今週末は待ちに待った秋のGⅠ戦線の開幕、スプリンターズステークスが開催されます。
絶対的な王者がいない中で果たしてどの馬がスプリント王者に輝くのか注目です。
ということで、今年2023年の秋競馬の見どころを解説するシリーズ第3弾は、短距離・マイル戦線編です。
短距離・マイル戦線と秋競馬について知ろう!
前回、前々回と3歳クラシックについて教えてもらったんですが、次は古馬(4歳以上の馬)の秋競馬の見どころを教えてもらいたいんです。
わかった。じゃあ、今回は短距離・マイル戦線の秋競馬について教えよう。
まず、競走馬は①短距離が得意な馬、②長距離が得意な馬、③その間の距離(マイル・中距離)が得意な馬に分かれるんだ。
JRA(日本中央競馬会)のレースの体系上、この3つの馬たちは古馬になると次のようなレースを目指すことになる。
<距離別のGⅠレース> ①短距離が得意・・・高松宮記念(芝1,200m)、スプリンターズステークス(芝1,200m) ②長距離が得意・・・天皇賞・春(芝3,200m)、ジャパンカップ(芝2,400m)、有馬記念(芝2,500m) ③短距離と長距離の間の距離が得意・・・フェブラリーステークス(ダート1,600m)、大阪杯(芝2,000m)、ヴィクトリアマイル(芝1,600m)、安田記念(芝1,600m)、宝塚記念(芝2,200m)、天皇賞・秋(芝2.000m)、エリザベス女王杯(芝2,200m)、マイルチャンピオンシップ(芝1,600m)、チャンピオンズカップ(ダート1,800m)
へえ。なんか「短距離と長距離の間の距離」のレースが多過ぎないですか?
確かにそうだな。でも、実際日本で走っている競走馬は、この「間の距離」が得意な馬たちが多いんだ。
そうか。だからその分GⅠレースの数が多くなっているんですね。
例えば、ヨーロッパだと歴史的に芝の長距離のレースで強い馬を作ることが盛んだったから、今でも長距離のGⅠレースが多く開催されているんだ。
アメリカのレースはダートの短距離〜中距離がほとんどで、長距離レースや芝のレースはあまり盛んではない。
日本では、やっぱりクラシックを勝ちたいという関係者が多いから、どうしても1,600m〜2,400mの芝レースに強い馬を作る傾向があるんだな。
今回は短距離・マイル戦線ということですけど、「マイル」ってなんですか?
マイルとは距離の単位のことで、1マイルは約1,600mだ。桜花賞や安田記念など距離が1,600mのレースのことを「マイルレース」というぞ。
短距離の得意な馬がギリギリこなせる距離が1,600mだから、今回は短距離が得意な馬とマイルレースが得意な馬をひっくるめて秋競馬の魅力を紹介するんだ。
2023秋競馬の見どころはコレだ!
わかりました。じゃあ、短距離とマイルで行われる秋競馬の見どころを教えてください。
「短距離とマイルをひっくるめて」と言っておいてなんだが、今年は短距離とマイルでそれぞれ有力馬が異なるんだ。だから、それぞれの路線を分けて見たほうがいいな。
そうなんですか?じゃあ、短距離とマイルで見どころが違うんですね?
そうだ。ズバリ、秋競馬の見どころは
短距離・・・スプリンターズステークス
マイル・・・マイルチャンピオシップ
この2つの GⅠレースをそれぞれの路線を歩んできた馬たちがどう戦うかということに他ならないんだ。
短距離戦線まとめ
じゃあ、まず短距離路線はどんな感じなんですか?
