早速ですが、とてもいいレースでした。今年の天皇賞(春)。
古馬中長距離戦線の強豪馬が集まる伝統の一戦ということもあり、天皇賞(春)はいいレースが多いのですが、強い馬が強い勝ち方で勝ったという点で、今回のレースは誰もが納得のいく非常にいいレースでした。
しかし、馬券を勝った人にとっては納得のいかない点も多かったレースかもしれません。
今回は、その天皇賞(春)を振り返ります。
以下のレース展望の記事も合わせて読んでいただくと、さらにわかりやすいかと思います。
<天皇賞(春)2024のレース展望>
天皇賞(春)2024 レース結果
こちらが天皇賞(春)2024の全着順です。
勝ったのは、最終的に1番人気に推されたテーオーロイヤルでした。勝ちタイムは3分14秒2。このタイムは、近年でいうとキタサンブラックの驚異的なレコード(3分12秒5!)に次いで優秀な勝ちタイムです。テーオーロイヤルはこれで重賞3連勝、そして、GⅠ初制覇。鞍上の菱田裕二騎手もデビュー13年目で念願のGⅠ初制覇になりました。
過去10年のデータどおり(上の過去記事を参照)、今回の天皇賞(春)も1番人気の馬が優勝しましたが、なんと2番人気のドゥレッツァは15着に、3番人気のサリエラは12着に惨敗。そして、昨年のタイトルホルダーとアフリカンゴールドに続いて、今年もハピが競走中止となってしまいました。
- 優勝馬テーオーロイヤルのプロフィール
- 父 リオンディーズ
母 メイショウオウヒ(母父 マンハッタンカフェ)
馬主 小笹公也
生産者 三嶋牧場
調教師 岡田稲男(栗東)
通算成績 18戦8勝(24’GⅠ天皇賞(春)、24’GⅡ阪神大賞典、22’24’GⅢダイヤモンドS)
天皇賞(春)2024 レース展開
6番ディープボンドがスタートを決めてハナを奪おうとしましたが、その外から11番マテンロウレオと横山典弘騎手が気合いをつけて一気に先頭に立ちました。そして、前走の金鯱賞のように後方で様子を見るかと思った12番ドゥレッツァも、思いのほか前のポジションを取りに行きました。いや、取りに行ったというより馬が行く気を見せたというべきか。
14番テーオーロイヤルもドゥレッツァを追いかけるように先団に取りつき、1番サリエラも予想どおり中団から前のインに。5番ブローザホーンは後方待機策に出ました。
11番マテンロウレオが逃げ、少し間があいて6番ディープボンドと12番でドゥレッツァが追走する形で1週目の坂越えに。各馬は手綱をグッと引いてペースが上がるのを抑えていました。
14番テーオーロイヤルは早々に折り合いをつけて、5番手の外目に。5番ブローザホーンは後方から4~5番手の位置。
各馬が1週目の正面スタンド前にかかると、やはりというべきか、スタンドからは大歓声があがりました。11番マテンロウレオはこれに興奮してしまったのか、横山騎手が手綱を引いて馬が行きたがるのを抑えようとする様子がみられました。
最初の1,000mは59秒7とハイペースに。横山騎手としてはここからペースを落としたかったでしょうが、結果的に第2コーナーあたりまでは早いラップ(1F11秒台~12秒前半)を刻むことになります。
1番サリエラの武豊騎手は、第4コーナーを回ったところで馬を外に持ち出しました。これにより、有力馬3頭の位置取りはドゥレッツァ→テーオーロイヤル→サリエラという順番に。
速いペースで逃げる11番マテンロウレオは、第1コーナーから第2コーナーにかけても後続とのリードを保っています。2番手の6番ディープボンドはマイペースに後続集団の先頭を走り、この馬の脚質からすれば絶好の展開に。
有力馬の位置関係は変わらず、5番ブローザホーンも相変わらずジッと後方で待機していました。
