先週は牡馬クラシックの1冠目、GⅠ皐月賞が開催されました。
76年ぶりの牝馬による皐月賞制覇が期待されていましたが、結果は、データどおり共同通信杯組が1着&3着、そしてまたも弥生賞組は勝てず。
さて、今回はその皐月賞の回顧をします。
今回は、1番人気に推されながら偉業を逃してしまった牝馬レガレイラの敗因と今後について考察しました。
レース展開
スタート前にトラブル発生。16番ダノンデサイルが跛行により発走除外となってしまいます。
発走時間が遅れてしまい、なんとなく嫌な雰囲気がただよった皐月賞のスタート。なんと、私が期待していた無敗馬の17番ビザンチンドリームが大出遅れ。この馬はここでレースが終わってしまいました。
スタート後は予想どおり2番メイショウタバルが逃げて、それを4番シリウスコルトが追いかけます。
ここで8番ジャンタルマンタルが積極的に前に競りかけていきました。川田騎手の練りに練った作戦でしょう。
そして、13番ジャスティンミラノはジャンタルマンタルをマークするように先団にとりつき、さらにジャスティンミラノをマークするように14番シンエンペラーや12番コスモキュランダらが追走します。
10番レガレイラは行き脚がつかず後方2番手です。
結局2番メイショウタバルがハナを奪い、各馬が第1コーナーにかかりました。メイショウタバルは、ここからどんどん加速して後続を突き放していきます。
早くも馬群が縦長になり始める中、8番ジャンタルマンタル→13番ジャスティンミラノ→12番コスモキュランダという並びで隊列が固まります。10番レガレイラは変わらず後方2番手。
2番メイショウタバルは後続を4馬身~5馬身と引き離して第2コーナーにかかります。しかし、馬自体はやや引っかかっているように見えます。浜中騎手も馬のペースを抑えるのが難しかったようです。
8番ジャンタルマンタル、13番ジャスティンミラノ、12番コスモキュランダは各々のポジションですでに折り合っていました。
向正面でも2番メイショウタバルがリードを大きくとって逃げていました。ここで前半1,000mが57秒5と計測。超ハイペースです。
後続の馬はこのハイペースのおかげで、メイショウタバルとは対照的にしっかり折り合ってレースを進めることができました。
8番ジャンタルマンタル、13番ジャスティンミラノ、14番シンエンペラーといった有力馬たちはお互いを意識し合いながら先団から中団に固まっています。12番コスモキュランダとモレイラ騎手はこれらの有力馬を虎視眈々とマークしていました。
有力馬の中で10番レガレイラだけが後方に取り残された形です。
第3コーナーでも2番メイショウタバルはまだリードをとって逃げていますが、このあたりから逃げの勢いがなくなっていきます。
代わって、8番ジャンタルマンタル、13番ジャスティンミラノ、14番シンエンペラーら有力馬は絶好の手ごたえで外を回ってポジションを上げていきました。
12番コスモキュランダも前走の弥生賞のようにここでロングスパートに入りたかったかもしれませんが、馬群の中に入ってしまって外に出すタイミングが遅れました。
10番レガレイラは前に上がっていく有力馬たちを尻目にまだ後方集団から抜け出せないでいます。
2番メイショウタバルの逃げが完全に止まってしまった中、第4コーナーで8番ジャンタルマンタルが瞬発力を生かして一気にスパートをかけました。この仕掛けのタイミングには賛否両論あるようですが、後述のとおり私はこの川田騎手の判断はベストに近かったと思っています。
出し抜かれた形の他の有力馬たちは、ジャンタルマンタルを追いかけるように外を回りながらスパートしました。14番シンエンペラーもこの時点ではとてもいい手ごたえに見えました。
一方、10番レガレイラはあまり手ごたえがよさそうではなく、外側に15番サンライズアースがいるせいで外に出せずにいました。
直線入口で早くも先頭にたった8番ジャンタルマンタル。
外からは13番ジャスティンミラノ、14番シンエンペラー、12番コスモキュランダが追いこんできますが、ジャンタルマンタルが自慢の瞬発力で一気に後続を引き離します。
15番サンライズアースと17番ビザンチンドリームが外に大きく膨れてしまいましたが、10番レガレイラはその隙に外に出してようやく追い込み態勢に入りました。
2番メイショウタバルはハイペースがたたってバタバタになってしまい、ズルズルと後退。
早めに先頭に立った8番ジャンタルマンタルが逃げ切りを図りますが、13番ジャスティンミラノと12番コスモキュランダがジワジワと追い込んできます。14番シンエンペラーもこれに付いて行きたかったのですが、フラフラして坂井騎手も追いにくそうでした。
大外からは9番アーバンシックと10番レガレイラも追い込んできますが、位置的に前を捉えるまでにはいかなさそうです。
