仮想の競馬世界「Winning Road」で馬主体験をすることになったあなた。
北海道の日高地方(北海道の南部にある日本最大の馬産地)にある小さな牧場とお腹に子供を宿した1頭の繁殖牝馬(母馬)を与えられたあなたは、これから競馬を勉強しながら所有馬での凱旋門賞(フランスで開催される世界最高峰のレース)制覇を目指していきます。
まずは、牧場の事務所に行って、競走馬の基本を学んでいきましょう!
何のことだかさっぱり分からない、という方はこちらをご覧ください。
※この物語はフィクションです。
競走馬の基本を学ぼう!
しかし寒いなー、北海道は。
3月といっても、北海道は本州の冬と変わらない気候だからな。日高は北海道の中でもまだ気候がいい方なんだけどな。
って、まだいたのかお前は!
あなた一人だけでは何にもできないだろう。だから、私が競馬を教える役目をしてやるんだ。
(なんだよ。上から目線で。)で、ここが事務所ですか?
そうだ。仔馬が生まれる前に、まずは、競馬の基本を勉強しないとな。
まず何から勉強したらいいですか?
馬はどんな動物か知っているか?
どんなって・・・足が速くて、ニンジンが好き、とか。
そうだな。さっき馬を見ただろう?馬は何をしていた?
さっき・・・馬は牧草を食べてましたね。
そう。馬は草食動物だ。つまり、肉は食わない。だから、エサは草が基本だ。さっきみたいに放牧している時は牧草を食べさせるが、馬房(ばぼう。馬の家のこと)では飼葉(かいば)というエサを与える。草の他に栄養価の高い濃厚飼料(穀類や油粕など)やサプリも与えるんだ。
へー、ニンジンだけ食べてるんじゃないんですね。
ニンジンも好きだけどな。人間もだが、馬は栄養が不足したりエサが食べられなくなると健康状態が悪くなって死んでしまうから、エサの管理は大事だぞ。
わかりました。でも自分で大丈夫かな?
それは、ちゃんと牧場のスタッフが管理するから大丈夫だ。エサが大事だということを知っておけばいい。
他にスタッフがいたんですね、よかった(ほっ)。じゃあ、馬の世話は自分がしなくていいんですね。
あなたは経営者なんだから、スタッフや施設、お金を管理するのが役目だ。現場はスタッフに任せて、いかにして強い馬を作るか、牧場の経営を安定させるかを考えなさい。
わかりました。もし馬の体調が悪くなったらどうすればいいですか?
それは獣医師に診てもらいなさい。この牧場には専任の獣医師がいないから、近くの診療所の先生に挨拶に行って、いざとなったら診に来てもらうようお願いしておくことだな。
わかりました。往診に来てもらう、ということですね。
そうだ。いずれ牧場が大きくなれば専任の獣医師を雇うといい。その方が迅速な対応ができるし、ずっと同じ先生に診てもらう方が安心だしな。ちなみに、私も獣医師だがな。
じゃあアンタが診てよ。
バカ言うな!(それにアンタって。)獣医であれば誰でも診られるわけではないぞ。動物ごとに体の作りも違うし、かかる病気も違う。それに、馬は繊細でちょっとしたことでも体調が悪くなるし、その割りに我慢強いところがあるから、気がついたら症状が進んでいた、なんてこともあって難しいんだ。
そうなんだ。馬の体調管理には気をつけるようスタッフに言っておきます。
よし。じゃあ、次は馬の体について説明しよう。
競走馬の体を知ろう!
さっき母馬を見た時に、「デカっ」て思ったんですけど、実際どのくらいの大きさがあるんですか?
大人のサラブレッドであれば
体重 400〜500kg
体高 約160cm(地面から背中まで)
生まれたばかりの仔馬なら体重は50〜60kgだけど、その時点ですでに人間と同じくらいの体重があるんだから、デカイよな。
さっきの馬はお腹に子供がいるから、もっと体重はあるでしょうね。しかし、ジョッキー(騎手)はあんな高いところに座るんだから、怖いですよね。
レース中は、座るというより立っている感じだけどな。一回背中に座らせてもらえばいい。下から見ているよりもよほど高く感じて怖いぞ。馬に振り落とされないようにな。
そうですか(高いところは無理!)。500kgも体重があるのに、馬の足って細いですよね。
管囲と言って馬の前脚、ちょうど写真で赤い丸印を付けたあたりの周囲を測るんだが、これが18〜20cmくらいなんだ。成人女性の足首の太さが20cmくらいらしいから、それと同じくらいだな。
えー!そんなに細いんですか?しかも馬はあんなに速く走るのに・・・大丈夫なんですか?
サラブレッドはレースで時速60km/hで走るからな。
いやいや、考えられない。なんでそんなに細いんですか?