これを見てくれ。
この表は今年2023年の短距離路線で活躍している馬たちの一覧だ。
馬名 | レーティング (5点満点) | 戦績 (主な勝ち鞍) | 次走予定 |
ファストフォース | ★★★ | 29戦7勝 (23’高松宮記念、21’CBC賞) | 引退 |
ナムラクレア | ★★★ | 14戦5勝 (23’キーンランドC、23’シルクロードS、22’函館SS、23’高松宮記念2着、22’桜花賞3着) | スプリンターズS |
ジャスパークローネ | ★★ | 14戦6勝 (23’北九州記念、23’CBC賞) | スプリンターズS |
アグリ | ★★ | 12戦5勝 (23’阪急杯) | スプリンターズS |
モズメイメイ | ★★ | 7戦4勝 (23’チューリップ賞、23’葵S) | スプリンターズS |
オールアットワンス | ★ | 11戦4勝 (23’21’アイビスサマーダッシュ) | スプリンターズS |
キミワクイーン | ★ | 12戦5勝 (23’函館SS) | スプリンターズS |
テイエムスパーダ | ★ | 15戦5勝 (23’セントウルS、22’CBC賞) | スプリンターズS |
ヴェントヴォーチェ | ★ | 15戦7勝 (23’オーシャンS、22’キーンランドC) | 未定 |
ナランフレグ | 評価不能 | 36戦6勝 (22’高松宮記念) | スプリンターズS |
ピクシーナイト | 評価不能 | 12戦3勝 (21’スプリンターズS、21’シンザン記念) | スプリンターズS |
ドルチェモア | 評価不能 | 7戦3勝 (22’朝日杯FS、23’サウジアラビアロイヤルC | スプリンターズS |
「レーティング」っていうのはTOPROADOORさんの独自評価で、星★の数が多ければ多いほど馬が強いことを示しているんですよね(満点は★5つ)。
・・・クラシック編だと★が5つや4つの馬がいましたけど、一番評価が高い馬でも★3つなんですね。しかも、「評価不能」って馬もいますよ。
過去にGⅠ勝ちなど実績を残している馬でも、今年に限って結果が残せていない馬を「評価不能」としているぞ。
なるほど。ナランフレグやピクシーナイト、ドルチェモアは今年の成績があまり良くないのですね。
・・・えっ?最上位に評価されているファストフォースの次走が「引退」ってなってますけど?
そうだ。今年の3月に開催されたGⅠ高松宮記念を快勝したファストフォースは、6月に突然引退してしまった(引退理由は公式発表なし)。今は種牡馬となっている。
1年で2レースしか開催されない短距離GⅠのうちの1つを制した馬が引退してしまったことで、短距離戦線は一気に混戦ムードになったんだ。
それで評価が突き抜けて高い馬がいないんですね。
そんな中で、一気に有力候補に名乗りを挙げたのが4歳牝馬のナムラクレアだ。
他の馬たちよりも評価が高くなっているのはどういう理由なんですか?
1番の評価ポイントは、なんと言っても今年の高松宮記念で2着に入った実績があることだ。これがその高松宮記念のレース映像だ。
雨の中で外からよく追い込みましたね。
そうだな。勝ったファストフォースもいい脚で伸びたが、それよりも速いタイムで上がっているから、位置取りや内外の違いで順位がひっくり返った可能性もあるな。
何より、このレースの前哨戦である1月のGⅢシルクロードステークスではナムラクレアが1着でファストフォースが2着という逆の着順だったんだ。
そうなんですね。他の馬たちは高松宮記念でどうだったんですか?
★★のアグリは7着、★のヴェントヴォーチェが8着、評価不能のピクシーナイトが13着といった感じだ。
スプリンターズステークスはナムラクレアが勝つのか?
それならスプリンターズステークスを勝つのはナムラクレアで決まりじゃないですか?
順当に行けばそうなるだろうな。ナムラクレアはスプリンターズステークスのステップレースGⅢキーンランドカップも快勝しているから、臨戦過程も完璧だ。
https://toproadoor.net/2023/08/27/2023keenelandcup_review/
他に太刀打ちできる馬はいないんですか?
ナムラクレアに勝てる可能性がある馬といえば、アグリやジャスパークローネだろう。
これらの馬はセントウルステークスや北九州記念といったスプリンターズステークスのステップレースでいいレースをしていたから、本番でもいい走りができるだろう。
しかし、ナムラクレアを倒すのは簡単ではないと思うぞ。
アグリであれば、ハイペースの展開になって前走のような一気の末脚で抜き去る形が欲しい。
逆に、ジャスパークローネであればスロー〜ミドルペースの展開になって一気に逃げ切る形が欲しい。
ナムラクレアの強いところは、極端な展開にならない限り、どんな馬場状態やペースでも自在に勝つことができるところなんだ。
ステップレースでいうと、セントウルステークスを勝ったテイエムスパーダや、アイビスサマーダッシュを勝ったオールアットワンスも出走しますよね?それと、3歳牝馬で重賞を2つも勝っているモズメイメイも。
3頭とも牝馬(メス馬)だな。ナムラクレアも牝馬だが、同じ牝馬同士ならナムラクレアに短距離で勝てる馬はいないだろう。それに、テイエムスパーダもモズメイメイも逃げ馬だ。同じく逃げ馬のジャスパークローネと先行争いをするとなると、ハイペースに無理してついて行くことになるから、かなりしんどいレースになるだろう。
スプリンターズSで復活をねらう馬たち
牝馬が厳しいのなら、牡馬(オス馬)で期待できる馬はいないんですか?