すると、18番ハピが第1コーナーで競走中止。後日、ハピ自体には異常がなかったことを管理する大久保調教師が明かしました。ホッ、よかった。
向正面で2週目に入ると、ようやくペースが落ち着きました。しかし、まだ11番マテンロウレオのリードは4~5馬身くらいあります。
6番ディープボンドが単独2番手で、その後ろで12番ドゥレッツァ、14番テーオーロイヤル、1番サリエラがお互いをけん制し合うように追走。6番ブローザホーンはやはり後方待機。
天皇賞(春)は例年このあたりで「動き」がみられることが多いのですが、今回は特に大きな動きはみられませんでした。
そのままの隊列で2度目の坂越えをクリアすると、第3コーナー過ぎの下り坂でようやく動きが。
なんと、12番ドゥレッツァの手ごたえがあやしくなり、勝負所にも関わらずポジションが下がっていきます。
これを見て、14番テーオーロイヤルが「待ってました」とばかりに絶好の手ごたえで外を上がっていきます。これと一緒に2番手につけていた6番ディープボンドもペースが上がり、第4コーナーでこの2頭が逃げる11番マテンロウレオを一気に捕まえました。
5番ブローザホーンはまだ後方です。
第4コーナーから最後の直線に向くと、11番マテンロウレオはあっさり先頭を譲り、代わって6番ディープボンドが先頭に立ちました。これに14番テーオーロイヤルが並びかけ、2頭の一騎打ちになるかと思いましたが、並ぶ間もなくテーオーロイヤルが抜け出して先頭に。
人気の12番ドゥレッツァと1番サリエラがズルズルと馬群に沈んでいく中、直線で外に出した5番ブローザホーンが一気に加速して前にいた馬たちを次々に抜いていきます。
先頭に立った14番テーオーロイヤルはあっという間に2馬身、3馬身とリードを広げ、まさに王者の走りで最後の直線を独走。
天皇賞(春)で3年連続2着に入っている6番ディープボンドも素晴らしい粘りで2番手を死守していましたが、外から1頭次元の違う末脚で5番ブローザホーンが追い込んできました。
結局、テーオーロイヤルは直線で誰にも前を譲ることなく2馬身リードでゴール。2着には素晴らしい末脚を見せたブローザホーンが入り、ゴール前でわずかに交わされたディープボンドが殊勲の3着に。
そして、4歳勢の中で最先着となる17番スマートファントムが内から追い込んで4着に入り、直線で後方からしぶとく伸びてきた4番ワープスピードが5着に入りました。
2番人気のドゥレッツァは予想だにしなかった15着という惨敗でしたが、後日、ドゥレッツァの馬主キャロットファームから右第1指骨の剥離骨折が判明したと発表されました。素晴らしい能力を持った馬ですから、しっかり怪我を治して、またその雄姿を見せてほしいと思います。
YouTubeのレース映像もぜひご覧ください。
天皇賞(春)2024 主な出走馬の短評
- テーオーロイヤル(1着)・・・想像以上の圧勝。やはりスタミナお化けだった。心肺機能と身体能力がよほど高いのだろう。それは鞍上の菱田騎手もよくわかっていたようで、まったく臆することのない横綱相撲、正攻法のレースだった。小笹オーナーから豪州GⅠメルボルンカップ(芝3,200m)に出走するプランも発表されたが、残念ながらレース後に骨折が判明。比較的軽度なようだが、手術をして3か月休養に。以下はレース後の菱田騎手のコメント。
本当に、今まで生きてきた中で一番嬉しいです。最後は意外と冷静で、4コーナー回ってくる時は、20年前に天皇賞を見に来ていた自分に『見ておいてくれ』という気持ちで追っていました。皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。具合が良かったからか、いつもより前進気勢はあったのですが、その中でもしっかりリズム良く走ってくれました。最後の直線は、後ろはわからなかったので、一生懸命追っていました。長いブランクがあって、競走馬としてしんどかったとは思いますが、そこを経て成長してきてくれました。自分の常識ではわからないというか、すごい馬だと思います
