【競馬用語解説】walk(ウォーク)・trot(トロット)・canter(キャンター)・gallop(ギャロップ)【英語#2】

【競馬用語解説】walk(ウォーク)・trot(トロット)・canter(キャンター)・gallop(ギャロップ)【英語#2】

英語の第2回は、競馬用語解説。
今回は、「walk」「trot」「canter」「gallop」の4つの用語について、中学生でも理解できるよう分かりやすく解説していきます。

walk(ウォーク)

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walkは常歩(じょうほ,なみあし)のこと

「walk(ウォーク)」は中学校で習う英単語ですし、当時の英語の授業を覚えていなかったとしても、単語の意味がわからない人は少ないでしょう。

「walk」とは和訳どおり馬が歩くことを意味します。
なぜこの単語が競馬用語なのか、ここであらためて説明します。

そもそも、馬の歩き方や走り方には1つ1つ名前が付けられています
これを「歩法(ほほう」といいます。走っていても、歩法です。

歩法の1つが「walk」なのです。
この他に「trot」「canter」「gallop」という歩法がありますが、これらは後ほど解説します。

歩法の中で最もスピード(速度)が遅い歩法が「walk」で、日本語では「常歩」と書いて「じょうほ」と言ったり、「なみあし」と言ったりします。

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walk(常歩)の足の運び

馬は足が4本ありますが、前足のことは「手」とは言わずに「前肢(ぜんし)」、後足のことは「足」とは言わずに「後肢(こうし)」と言います。

馬の常歩(walk)は、4本の足がそれぞれバラバラの動きをします
大まかに言うと、前肢→後肢→前肢→後肢→・・・というように、前肢と後肢が交互に前に出るようにして歩きます。
さらに、左後肢→右前肢→右後肢→左前肢→左後肢→・・・というように、常に左右交互に出すのではなく、どちらかというと同じ側(右なら右、左なら左)の前肢の動きに後肢がシンクロして付いて行くイメージです(上図)

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競馬場のパドックと「walk(常歩)」をする競走馬

イメージしにくい場合は、ぜひ競馬場のパドックで競走馬が歩いている姿を見てみてください
パドックとは、レース前に馬の状態を観客に見せるための場所で、「下見所(したみじょ)」とも言います。
パドックで歩いている馬は、まさに「常歩」で観客の前を歩いているのです

常歩では、前肢の動きに合わせて馬の頭も上下に動きます。
パドックを見ていると、特に気合が入っている馬などはリズミカルに頭を動かして歩いている様子が観察できます。

trot(トロット)

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trotは速歩(そくほ,はやあし)のこと

「trot(トロット)」は競馬用語ですが、競馬ファンの中でも聞きなれない人の方が多いかもしれません。

「trot」も歩法の1つで、日本語では「速歩」と書いて「そくほ」と言ったり、「はやあし」と言ったりします。
これも「読んで字のごとく」で、速く歩くことを意味します。歩法の中では常歩(walk)の次にスピードが遅い歩法です。

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trot(速歩)の足の運び

速歩も基本的には常歩と同じような足の運びをします。常歩を速くした歩法が速歩ですからね。
ただし、速く歩くためにはストライド(歩幅)を大きくするか、ピッチ(足の回転の速さ)を上げる必要があります。
速歩は、常歩の足の運びでよりストライドを大きくするためにジャンプする動きを加えた歩法です。

例えば、横断歩道の白い部分だけを片足で踏んで渡ろうとすると、自然とピョンピョンという弾んだ歩き方になりますよね。
足を前に出すときに軽くピョンっと上に跳ね上がることで、ストライドが大きくなるからです。

この動き(速歩)を四足歩行の馬がやろうとすると、前肢→後肢→前肢→後肢→・・・という前肢と後肢が交互に前に出る歩き方は常歩と変わりませんが、前肢と後肢の時間差が短くなり、ほぼ同時に前に出てくるように見えます
ですから、左後肢&右前肢→右後肢&左前肢→左後肢&右前肢→右後肢&左前肢→・・・というように、ワンツー・ワンツーという2拍子のリズムでピョンピョンと弾むように左右交互に足が出てくる動きになるのです。

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馬車を引く馬のtrot(速歩)

それでもイメージしにくい場合は、馬車を引く馬の走り方(上図)を思い浮かべてみてください。
パッカパッカとリズムよく小走りする馬は、まさに「速歩」で目的地にお客さんを送り届けてくれているのです(常歩の馬もいますが)。

「競馬」というとサラブレッドが騎手を乗せて走るレースを思い浮かべますが、世界的に見てみると、馬が馬車を引いて競走する競馬のレースもあるのです
これを繋駕速歩競走(けいがそくほきょうそう)といいます。トロッターレースとも言われたりします。
日本でも昭和前半までは行われていましたが、以降は廃止されました。
現在もアメリカやオーストラリア、フランスなどでは人気のレースです。

通常の競馬レースがマラソンや短距離走だとすると、繋駕速歩競走は「競歩(きょうほ)」のようなレースだとも言えます。

canter(キャンター)

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canterは駈歩(くほ,かけあし)のこと

「canter(キャンター)」もtrotと同様に競馬用語ですが、こちらの方は競馬ファンの方も聞いたことがあるかもしれません。

○番○○(馬の名前)です。スタンドの歓声を受けて、今キャンターに下ろしていきました

競馬レースの中継を見ていると、馬場入場(競馬場のコースに入ること)した馬たちが次々に返し馬(レース前のウォーミングアップ)を始める際に、実況アナウンサーがその馬の動きを見て「キャンター」と表現していることがあります。

