
昨年までリステッド競走として開催されていた「米子ステークス」が、今年からGⅢに格上げされた上で、レース名を「しらさぎステークス」と改めて開催されることになりました。
しらさぎステークスは、”米子ステークス時代”から引き続いてサマーマイルシリーズの第1戦と位置づけられています。
そして、記念すべき第1回のしらさぎステークスを勝ったのは、坂井瑠星騎手騎乗のキープカルムでした。
牝馬2冠馬も出走した豪華メンバーのしらさぎステークスで、キープカルムはどのようなパフォーマンスを見せて勝ったのでしょうか?
最後にちょっとだけ、同日開催の府中牝馬ステークスも振り返りますよ。
しらさぎステークス2025 レース結果
こちらがしらさぎステークス2025の全着順です。

オープンクラスに昇格してから歯がゆいレースが続いていたキープカルムが、まさに覚醒したかのような見事なレースぶりで第1回しらさぎステークスを制しました。
勝ちタイムは1分33秒0。スローペースもあってタイムはそれほど速くありませんでしたが、キープカルムは上がり最速の3ハロン(600m)33秒4という末脚で差し切り勝ちを収めています。
2着に1番人気の牝馬2冠馬チェルヴィニアが入り、勝つまではいきませんでしたが、GⅠ馬としての意地をみせてくれました。
3着には、まさかの14番人気コレペティトールが入り、3連単は519,650円という高配当が付きました。
- 優勝馬キープカルムのプロフィール
- 父 ロードカナロア
母 ダンスアミーガ(母父 サクラバクシンオー)
馬主 前田晋二
生産者 社台ファーム
調教師 中竹和也(栗東)
通算成績 15戦5勝(25’GⅢしらさぎステークスなど)
父ロードカナロア、母父サクラバクシンオーというと、’23高松宮記念(GⅠ)を勝ったファストフォースや25’高松宮記念(GⅠ)を勝ったサトノレーヴなど「ザ・スプリンター」の馬が生まれるイメージでしたが、キープカルムは過去2,000mのレースも勝っているように、どちらかというと父系のキングカメハメハや母系のダンスパートナーの影響を受けているかもしれません。
オーナーの前田晋二さん(ノースヒルズ代表の前田幸治さんの弟)は、昨年の中山牝馬ステークスをコンクシェルで勝って以来の重賞制覇となりました。
キープカルムはノースヒルズの生産馬ではなく、社台ファームの生産馬。2022年のセレクトセールでノースヒルズに購入された馬です。
ちなみに、キープカルムの1つ下の妹に、今年のGⅠオークスを制したカムニャックがいます。
しらさぎステークス2025 レース展開
スタートはきれいに揃いましたが、9番マテンロウオリオンはスッと最後方に下げていきました。
先行争いは、内からスピードを生かして5番ダイシンヤマトが先頭に立ちかけましたが、外から10番デビットバローズ、11番タシット、14番二ホンピロキーフの3頭がこれを交わし、最終的には二ホンピロキーフが予想外の逃げの手に出る形となりました。
2番キープカルムも前に行こうとしましたが、外から上がっていく馬たちを見ながら坂井騎手は馬を下げていきました。
代わりに、6番レーベンスティールと8番シヴァースがやや引っかかり気味に先行勢に加わり、7番チェルヴィニアはその後方の馬群の中に収まりました。
向正面の直線を走りながら先頭の二ホンピロキーフは徐々にペースを落とし、3コーナーにかかる時点で最初の600m35秒1と計測。3~4コーナーのカーブでさらにペースは落ちて、結果的にスローペースの展開となりました。
馬群がギュッと縮まり、二ホンピロキーフ、デビットバローズ、タシット、シヴァースの4頭が横に並んでコーナーを回っていきますが、その外から12番コレペティトールがマクリ気味に上がっていきました。
チェルヴィニアは先頭集団直後の馬群の中、キープカルムは後方から3番手のインコースでジッと脚をためて4コーナーを回っていきました。
