
「最も運が強い馬が勝つ」と言われている東京優駿(日本ダービー)。
2025年の日本ダービーを勝ったのは、皐月賞で圧倒的1番人気ながら2着に敗れていたクロワデュノールでした。
果たして、勝敗を左右した”運命の分かれ道”はどこにあったのでしょうか?
日本ダービー2025 レース結果
こちらが日本ダービー2025の全着順です。

皐月賞に続いて1番人気に支持されたクロワデュノールが、今回はその人気に応えて見事に優勝しました。
勝ちタイムは2分23秒7。前日に雨が降った割には、なかなか速いタイムが出ました。
2着に皐月賞3着馬のマスカレードボールが入り、わずかな差でダービーの栄冠を逃しました。
3着に6番人気のショウヘイが入り、皐月賞未出走ながら大健闘の走りを見せています。
1番人気ー3番人気ー6番人気という結果で、3連単8,460円という比較的落ち着いた配当のレースとなりました。
- 優勝馬クロワデュノールのプロフィール
- 父 キタサンブラック
母 ライジングクロス(母父 Cape Cross)
馬主 サンデーレーシング
生産者 ノーザンファーム
調教師 斉藤崇史(栗東)
通算成績 5戦4勝(’25 GⅠ日本ダービー、’24 GⅠホープフルSなど)
キタサンブラック産駒のクラシック制覇は、2023年皐月賞のソールオリエンス以来2勝目。意外に少ない気がしますが、代表産駒のイクイノックスはクラシックを勝てなかったんですよね(皐月賞、日本ダービーともに2着)。
北村友一騎手と斉藤崇史調教師は、ともに日本ダービー初制覇。このコンビといえばクロノジェネシスが有名ですが、お二人ともそのクロノジェネシスの秋華賞以来のクラシック制覇となりました。
日本ダービー2025 レース展開

スタートは各馬そろったように見えましたが、15番のファウストラーゼンのダッシュがつかず、最後方に下がってしまいました。結局、ファウストラーゼンは一度も位置を上げられずに最下位に沈んでいます。
逃げ馬がいない中、どの馬が先頭を奪うのか注目されましたが、なんとスタートを決めた大外18番のサトノシャイニングが内に切れ込んで先頭に立ちました。武豊騎手のこの判断は痺れましたね。
スタートからいきなりドキドキの展開になりました。
クロワデュノールもいいスタートから好位の4番手につけます。
一方、2番人気の皐月賞馬ミュージアムマイルはちょうど中団の馬群の中に入り、3戦3勝の4番人気ファンダムはやや”かかり気味”に内側のポケットに入り込みました。
外枠だったマスカレードボールは、無理せず中団の外目に控えました。

いったん先頭に立ったサトノシャイニングでしたが、武騎手は手綱を引っ張って馬を抑え気味。
すると、1コーナーで外から14番ホウオウアートマンがこれを交わして先頭に代わりました。
2番手のサトノシャイニングの後方には、クリストフ・ルメール騎手が乗る2番ショウヘイがつけ、その後方にクロワデュノールがつけています。
ミュージアムマイル、ファンダム、マスカレードボールは中団ですが、ファンダムはまだかかり気味。
これと対照的に、ミュージアムマイルとマスカレードボールはすでに騎手と折り合って、いい雰囲気で2コーナーに向かっていきました。

向正面に入ると、徐々にホウオウアートマンのリードが大きくなっていきます。
最初の1,000mは60秒ちょうど。勝ちタイムとの兼ね合いでミドルペースからややスローペースととらえられますが、ホウオウアートマン単独で見れば速いペースです。
そんな中、クロワデュノールは絶好の3番手の位置をキープ。この時点で「勝負あり」という感じです。
ショウヘイもその内側にいます。
マスカレードボールはずっと外を走らされていますが、リラックスして走っているようでした。
ミュージアムマイルも同様ですが、位置的にはマスカレードボールよりも後ろにいます。これがマスカレードボールとの着順の差につながったと見ています。
ファンダムはなんとか前に馬の壁をつくって落ち着かせましたが、前半でかなりスタミナを消耗してしまいました。

