーザンファームに聞いたところ、ガイセンモンは牧場でゲート練習をしっかりやっていたようですので、うちで少し練習して来週あたりに試験を受けさせる予定です。
そうですか、よかった(ホッ)
ちなみに・・・先生は調教師としてどのようなことをされるのですか?
(オイっ!)失礼なことを言ってすいません、先生(汗)。なんせ馬を預けるのも初めてなので・・・
大丈夫ですよ。では簡単に説明しましょう。
私はこの厩舎(競走馬を預かって管理する場所)の責任者であり管理者ですので、管理している馬たちや所属するスタッフに対して全ての責任を負っている立場です。サッカーチームでいうと監督のような立場ですね。ですから、私自身も馬に乗ることはありますが、実際に管理馬に調教をつけるのはうちのスタッフでして、私は馬の状態やオーナーの意向などを確認しながら調教の方針やレース選択を決定することが主な仕事になります。
なるほど、チームの監督というイメージなんですね。スタッフさんはどんな方たちがいるんですか?
主には2種類の仕事がありまして、1つは馬に乗って調教をする調教助手、もう1つは馬のお世話をする厩務員です。スタッフそれぞれに仕事はありますが、私も含めて1つのチームとして協力しながら馬を管理しています。
調教師1人で何でもやるわけではないんですね。ちなみに・・・調教ってどんなことをやるんですか?
調教の目的は馬を鍛えること、そして馬にレースで速く走る方法を教えることになります。調教のメニューとしては、ざっとこんな感じですね。
JRAホームページ 競馬用語辞典より
- 乗り運動:厩舎の周りをスタッフが乗って、馬を歩かせたり、角馬場で馬を軽く走らせたりするトレーニングのこと。乗り運動して十分に体をほぐした後に、コースの調教に移る。
- 曳き運動:乗り運動と同様に、馬にとって欠かすことのできないトレーニングで、乗り運動やコース調教の前後に行なわれる、引き綱で曳いて歩かせる運動のこと。
- 攻め馬:(コースでの)馬の調教のこと。競走馬は攻め馬によってコンディションを上げ、レースに臨む。
- 追い切り:レース直前週の速いタイムの調教のことをいう。レースに向けて馬の状態を最高に持っていくため、レースの3、4日前の調教で、十分に調教で追い切ることから、この言葉が生まれた。
他にも、先ほど言ったようにゲートの練習をしたり、足元に不安がある馬にはプールで泳がせたりもします。
プールまであるんですね。すごい。トレセンの中にはどんなコースがあるんですか?
主に使っているのはウッドチップの周回コースと坂路ですね。
ウッドチップというのは粉砕された木片のことで、これを敷きつめたコースで走らせると芝やダートよりも脚への負担が少なく調教ができます。
坂路は、文字どおり傾斜がつけられた調教コースで、ここにもウッドチップが使われています。心肺機能や後脚を鍛えることができますし、重心が後ろにかかるので馬が痛めやすい前脚への負担を減らすこともできます。
そうなんですね。とても勉強になりました。詳しく教えていただいてありがとうございました!
ガイセンモンをよろしくお願いします。
こちらこそよろしくお願いします。ぜひデビューを楽しみにしていてください。
そういえば、うちの管理馬によく乗ってもらっている川田騎手が来ているので、お会いになるといいですよ。ガイセンモンにも乗るかもしれませんし。
わかりました。さっそく挨拶に行ってきます!
騎手について学ぼう!
おい、川田騎手がいたぞ。日本のナンバーワンジョッキーだからな。失礼なこと言うなよ。
あ、こんにちは。はじめまして。ガイセンモンのオーナーの「あなた」です。私の馬にも乗ってもらえるそうで、ありがとうございます!
(おいおい(汗))
ガイセンモン?あー、中内田厩舎の新馬のことですか。そのオーナーさんですね。はじめまして。乗らせていただくかどうかはわかりませんが(苦笑)、よろしくお願いします。
(ほっ。怒らなくてよかった。)
こちらで何をされていたのですか?
(ん?)何って、今度レースに出る馬の追い切りで来ていたところです。
すみません、川田さん(大汗)。こいつは新米オーナーで何もわかっていないんで・・・
追い切りって、馬の調教をしていたということですか?
そうです。主戦※を務めているスーパータイフーンが来週日曜日に半年ぶりにレースに出るので、調教師から馬の調子を見てほしいというオーダーがあって乗りに来てます。
※その競走馬の騎乗を担当している騎手のこと
スーパータイフーンといえば中内田厩舎の所属で、重賞レース※をたくさん勝っている馬ですよね。この秋にはGⅠ初制覇を狙えると期待されていて。
※賞金や歴史と伝統・競走内容等により格付けされている重要な意義をもったレース。格上から順にGⅠ、GⅡ、GⅢの3グレードに分けられる。
へー、騎手の方もそういう強い馬には調教で乗るんですね。
調教ではまったく乗らない騎手もいますが、乗る騎手は多いですね。特に厩舎に所属している若手の騎手なんかは厩舎の仕事として乗っている面もありますし、自分の騎乗技術を磨くために日頃のトレーニングとして乗っている騎手もいると思いますよ。
「厩舎に所属する騎手」っていうのはどういう騎手ですか?
新人の騎手は、まずどこかの厩舎に所属して、そこの管理馬を中心にレースで騎乗することになります。いきなり新人騎手に騎乗を頼む馬主はいませんので、新人騎手を育てる役割を調教師が担っているわけです。いわば師弟関係ですね。
一人前になって他の調教師や馬主から騎乗を依頼されるようになれば、私のようにフリー騎手になって自由に騎乗する馬を決めることになります。
そうは言っても騎乗依頼が多くなると自分だけで騎乗する馬の管理をすることは難しくなりますので、今はエージェント(代理人)にお願いして騎乗する馬を決めたり、騎乗機会を確保したりするの一般的ですね。
そうなんですね。勉強になりました。調教が終わったら川田騎手はご自宅に帰るんですか?
そうですね。また明後日の金曜日になれば調整ルームに入らないといけないので、それまでは家族とゆっくり時間を過ごそうと思ってます。
知らないことばかりで申し訳ありませんが、「調整ルーム」というのは何ですか?
調整ルームというのは、騎乗するレースの前日までに競馬場やトレセン近くにある指定の宿泊施設へ入らないといけないというルールがあって、その宿泊施設(ホテルなど)のことです。
調整ルームでは、八百長やいろいろな不正がないように外部との連絡を遮断したうえで、トレーニングをしながらレースまで過ごすことになります。
あ、そろそろ調教の時間なので、これで失礼します。
すみません、長い時間引きとめてしまって。ありがとうございました!
よかったな。優しく対応してもらって。
これで川田騎手にも覚えてもらえただろうから、いよいよガイセンモンのデビュー戦が楽しみになってきたな。
そうですね。でも、やっぱり騎手の方って小柄なんですね。
そうだな。170cmを超える騎手もいるが、大体は160cmそこそこの騎手が多いと思うぞ。
馬に乗るんだから、騎手はやっぱり小柄で痩せてないといけないですよね。
はあ、広いトレセンをずっと歩いていたら何だかお腹がすいたなあ。
せっかく滋賀にきたから、近江牛と近江ちゃんぽん食べて帰りたいなあ。
さっき厩舎で大福もらって食ってたろ。お前も少しは痩せろよ!(チャンチャン)
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