最後の直線(470m)に向くと、馬群は外に大きく広がって「ヨーイ、ドン」という感じで各馬がスパート。
二ホンピロキーフとデビットバローズが先頭で競り合っていたところに、最内からダイシンヤマトが鋭く抜けてきました。
残り200mでダイシンヤマトが先頭に立ちましたが、馬群の狭いところを割ってキープカルムが猛然と追い込んできます。
さらに外からは、前が開いたチェルヴィニアも同じ勢いで飛んできました。
坂を上り切ったあたりでキープカルムが一気に突き抜け、外から来たチェルヴィニアを1馬身引き離して1着でゴール。
チェルヴィニアの外からは、ロングスパートでジワジワ上がってきたコレペティトールが3着に滑り込みました。
3番人気のデビットバローズは何とか5着に粘り込み、2番人気のレーベンスティールは直線で伸びず7着。
4番人気のシヴァースは直線でズルズル失速して10着に沈みました。
YouTubeのレース映像もぜひご覧ください。
しらさぎステークス2025 主な出走馬の短評
- キープカルム(1着)・・・取りこぼしの多かったこれまでのレースが嘘のような末脚の切れと力強さを見せた。相手が相手だけに、このレースで覚醒した可能性も。狭い馬群の中をこじ開ける根性と辛抱強さも見せ、今後の飛躍を期待させるレースだった。坂井瑠星騎手のレース後コメントは以下のとおり。
いつもお世話になっているノースヒルズの前田オーナーの馬でこの記念すべき第一回のしらさぎステークスを勝ててとても嬉しく思います。前回あまりゲートを上手く出られなかったのでそこだけ普通に出られるように気をつけて臨みました。(直線は)手応えも良く、あとは進路を見つけるだけという感じでした。少し狭いところを強引な感じにはなりましたが、馬のおかげで勝つことができました。(この馬は)操縦性、反応が良く、今日に関しては言うことありません。この先も重賞で頑張ってくれると思います。今日は無事に重賞を勝つことができて、まだまだ上のステージで頑張ってくれると思いますので、これからも応援よろしくお願いします
坂井瑠星騎手レース後のコメントより(netkeiba.com)
- チェルヴィニア(2着)・・・引っかかって大惨敗した桜花賞と同じ舞台で成長した姿を見せた。馬群の中でジッと脚をためることができたのも良かった。本来はもっと距離が長い方が良いはずで、この経験がプラスの方向に作用すればよいが。ルメール騎手も今回は手応えを感じた様子。
- コレペティトール(3着)・・・最下位人気の馬が波乱を演出。しかし、この馬も重賞勝ちがあり、格としては他馬よりも上だった。瞬発力勝負を捨ててロングスパートによる粘り強い走りに変えたことが好走の要因か。井上騎手はレース前の障害練習の効果と見るが、井上騎手の好判断も見逃せない。
- ダイシンヤマト(4着)・・・調教もパドックでの様子も絶好調に見えたが、最後は距離がもたなかったか。それでも一時は先頭に立つなど、見せ場はつくった。
- デビットバローズ(5着)・・・スローペースを2番手から進めてギリギリ粘り込んだが、最後は力負け。松山騎手も納得の走り。1,800mがベストか。
- レーベンスティール(7着)・・・初距離に挑戦も、今回は良い所なし。59kgの斤量も厳しかった。非根幹距離の1,800mや2,200mがベスト。川田騎手は「1,600mも合っている」とはコメントしているが・・・。
- シヴァース(10着)・・・重賞の壁は厚かった。引っかかった上に外々を回る競馬ではさすがに厳しい。これからの馬。
今後の見どころ
サマーマイルシリーズ2025の第1戦はキープカルムが勝利。第2戦は7月27日に新潟競馬場で開催される伝統の関屋記念です。
最終の第4戦は9月の京成杯オータムハンデキャップですが、キープカルムの秋初戦はここになるかもしれません。
いずれにしても、キープカルムの勝ち方をみれば、この夏の成長次第で秋のマイルチャンピオンシップでも十分に好走する可能性がありそうです。
