【春のマイル王】安田記念2025 優勝馬ジャンタルマンタル【レース回顧】

【春のマイル王】安田記念2025 優勝馬ジャンタルマンタル【レース回顧】

GⅠ馬5頭が参戦し、春のNo.1マイラー決定戦にふさわしい熱戦が繰り広げられた2025年の安田記念。

実力馬たちの壮絶なバトルを制したのは、昨年末の香港マイルから半年ぶりのレースとなった4歳馬のジャンタルマンタルでした。

果たして、昨年の3歳最強マイラーが復活した鍵はどこにあったのでしょうか?

安田記念2025 レース結果

こちらが安田記念2025の全着順です。

安田記念2025 全着順

前走の香港マイルで13着と惨敗しながら、GⅠ2勝の実績を買われて2番人気に支持されたジャンタルマンタルが見事に優勝しました。
勝ちタイムは1分32秒7。良馬場で行われたレースでしたが、ペースがそこまで速くなかったこともあり、稍重で行われた昨年(1分32秒3)よりも遅いタイムとなりました。

2着に9番人気のガイアフォースが入り、デビュー2年目の吉村誠之助騎手が見事な”波乱”を演出してみせました。
3着に1番人気のソウルラッシュが入り、昨年同レースで3着に敗れた雪辱は今回も果たせませんでした。

2番人気ー9番人気ー1番人気という結果で、3連単65,970円となかなかの配当が付いています。

優勝馬ジャンタルマンタルのプロフィール
 Palace Malice
 インディアマントゥアナ(母父 Wilburn)
馬主 社台レースホース
生産者 社台ファーム
調教師 高野友和(栗東)
通算成績 8戦5勝(’25GⅠ安田記念、’24 GⅠNHKマイルC、’23 GⅠ朝日杯FSなど)

ジャンタルマンタルの父Palace Maliceはアメリカの一流種牡馬Curlinの子で、基本的にはスピード&パワー型の血を引いていますが、Palace Maliceの母パレスルーマーは天皇賞(春)を勝ったジャスティンパレスの母でもあります。
ジャンタルマンタルの活躍を見ても、Palace Maliceはスピード、パワー、スタミナ、芝適性をバランス良く子に伝える種牡馬といえるでしょう。2024年からは日本で種牡馬生活を送っていますので、今後の産駒の活躍が楽しみです。

高野友和調教師は安田記念初制覇。昨年は管理するナミュール(すでに引退)が2着になりましたが、その雪辱をジャンタルマンタルが果たしてくれました。

川田将雅騎手はなんと安田記念4勝目。安田記念4勝は歴代最多で、”安田記念マスター”として見事な騎乗を見せました。

ジャンタルマンタル自身は、2023年朝日杯フューチュリティステークス、2024年NHKマイルカップに続いてGⅠ3勝目。名実ともに現役最強マイラーの座を獲得したと言えるでしょう。
2024年のNHKマイルカップについては、以下の記事でレース回顧しています。

安田記念2025 レース展開

安田記念2025 スタート後

スタートが苦手な9番シャンパンカラーが大きく出遅れた中、4番ウインマーベルと8番エコロヴァルツが好スタートから先頭に立とうとする勢い。その2頭を制して、やはり予想どおり3番マッドクールがスピードを生かして先頭に立ちました

10番ジャンタルマンタルもいつものように3~4番手の好位につけます

3番人気の1番シックスペンスも内枠を生かして好位に。13番ソウルラッシュと18番ブレイディヴェーグは中団の外目を走ります。
7番ガイアフォースは、すっぽりと空いた馬群の中に馬を入れていきました。

安田記念2025 向正面

向正面の中間あたりで先頭のマッドクールがペースを落とすと、12番ロングランが引っかかってしまって、鞍上の岩田康誠騎手も抑えきれずに一気に先頭に並びかけます。ロングランは末脚勝負の馬ですから、この時点でレースが終わってしまったかもしれません。

ロングランが外から順位を上げていく時に、その内にいたジャンタルマンタルも一瞬引っかかってロングランに付いて行こうとします。ロングランに体をぶつけられてエキサイトしたのでしょう。
しかし、結果的にジャンタルマンタルのスタミナロスも最小限に済んだことで、ロングランとは違う結末が待っていました。