そう。canterとはまさにスポーツ選手がウォーミングアップのために軽く走る(ジョギングする)ような歩法で、日本語では「駈歩」と書いて「くほ」と言ったり、「かけあし」と言ったりします。

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canter(駈歩)の足の運び(左手前の場合)

馬が返し馬でウォーミングアップする時には、いきなりダッシュしたりせずに常歩(walk)から速歩(trot)へ、速歩から駈歩(canter)へ、というように段階的に歩法を変えながらスピードを乗せていきます。
最終的には、このあとで解説する襲歩(gallop)という最も速い歩法へ移行することになりますので、駈歩というのは、速歩から襲歩へ移行するための橋渡しとしての歩法と言うことができます。

したがって、駈歩の足の運びは速歩と襲歩の間のような動きになります。
具体的には、速歩のようなワンツー・ワンツーという綺麗な2拍子ではなく、「タタタッ、タタタッ・・・」という独特なリズムで、前肢→前肢&後肢→後肢→前肢→前肢&後肢→後肢→前肢・・・という順番で足が出てくる動きです。
これは、速歩よりもさらにストライドを伸ばすために、速歩の足の運びを引きずりつつも左右後肢で強く地面を蹴って前方に跳躍する動きが加わっていることによります。

上の図でいうと、左前肢が先に出てから左右後肢による跳躍とそれを補助する右前肢の動きが付いてきている足の運びになっていますが、この動きを「左手前(ひだりてまえ)」と言います。
逆に、右前肢が先に出てから同様に左右後肢と左前肢が付いてくる足の運びを「右手前(みぎてまえ)」と言います。

gallop(ギャロップ)

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gallopは襲歩(しゅうほ)のこと

そして最後は、先ほども少し紹介した競走馬が最高速度で走るための歩法であるgallopです。
日本語では「襲歩」と書いて「しゅうほ」と言います。

実は競走馬だけでなく、四足歩行の哺乳類全般が全速力で走る時に使う歩法が襲歩なのです。
チーターや犬が全速力で獲物を捕まえる時も、馬や鹿が全速力で肉食動物から逃げる時も、よく見ると襲歩で走っています。
厳密に言うと、チーターと犬と馬と鹿はそれぞれ異なる足の運びをしているのですが、この点についてはのちほど解説します。

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gallop(襲歩)の足の運び(左手前の場合)

競走馬は、レースのスタートからゴールまで襲歩で走ります
そのほとんどの時間は、上の図のような足の運びをしますが、これを交叉襲歩(こうさしゅうほ)と言います。

駈歩(canter)からさらにストライドを伸ばすために、同時に地面に接地する足は2本だけになり、ほとんど左右前肢→左右後肢→左右前肢→左右後肢→・・・という見た目の足の運びになります。これにより、足が4本とも地面から離れて体が宙に浮いている時間ができますが、この時間をエアボーンといいます。
この場合でも、右前肢と左前肢のどちらが先に出るかによって、右手前と左手前の違いが生まれます。上の図は左手前の襲歩です。

左右の後肢も微妙に前に出るタイミングが違うのですが、レースの中で瞬間的に後肢の出る順番が入れ替わることがあります。これを回転襲歩(かいてんしゅうほ)と言います。
決して馬が回転するわけではなく、足の出る順番が上から見て一回転しているように見えるためにこう呼ばれています。
上の図の例でいうと、右後肢→左後肢&右手前→左前肢→右後肢→・・・(交叉襲歩)という動きだったのが、左後肢→右後肢&右手前→左前肢→左後肢→・・・(回転襲歩)という動きに変わるのです。

どのタイミングで回転襲歩になるのかというと、1つはゲートを出てスタートダッシュする時、もう1つは右手前と左手前を切り替える時です。
回転襲歩はダッシュ力に優れている歩法なのですが、エネルギー消費が激しいため、競走馬はスタートして間もなく回転襲歩から通常の交叉襲歩に切り替えてゴールまで走ります。
一方で、レース中に手前を左右で入れ替える必要が生じた時(詳しくは別途解説)に、手前をいきなり変えるのではなく、間に1回だけ回転襲歩をはさんで左右を入れ替えるのです。具体的には、最初に左右前肢だけ足の運びを入れ替えて回転襲歩を行い、そのあとで左右後肢も足の運びを入れ替えて交叉襲歩に戻ります。これで手前が切り替わったことになります。

ちなみに、犬や鹿は常に回転襲歩で走っています。また、チーターは左右後肢を同時に踏み切るような襲歩をしています。
実は、競走馬も回転襲歩だけでなく、スタートの瞬間だけは左右後肢で踏み切るチーターと同じ襲歩を使っています

何気なく走っているように見える競走馬ですが、このように様々な歩法を駆使してレースを走っているのですね。

参考書籍

「アニマルサイエンス① ウマの動物学[第2版]」(近藤誠司著、東京大学出版会)
「競走馬の科学 速い馬とはこういう馬だ」(JRA競走馬総合研究所著、講談社)
「サラブレッドの生物学 競走馬の速さの秘密」(『生物の科学 遺伝』編集部編、NTS)

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