私が気になっているのは、GⅠ馬のピクシーナイトとナランフレグだ。
2頭とも近走はいい成績が残せていないが、何と言ってもGⅠ馬だ。底力はあるはずだし、大舞台でこそ力を発揮する馬たちでもある。
本番では人気がないと思うが、パドックでの気合い乗りなどチェックした方がいい馬だな。
なるほど。確かにピクシーナイトは2年前のスプリンターズステークスを勝ってる馬ですし、ナランフレグは昨年のスプリンターズSで3着だったんですよね。
今年のスプリターズステークスはどの馬が勝つのか、楽しみになってきました!
マイル戦線まとめ
次にマイル戦線について説明するぞ。
これを見てくれ。
この表は今年2023年のマイル路線で活躍している馬たちの一覧だ。
馬名 | レーティング (5点満点) | 戦績 (主な勝ち鞍) | 次走予定 |
ソングライン | ★★★★★ | 15戦7勝 (23’安田記念、23’ヴィクトリアマイル、22’安田記念) | 毎日王冠 |
セリフォス | ★★★ | 10戦5勝 (22’マイルCS、22’富士S、23’安田記念2着、21’朝日杯FS2着) | 富士S |
シャンパンカラー | ★★★ | 6戦3勝 (23’NHKマイルC) | 富士S |
ソダシ | ★★ | 16戦7勝 (22’ヴィクトリアマイル、21’桜花賞、20’阪神JF、23’ヴィクトリアマイル2着) | 未定 |
シュネルマイスター | ★★ | 15戦5勝 (21’NHKマイルC、23’マイラーズC、21’毎日王冠、22’安田記念2着、21’マイルCS2着) | 毎日王冠 |
バスラットレオン | ★★ | 22戦5勝 (23’1351ターフスプリント、22’ゴドルフィンマイル、21’ニュージーランドトロフィー) | スワンS |
ソウルラッシュ | ★★ | 16戦6勝 (23’京成杯AH、22’マイラーズC) | マイルCS |
オオバンブルマイ | ★★ | 5戦3勝 (23’アーリントンC、22’京王杯2歳S) | ザ・ゴールデンイーグル |
イルーシヴパンサー | ★ | 14戦6勝 (23’京都金杯、22’東京新聞杯) | 富士S |
レッドモンレーヴ | ★ | 10戦5勝 (23’京王杯スプリングC) | 富士S |
ララクリスティーヌ | ★ | 14戦6勝 (23’京都牝馬S) | スワンS |
ウインカーネリアン | ★ | 22戦8勝 (23’東京新聞杯、22’関屋記念) | 毎日王冠 |
エエヤン | ★ | 6戦3勝 (23’ニュージーランドトロフィー) | 毎日王冠 |
インダストリア | ★ | 11戦4勝 (23’ダービー卿チャレンジトロフィー) | 未定 |
サウンドビバーチェ | ★ | 11戦3勝 (23’阪神牝馬S) | 未定 |
セルバーグ | ★ | 15戦5勝 (23’中京記念) | 未定 |
アヴェラーレ | ★ | 14戦5勝 (23’関屋記念) | 未定 |
おー、いっぱい馬がいますね。やっぱりマイルや中距離が得意な馬が日本には多いっていうことなんですかね。
まあそれもあるが、よく見てみろ。半分は★1つの馬たちだ。つまり、小粒な馬が多いということだ。
ん?どういうことですか?
だから、今年のマイル戦線というのは、主役級の強豪馬にそのほか大勢の馬たちが戦いを挑むという構図なんだ。
ふむふむ。その「主役級の強豪馬」というのは、★5つのソングラインや★3つのセリフォスのことですか?