3コーナーをカーブすると、ホウオウアートマンのリードは徐々に短くなっていきます。
2番手のサトノシャイニング、3番手のクロワデュノールは絶好のポジションで、絶好の手応え。
ショウヘイもこれに付いて行きます。
マスカレードボールは前の2頭を見ながら、やはり外を走って脚をためています。
ファンダムも内で脚をためているように見えますが、すでにこの時点でスタミナは切れていたようです。
ミュージアムマイルも皐月賞のような展開で良さそうに見えますが、今回は前の馬がしっかり余力を残していたということでしょう。

ホウオウアートマン先頭で4コーナーから直線に向きました。
この時点で、2番手のサトノシャイニングは絶好の手応え。武騎手も仕掛けるタイミングを計るほどの余裕が見えます。
一方、ショウヘイとクロワデュノールは、サトノシャイニングの手応えの良さを見て早めにスパートに入りました。
ファンダムがずるずる下がっていく中で、マスカレードボール、ミュージアムマイルはコースの外から前の馬たちを捕まえようとスパートし始めました。
しかし、クロワデュノールは大排気量のエンジンを一気に爆発させて、すごい勢いで加速していきました。

残り400mを切ると、直線の坂を上りながらクロワデュノールがホウオウアートマンとサトノシャイニングを並ぶ間もなく交わし去りました。
仕掛けるのが早かったという向きもありますが、勝ちにいった結果でしょうし、クロワデュノールなら粘れるだろうという北村友一騎手の信頼感を感じます。
ショウヘイとサトノシャイニングがクロワデュノールを追いかけますが、脚色(勢い)が違いました。
代わって、外からマスカレードボールが凄い勢いで追い込んできます。
ミュージアムマイルもその後ろから来ていますが、位置が後ろ過ぎました。
マスカレードボールが差を詰めましたが、クロワデュノールが粘って1着でゴール。
ゴール直前でサトノシャイニングを交わしたショウヘイが3着に入り、ミュージアムマイルの外から最速の上がりで追い込んできたエリキングが5着に滑り込みました。
人気の一角だったファンダムは14着に沈んでしまいました。
YouTubeのレース映像もぜひご覧ください。
日本ダービー2025 主な出走馬の短評
- クロワデュノール(1着)・・・やはりこの馬が最強だった。直線の坂を上ってくる迫力は圧巻。最後マスカレードボールに詰め寄られたが、まだ伸びそうな雰囲気だった。先行馬有利というデータも、この馬の脚質にマッチ。ストライドの大きな走法で滑りやすい芝は合わないはずだが、この馬のパワーでこなしてしまった。大怪我で苦しんだ北村友一騎手にダービージョッキーの称号をプレゼント。チャンピオンにふさわしいコンビだった。以下は北村友一騎手のレース後コメント。
僕がダービージョッキーというよりも、クロワデュノールがダービー馬となれたことが何より嬉しいですし、そこに最高のエスコートをできたことが一番良かったと思います。一言では表せないのですが、ここに至るまでの過程すべてに意味があったのだということを感じています。こうして全て、巡り合わせで勝たせていただいて、クロワデュノールとの縁があったこと、全部繋がっているのだなと感じます。
僕の思いは一点だけ、馬を信じること、自分を信じること、信じるという点だけです。本当に、馬とずっと人馬一体になれていたような気がして、余計なことをしなくても馬がいいリズムで走ってくれていました。絶対伸びると信じていましたし、手応え通りといえばそのとおりなのですが、信じた結果がこうして1着に結びついてよかったです。
まだまだ伸びしろを感じていますし、もっともっとクロワデュノールという名前が世の中に知れ渡ってほしいと思います
北村友一騎手レース後のコメントより(netkeiba.com)
- マスカレードボール(2着)・・・ずっと外を走らされて距離ロスが大きかったはずだが、最後の伸びは素晴らしかった。これで負けたなら勝った馬が強かったということ。レースでの気性の良さやスタミナは、菊花賞でも通用しそう。坂井騎手も納得のレース内容だった。