ペースが落ち着いたことで、ブレイディヴェーグは思いのほか前のポジションを取ることができましたが、対照的にソウルラッシュは少し後ろのポジションになってしまいました

馬群の中に入ったシックスペンスとガイアフォースは早々に折り合って(馬が騎手の指示どおりに走ること)いました。

安田記念2025 第3~第4コーナー

最初の600mは35秒。大方の予想どおり平均ペースに落ち着きました。
第3コーナーに差し掛かってペースがさらに落ちると、先頭から最後方まで10馬身ぐらいにグッと詰まって、まさに団子状態

おかげで、あれだけ大出遅れをしてしまったシャンパンカラーも難なく馬群に取りつくことができました。

先頭はマッドクールとウインマーベルが並んだ状態で4コーナーへ向かいます。
ジャンタルマンタルは3番手外目の絶好のポジション。まさにこの馬の勝ちパターンでした。
ブレイディヴェーグ、ガイアフォース、ソウルラッシュも中団の外目で、東京の長い直線であれば何ら問題がないポジションでしたが、いかんせんジャンタルマンタルの脚色(勢い)が違い過ぎました

安田記念2025 最後の直線入口

マッドクールが先頭で最後の直線に向かいましたが、早くも失速するロングランを除いて後続勢はまだまだ手応えがあります。

その中でも、ウインマーベルとジャンタルマンタルはいつでもマッドクールを捕まえられる勢い。
ブレイディヴェーグとソウルラッシュはセオリーどおり外から追い込んでくる体勢ですが、前の馬と勢いはあまり変わりません。
ガイアフォースもいい手応えですが、前が壁になったので、ブレイディヴェーグらの外に馬を持ち出そうとします。

シックスペンスも内でジッと脚をためて、いつ末脚が爆発するかと見ていましたが、モタモタしてなかなか抜け出せません。

安田記念2025 直線~ゴール

残り400mを切ると、粘るマッドクールにウインマーベルとジャンタルマンタルが並びかけます。
しかし、ジャンタルマンタルはまだまだ余裕の表情。ここからさらに1段階ギアを上げてスパートをかけていきます。

ブレイディヴェーグとソウルラッシュが馬体を合わせながら一緒に追い込んできますが、あっさり抜け出すジャンタルマンタルに付いて行くのがやっとで、これを捉えるまでには至りません。

すると、その後ろから真っ白な馬体を揺らしながらガイアフォースが大きなストライドでジャンタルマンタルを猛然と追い込んできました

しかし、先に抜け出したジャンタルマンタルを捕まえられる馬はいませんでした。
結局、ジャンタルマンタルがそのまま後続を抑えて1着でゴール。
大外から追い込んで来たガイアフォースが2着、最後にガイアフォースに交わされたソウルラッシュが3着に入りました。

人気の一角だったシックスペンスは力なく12着に沈んでしまいました。

YouTubeのレース映像もぜひご覧ください。

YouTube 2025年 安田記念(GⅠ) | 第75回 | JRA公式

安田記念2025 主な出走馬の短評

  • ジャンタルマンタル(1着)・・・実力は間違いなかったが、前走の惨敗と久々のレースであることが心配の種であった。レース前に高野調教師が相当自信がありそうな雰囲気を見せていたことから、実際状態が良かったのだろう。2歳時から大人びた馬だったが、4歳になっても成長力を伴いながら精神面の強さを武器にレースができている。リバティアイランドの悲劇を乗り越えてのGⅠ勝利は、川田将雅騎手にとっても大きかった。以下はその川田騎手のレース後コメント。

久しぶりにこの馬らしく走ることができてとてもホッとしています。前半は、とても良いスタートを切ってくれて、良いリズムで3番手におさまりかけたのですが、外から来る馬もいて、あそこでかなりエキサイトしたので、その後はどうなっていくかと思いました。そこからこの馬としては我慢がききましたし、あの競馬になって、よくこんな強い勝ち方ができたなという感じでした。4コーナーの雰囲気はすごく動けるという感じではなく、どれぐらい動けるのかなという雰囲気でした。それでも動かしてみるとこれだけの動きができましたので、改めて素晴らしい馬だなというのを実感しながらの直線でした。

 前走は全く競馬にならずに終わってしまったので、4コーナー手前で苦しさで動けなくなっていました。なので、全く違う本来の姿を今日はお見せできたと思います。朝日杯を勝った時にとてもポテンシャルの高さを感じましたし、NHKマイルCを勝った時に、この馬が日本で一番のマイルの馬になるなというのを実感しました。秋は結果を伴うことができなかったですけど、こうして改めて証明するような走りをしてくれました。馬自身が、本当に日本で一番強いマイル馬なんだと証明してくれたレースではないかと思います。これから先も無事に一戦ごとに競馬場に来てくれることを願いますし、無事な状態で競馬場に来ることさえできれば、素晴らしい走りができると思いますので、これからも楽しんでもらえたらと思います