マイル路線にはソウルラッシュ(骨折中)という王様がいますし、海外挑戦の可能性もあるジャンタルマンタルやアスコリピチェーノといった春のGⅠ馬もいますので、そう簡単には勝てないかもしれませんが、今回のレースが覚醒の兆しだとすれば、キープカルムがこの中に割って入ることも期待されます。
まさかの参戦で話題になった牝馬2冠馬のチェルヴィニアですが、今回のレースを見る限り、秋はエリザベス女王杯あるいは天皇賞(秋)といった中距離レースに目標を置いてくると予想されます。今回ぶっちぎりの勝ち方を見せればマイル路線もあり得たでしょうが、明らかに距離が足りない感じでした。
しかし、この馬の能力の高さをあらためて確認することができたのは収穫でしょう。
サンデーレーシングの古馬牝馬にはレガレイラやブレイディヴェーグといったチェルヴィニアと似たタイプの馬がいますので、秋のGⅠレースでこれらを使い分けてくる可能性もありますが、個人的にはレガレイラとチェルヴィニアの最強4歳牝馬決定戦を見てみたい気がします。
府中牝馬ステークス2025 レース回顧
こちらが府中牝馬ステークス2025の全着順です。

例年この時期に行われていたマーメイドステークスが廃止され、代わりに昨年までエリザベス女王杯のステップレースだった本レースがスライドしてこの時期に開催されることになりました。
レースでは、前走で強い勝ち方を見せていた4歳馬のセキトバイースト(5人気)が勝って、2連勝を飾りました。
- 優勝馬セキトバイーストのプロフィール
- 父 デクラレーションオブウォー
母 ベアフットレディ(母父 Footstepsinthesand)
馬主 TNレーシング
生産者 タイヘイ牧場
調教師 四位洋文(栗東)
通算成績 14戦4勝(’25GⅢ府中牝馬S、’25都大路S(L)など)
セキトバイーストは向正面で一瞬前に行きたがるところを見せましたが、3番手の位置でピッタリ折り合って、以前の大逃げを打っていた時とは見違える走り。
最後の直線に向いた時には、前の馬よりも手応えが悪そうに見えたのですが、直線の上り坂を登りながらジワジワ前の馬を追い詰め、最後は余裕をもって1馬身リードでゴール。
なぜ急に強くなったのかは分かりませんが、この2連勝でコンビを組んだ浜中俊騎手との相性もいいのかもしれません。
秋はエリザベス女王杯が最大目標になると思いますが、同世代のチェルヴィニアやレガレイラ、ステレンボッシュらGⅠ馬にどこまで迫れるか楽しみです。
なお、浜中俊騎手のレース後コメントは以下のとおりです。
勝てて嬉しいです。枠は外めがいいなと思っていたので良い枠だと思っていました。行く馬がいなければ自分で先手を取る事も考えていましたが、他に行く馬がいたので、あくまでこの馬のリズムを優先した結果、あの位置になりました。前走乗った時にも、追ってからしぶとく頑張って走ってくれる馬だなと感じていて、今日も直線で向かい風がきつくて走り切るにはタフな条件だったので、この馬の精神力の強さを感じました。(このコンビで2連勝)たまたま良いタイミングで騎乗させてもらっているだけだと思いますが、こうして重賞を勝てて、ここからさらに弾みをつけてくれると思うので、今後が楽しみです
浜中俊騎手レース後のコメントより(netkeiba.com)
2着のカナテープは、さすが「東京1,800mの鬼」というくらいハマったレースでしたが、3勝クラスを勝ったばかりということで、今回はセキトバイーストとの力差を見せつけられました。
6歳馬ですが、レース経験もそれほど多くないですし、まだまだこれから活躍できる馬ではあると思います。
2勝クラスを勝ったばかりで1番人気に推されたカニキュルは8着。さすがにここは荷が重かったでしょう。まずは自己条件できっちり勝ちたいところです。
YouTubeのレース映像もぜひご覧ください。