菱田裕二騎手レース後のコメントより(netkeiba.com)
- ブローザホーン(2着)・・・素晴らしい末脚で追い込んだが、勝った馬が強かった。この馬もスタミナはある。やはり京都も向いていた。末脚勝負に徹した菅原騎手もいい騎乗だった。
- ディープボンド(3着)・・・いい状態に仕上がっていた。今年も勝てなかったが、よく頑張った。スタミナもまだまだ衰えていない。このコース、このレースとの相性を考えれば、なんら疑問のない3着。来年もぜひ出てほしい。
- スマートファントム(4着)・・・4歳勢で最先着。人気から考えれば大健闘。重馬場ならさらにいい結果になったかも。内でジッと脚をためて、上がり2位の末脚で追い込んだ。それにしても思いのほかスタミナがあったことにビックリ。
- ワープスピード(5着)・・・少し入れ込んでいたが、最後は着実に脚を伸ばした。実力が足りなかったが、初GⅠで5着は優秀。
- タスティエーラ(7着)・・・パドックでは状態があまり良く見えなかった。筋肉の付きが悪いし、入れ込み気味。京都との相性も悪くないはずだが。成長が止まってしまった心配もあるが、まだ頑張っている。もう1度復活した姿をみたい。
- サリエラ(12着)・・・どうした?と思うような惨敗。気温が上がってバテたか。久々の出走も、京都もこの馬にはマイナスだったかも。
- ドゥレッツァ(15着)・・・状態は良さそうだったが、軽度の熱中症と骨折があったと判明。この馬は気性が難しそう。あらためてルメール騎手の凄さがわかった。
今後の見どころ
今後の見どころは、「テーオーロイヤルのメルボルンカップ制覇!」と言いたかったところですが、残念ながらテーオーロイヤルは骨折により長期休養となってしまいました。ですが、きっと復活してまた来年の天皇賞(春)でも圧倒的なレースを見せてくれるはずです。
そうなると、焦点は次の中長距離GⅠ、宝塚記念の優勝の行方です。
今回もドゥレッツァに骨折が判明しましたが、先日はリバティアイランドが靭帯の炎症で春全休となることが発表され、有力馬の戦線離脱が目立ちます。
そんな中、早々に宝塚記念参戦を発表したのが、昨年有馬記念で見事な復活を果たしたドウデュース。ドウデュースは、今年の凱旋門賞にも登録したことが発表されましたし、前走のドバイターフは不完全燃焼のレースになってしまいましたので、ここは勝ちにくるでしょう。
さらに、昨年の天皇賞(春)を勝ったジャスティンパレス、今年の大阪杯を勝ったべラジオオペラなどのGⅠ馬も参戦を表明していますので、昨年に引き続きなかなかの強豪メンバーが集まりそうです。
そして、今年の宝塚記念のポイントは、京都競馬場で開催されること。そうです。天皇賞(春)も京都競馬場でした。ということは・・・京都競馬場と相性がいいブローザホーンとディープボンドも参戦を表明していますので、この2頭は注目しておいたほうがよいでしょう。
厳選6頭の結果
最後に、レース展望でピックアップした天皇賞(春)の厳選6頭の結果をお伝えします。
またまたワイド馬券を的中することができました。来週もちょっとだけ期待しててくださいね(笑)
それと、YouTubeでライブ配信もしていますので、そちらも合わせてご覧ください。
- 天皇賞(春)2024 厳選6頭の結果
- S評価 12番ドゥレッツァ→15着 14番テーオーロイヤル→1着
A評価 7番タスティエーラ→7着 1番サリエラ→12着
穴評価 5番ブローザホーン→2着 6番ディープボンド→3着