それはわからないが、サラブレッドというのは、とにかく速く走るっていうことを突き詰めて、人間が改良に改良を重ねて作ってきた動物なんだ。その結果として、ああいった見た目の体になってしまった、ということなんだろう。馬には他にも色々な品種があるから、見比べてみるといい。
いわば「機能美」ということなんですかね。実際、見た目も美しいですよね。
そうだな。しかし、その美しさの代償として、やはり動物としてはとても脆い(もろい)のは事実なんだ。レース中に骨折してしまう馬も少なくない。そうなってしまうと、あれだけの体重を抱える馬は立てなくなってしまって衰弱して死んでしまうから、予後不良(よごふりょう)として安楽死処置をされるんだ。もちろん、手術をして治る馬も中にはいるんだがな。
なんか可哀想ですね。でも、サラブレッドは走るために生まれてくるんですもんね。ある意味「運命」というか。
そう。だから、生きている間はしっかり世話をして、なんとか無事に走るように人間が頑張らないといけないよな。またその辺りは別の機会に説明しよう。
わかりました。頑張ります!
ちなみに、馬の足の指は何本あるかわかるか?
馬の指!?考えたこともなかったなあ。
・・・馬の蹄(ひづめ)がありますよね。こんな形の。あれですか?
それは蹄鉄(ていてつ)な。馬の蹄につける金属製の器具で、人間でいう靴だな。蹄というのは、人間でいう爪(つめ)にあたる部分で、サラブレッドは蹄を保護するために蹄鉄を付けるんだ。人間も裸足で走るのは痛いだろ。蹄も爪と同じように伸びるから、定期的に削ってあげないといけないんだ。
なるほど。
ん?ということは、指先にあるのが爪なんだから、馬の指は・・・この部分ですか?
惜しいな。正解はこれが馬の指だ。
えー!これが馬の指!?人間の腕とか「ふくらはぎ」の部分も含まれてるじゃないですか?
いや違うぞ、よく見ろ。馬の肘や膝はこの部分だ。
ということは、手首や足首はこの部分になる。
????
ということは・・・どういうことだ?分からなくなってきた。
つまり、馬はつま先立ちをしているんだよ。「かかと」は浮かせている状態で、指の第一関節の部分を地面につけて走っているんだ。ちなみに、後脚の「かかと」の部分は飛節(ひせつ)と呼んでいるぞ。
うーん、そう言われてみればそう見えなくもないけど。
えっ、て言うことは、馬の指の数って・・・1本!?
そのとおり!馬は、進化の中で中指だけが残って、一本指でつま先立ちする形で歩いたり、走ったりするようになったんだ。このように、蹄(指)が一個しかない動物は奇蹄目(きていもく)に分類される。つまり、蹄の数が奇数個ということだな。ちなみに、蹄が偶数個ある動物は偶蹄目(ぐうていもく)に分類される。牛や豚が偶蹄目だな。
なるほど。なんとなく馬の体がわかってきた気がします。
最後に馬の毛色について説明するぞ。サラブレッドの毛色は8色と決まっているんだ。栗毛(くりげ)、栃栗毛(とちくりげ)、鹿毛(かげ)、黒鹿毛(くろかげ)、青鹿毛(あおかげ)、青毛(あおげ)、芦毛(あしげ)、白毛(しろげ)の8種類だな。
実際の毛色はJRAのホームページで確認できるから、見てみるといい。
さっき見た母馬は白かったから白毛ですか?
そのとおり。白毛というのは基本的には遺伝子の突然変異で生まれるんだが、白毛の馬の子供が白毛になるということもある。
この牧場にいる母馬は、ソダシという名前の馬だ。現役時代は桜花賞やヴィクトリアマイルといったGⅠレースを勝っている名馬だぞ。その初仔がこの牧場で生まれるっていうんだから、すごいことだろ?
ソダシ?GⅠ?
・・・本当に競馬を知らないんだな。このブログ記事でも読んでソダシのことを勉強しとけよ。レースのことは、またおいおい説明するから。
https://toproadoor.net/2023/05/13/sodashi2023/わかりました。
じゃあ、今日はこのくらいにしておこう。次回は4月の仔馬の出産だから、そこで馬の生産と血統について勉強してもらうぞ。
で、アンタはどこに泊まるの?
いや、アンタって。私は現実世界に戻るから。あなたはここで生活するんだぞ。凱旋門賞を勝つまで現実世界には帰れないからな。
えー!?。今月は誕生日月で近所の散髪屋が半額だったのに行けないじゃん!翌月以降でも半額になるか散髪屋に聞いといてくれない?
知るか!坊主にでもしてろ!(チャン、チャン)
次回のブログ記事
次回は「第2話 馬の生産と血統」です。