そうだな。2頭ともGⅠ馬だ。GⅠ馬でいうと、3歳馬のシャンパンカラーや、★2つのソダシ、シュネルマイスターもそうだ。
その中でも、春にヴィクトリアマイルと安田記念(両方ともマイルGⅠ)を制したソングラインが秋競馬の最有力ということですね?
そうなると思っていたんだが・・・なんとソングラインはこの秋にアメリカへ遠征することになったんだ。世界最高峰の舞台、ブリーダーズカップマイルへ挑戦することが発表されているぞ。
マイルチャンピオンシップの最有力馬
そうなんですか!?じゃあ、マイル戦線もますます混戦ムードになってきますね。
そうだな。その分、どの馬にもマイルチャンピオンシップを勝つチャンスがあるから面白くはなってきた。
その中でも一番手に挙げたいのは、昨年のマイルチャンピオンシップの覇者セリフォスだ。
やっぱり去年の同じレースを勝っているからですか?
もちろんそれもあるが、私が注目しているのは前走の安田記念だ。ビックリしたんだが、海外遠征からの休養明けでいきなり2着に入ったんだ。これがそのレース映像だ。
ソングラインが勝った今年の安田記念ですね。内で苦しそうに見えましたけど、すごい脚でジャックドールとウインカーネリアンの間を割ってきましたね。
ズバリ、この内でじっと我慢できる精神力と馬群を割ってくる闘争心にビックリしたんだ。昨年のマイルチャンピオンシップのように大外をスマートに差し切るのが得意な馬かと思いきや、こんな泥臭い競馬もできるんだと思ったよ。名マイラーだったお父さんのダイワメジャーを彷彿とさせるな。
なるほど。能力も高いけど、レースで勝つための素質が高いんですね。
ソングラインがいないとなる、マイルチャンピオンシップでこの馬の能力とセンスに勝てる馬はなかなかいないと思うけどな。
マイルチャンピオンシップで好走できる馬は?
セリフォスが最有力として、2番手はどういう馬が考えられますか?
シュネルマイスターとソウルラッシュかな。
シュネルマイスターは今年の安田記念の3着馬ですね。ソウルラッシュは・・・安田記念は9着で、先日のGⅢ京成杯AH(芝1,600m)を勝った馬か。どうしてこの2頭なんですか?
それは、2頭とも春に行われたGⅡマイラーズカップを好走(シュネルマイスターは1着、ソウルラッシュは3着)しているということだ。
それがどう関係するんですか?
よく見てみろ。マイラーズカップはマイルチャンピオンシップと同じ京都競馬場の芝1,600mで行われているんだ。
なるほど。2頭とも本番と同じコースで好成績を残しているので、本番でも期待できるんですね。
注意したいのは、ここ3年マイルチャンピオンシップは阪神競馬場で開催されていたんだ。なぜかというと、京都競馬場が改修工事のために使えなかったからだ。京都競馬場は今年春にリニューアルオープンしたんだが、そのリニューアル後の最初の重賞レースがマイラーズカップだったんだ。
ということは、2020〜2022年の3年間のデータをそのまま今年のレースに当てはめるのは危険ということですね?
そうだな。シュネルマイスターは昨年のレース(阪神競馬場)で5着に敗れているが、広くて直線が長い京都競馬場になれば得意な末脚が発揮しやすいだろう。
ソウルラッシュは、京都も会うだろうし、何より前走の京成杯AHでトップハンデを背負いながら強い勝ち方で勝てたことが成長を示している。
3歳GⅠ馬のシャンパンカラーや春は海外遠征していたバスラットレオンはどうですか?
シャンパンカラーは春の安田記念で14着と惨敗しているからな。夏の間にどれだけ成長しているかによるかな。
バスラットレオンは近3走でダートレースを使っているが、芝のマイルでも実績があるから、もしかしたら・・・という気もするが。
いずれにしても、前者は GⅡ富士ステークス、後者はGⅡスワンステークスを次走に予定しているから、それぞれのステップレースでどんな走りをするか注目だ。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
初心者向けにわかりやすく秋の短距離・マイル戦線の見どころを解説したつもりですが、「この記事を見たことでより秋競馬が楽しみになった」と思っていただけると幸いです。
いよいよ今週からスプリンターズステークスを皮切りに秋のGⅠ戦線がスタートします。これからも中長距離戦線編、2歳編、ダート編、海外競馬編とシリーズを続けていきたいと思いますので、ぜひ楽しみにお待ちください!