- ショウヘイ(3着)・・・パドックで入れ込んでいるように見えたが、ルメール騎手がうまくエスコートして、持ち前のスタミナとパワーで粘った。枠と展開も向いた。この馬もストライドの大きな馬だが、ルメール騎手によると、やはりぬかるんだ芝に苦戦していた様子。
- サトノシャイニング(4着)・・・まさかの先行策だったが、直線では勝つかと思うほどの手応え。勝ち馬にはあっさり交わされたが、その後も最後まで粘り強かった。武騎手によると、1コーナーで外から馬が来たときにエキサイトしたとのこと。それでもこの走りなら、能力は高い。
- エリキング(5着)・・・パドックで元気がなく、馬体の出来もいま1つに見えたが、それでも展開的に不利な中で素晴らしい末脚を見せた。結果的に、皐月賞前にもう1レース使えば、ダービーも絶好調で迎えることができたかもしれない。能力の高さが証明された。
- ミュージアムマイル(6着)・・・スムーズにレースを進めることができたが、いかんせん今回の展開では後ろ過ぎた。昨年のアーバンシックを見ているよう。皐月賞は展開が完璧にハマったということだったのだろう。秋に期待したい。
- ジョバンニ(8着)・・・思わぬ凡走。パドックで見た感じは悪くなかったが、体が動かなかった。松山騎手によると、「最後に体が浮いてくるような走りになった」とのこと。重心が高いということならば、走法の問題、身体的な問題があったのか。2歳の早い時期から活躍している分、成長力に課題。
- ファンダム(14着)・・・距離が長かった。かかってしまってスタミナをロスし、直線に入る前に余力がなくなった。この馬は短い距離で爆発的な瞬発力を発揮させるレースが良さそう。
今後の見どころ
皐月賞馬ミュージアムマイルと同2着馬クロワデュノールの一騎打ちかと思いましたが、今回はクロワデュノールのレースでした。
2頭の対戦成績は1勝1敗の五分。まだ勝負付けが完全には終わっていないでしょう。
マスカレードボールとサトノシャイニングも強さを見せましたが、クロワデュノールやミュージアムマイルに勝ち切るようなレースができていないので、正直なところ、これから大きく成長しないと今後も2頭には追い付けないかもしれません。
一方、エリキングに関しては春に調子が上がらなかったのが成績不振の要因で、まだ完全な状態で2頭と対戦できていません。秋までにしっかり立て直してくれば、2頭にも引けをとらないレースができるはずです。
しかり、クロワデュノールに関しては凱旋門賞に挑戦する可能性があるので、3歳の間にこの馬を負かすチャンスはないかもしれませんね。
秋は菊花賞に向かう馬、天皇賞に向かう馬、マイルチャンピオンシップに向かう馬と路線が分かれていきます。
菊花賞で面白いのは、ミュージアムマイル、マスカレードボール、ショウヘイ。
ミュージアムマイルは、体型的にも、これまでのレースぶりをみても、長距離は向いているはずです。父リオンディーズは天皇賞(春)を勝ったテーオーロイヤルを輩出していますし、折り合いがつく気性も菊花賞向きと考えています。
マスカレードボールは、先ほども述べたとおり思いのほかスタミナがありそう。気性も良いので、菊花賞は面白いと思うのですが、東京が得意なので、秋は天皇賞に向かうかもしれません。
ショウヘイは、夏の間の成長次第ですが、最後の一冠をもぎ取るだけの素質を秘めています。
天皇賞で見たいのは、サトノシャイニング。この馬は、中距離がベストだと思いますし、今回のような前で粘り込む競馬もできるのであれば、タフなレースになりやすい東京の2,000mは絶好の舞台でしょう。
今回は惨敗しましたが、マイル路線ならファンダムも十分に強いレースができるはずです。
私はNHKマイルカップの本命候補と考えていたくらいですから、秋は適正距離で今回の汚名を返上してくれることを期待します。