川田将雅騎手のレース後コメントより(netkeiba.com)
  • ガイアフォース(2着)・・・調教でストライドの大きな迫力のある走りを見せていたので、パドックでの様子も含めて状態は良さそうだった。それにしても、ここまでの激走は予想できず。しかし、今回の出走馬の中で、唯一この馬が他馬と勝負付けできていない馬ではあった(下図参照)。安田記念は過去2回連続4着、フェブラリーSも2着になるなど能力がGⅠクラスであることを今回も示した。吉村騎手の堂々とした騎乗ぶりも印象的。
安田記念出走馬の相関図(中央上部にガイアフォース)
  • ソウルラッシュ(3着)・・・決して状態は悪くなかったし、レース運びも問題なかった。向正面でやや後ろのポジションになったが、3~4コーナーで前との差を縮めたので、大して影響はなかったはず。東京競馬場が合わないとしか考えられない。池江調教師も首をひねる。
  • ブレイディヴェーグ(4着)・・・思いのほか前目のポジションになったが、戸崎騎手としては理想的なポジション取りだったとのこと。やや行きたがっていたようにも見えたが。ソウルラッシュと競り合って能力の高さを改めて示したが、体型的にはもう少し長い距離のほうが合っていそう。
  • ウインマーベル(5着)・・・この馬にとってはベストなレース。息の長い活躍は目を見張るものがあるが、何といってもこの馬にとって不運なのは、国内に1,400mのGⅠレースがないこと。それでも最近はマイルのレースでも好走できているのが凄い。松山騎手も納得のレース。
  • シャンパンカラー(6着)・・・信じられないような大出遅れから、最速の上がりタイム(ラスト600m)で6着に追い込んだ。出遅れがなければ2~3着もあったかも。NHKマイルカップ制覇後は精彩を欠いたが、近走は復調の気配があり、今後が楽しみ。何としてでもスタートの改善を。
  • ウォーターリヒト(9着)・・・レースではいつもどおりの後方待機で問題なかったが、ペースが遅く最後まで何もできなかった。今回は実力馬たちの洗礼を受けたが、これからの成長に期待。
  • シックスペンス(12着)・・・直線に向いても全くいつもの切れ味が見えず。この馬も国内に1800mのGⅠがないことが一番の不運か。ルメール騎手は柔らかい芝の状態が一因と見ているが、果たして。

今後の見どころ

今年のドバイシーマクラシックを勝ったダノンデサイルを始め、天皇賞(春)を勝ったヘデントール、ヴィクトリアマイルを勝ったアスコリピチェーノ、昨年の有馬記念を勝ったレガレイラなど、今年の4歳勢は例年になくハイレベルな馬がそろっている中、ジャンタルマンタルも同世代ナンバーワンマイラーであり、そして、現役最強マイラーであることを証明したかもしれません。

ガイアフォースも、ソウルラッシュも、ブレイディヴェーグも、間違いなく現役トップクラスの実力の持ち主ですが、その馬たちを寄せ付けなかった今回の安田記念の走りは、ジャンタルマンタルがとんでもない名馬であることを予感させるものがありました。
NHKマイルカップ以来のアスコリピチェーノとの再戦を残しているとはいえ、国内に関してはほぼ勝負付けが済んだ感もあります

高野調教師は、ジャンタルマンタルの今後の可能性として海外レースへの再挑戦も示唆しています。
今回の勝利で米国ブリーダーズカップマイルへの出走権を得たようですが、果たして秋はどんなローテーションであの突き抜けるような走りを見せてくれるのでしょうか。
個人的には、父の背中を負ってアメリカに挑戦することを期待します。

ソウルラッシュもイギリスのサセックスステークスというマイルGⅠに予備登録しているようですが、今回のレースを見ると、年齢的なことも考えて、マイルチャンピオンシップ連覇から香港マイルという昨年のようなローテーションが現実的だと思います。

ブレイディヴェーグに関しては、やはりマイルよりも中距離向きだと思いますので、2年ぶりのエリザベス女王杯に向かうのが、この馬にはベストの選択ではないでしょうか。

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