坂を上り切ったあたりでジャンタルマンタルはさすがに脚が止まってしまい、代わってジャスティンミラノが先頭に。その外からコスモキュランダも並びかけましたが、わずか首差しのいでジャスティンミラノが1着でゴール!コスモキュランダが2着、ジャンタルマンタルが3着で入線。
大外から追い込んだアーバンシックが4着、直線で伸びを欠いたシンエンペラーが5着に入り、1番人気のレガレイラは上がり最速タイ(3F33秒9)で追い込みましたが6着と敗れました。
超ハイペースとなった今回のレースでは1分57秒1という驚異的なコースレコードが樹立しましたが、その立役者となった2番メイショウタバルは最下位となってしまいました。
レース映像はこちらをご覧ください。
各馬の評価と今後
勝ったジャスティンミラノは、これで3戦3勝。無敗の皐月賞馬となりました。共同通信杯の強さは本物だったということでしょう。あのジャンタルマンタルを子供扱いにするレースぶりでしたからね。今回の皐月賞では共同通信杯と逆の展開になりましたが、やはりジャンタルマンタルには先着しました。
馬体重が増えていたのですが、パドックで見た感じでは太目な感じはありませんでしたので、これも成長の証でしょう。もともと素質が高い上に成長力を見せていますので、まさに充実一途。レースぶりもセンスがあり、正直、ジャスティンミラノを上回る馬は同世代で見当たりません。
ようやく父に似たキズナ産駒が誕生したように思います。つまり、ジャスティンミラノは日本ダービー向きだということです。東京コースでも勝っていますし、順調にいけば2冠の可能性は十分にあると思います。菊花賞は距離が長い気がしますが、ダービーの勝ちっぷりが良ければ3冠も視野に入ります。
2着のコスモキュランダは、人気はありませんでしたが(弥生賞組が皐月賞を勝てないというデータが嫌われたのでしょう)、この馬は実力どおりの好走だったと思います。弥生賞勝ちもフロック(まぐれ)でないことが証明されました。モレイラ騎手もさすがですね。ダービーで父アルアインの雪辱を果たせるか。モレイラ騎手は「スタミナがある馬」と評していましたので、ダービーでの好走も期待しています。
3着のジャンタルマンタルは、2,000mという距離を私は不安視していましたが、結果的にはこなすことができました。が、やはりゴール前の様子をみると少し距離が長かったのでしょう。川田騎手の仕掛けのタイミングが早かったという見方がありますが、私はこの馬で勝つならあのタイミングしかなかったと思います。事実、ジャンタルマンタルが直線で先頭に立ったところで他馬は置きざりにしましたので、もう少しスタミナが持てばそのまま逃げ切ったでしょう。次走はNHKマイルカップだそうで、アスコリピチェーノやボンドガールとの対決が本当に楽しみです。
4着のアーバンシックは、京成杯2着から久々の出走となりましたが、ブランクは問題にしませんでした。むしろ、この馬の素質の高さを証明するレースになりました。後述のシンエンペラーやレガレイラに先着したんですからね。2歳時の百日草特別(東京、芝1,800m)の勝ちっぷりを見ると、同じ東京コースのダービーもいい走りが期待できそうですが、スワーヴリチャード産駒の成長力が試されるレースになりそうです。
5着のシンエンペラーは、またしても詰めの甘さを露呈してしまいました。パドックの雰囲気は本当に素晴らしいのですが、レースに行くと真面目に走れないようです。今回の皐月賞でも途中まではいい感じだったのに、直線に入るとシンエンペラーはフラフラして真っすぐ走らず、坂井騎手が満足に追えない様子が見られました。この馬は距離が長いほうがいいかもしれません。距離が短いと、この馬には「楽すぎて」遊んでしまうんでしょう。それだけ素質が凄い馬だということです。
17着と最下位に沈んだメイショウタバルですが、ローテが詰まっていたことによる疲労と、気性面の難しさ、そして超ハイペースの展開が敗因でしょう。毎日杯の強い勝ち方を見ればこの馬の能力を疑う余地はありませんので、いったん立て直して、次走はぜひ期待したいですね。
レガレイラから感じた不調のわずかな兆し
そして、76年ぶりの牝馬による皐月賞制覇という偉業を逃してしまったレガレイラ。
「ルメール騎手が乗っていたら・・・」なんていうのは、安直な考え方です。
私は、ルメール騎手でも今回は厳しかった、と思っています。その理由を以下に述べていきます。
関係者のコメントから本調子ではなかったことがうかがえる
まず、木村哲也調教師のコメントを振り返りましょう。
レース前はこうコメントしていました。
1回1回の競馬における消耗度は近年大きくなっていると個人的に思っている。なので、年末(ホープフルSに)使って3か月期間が空いているが、これから先も競馬が続くので、それを考えれば少しは楽をさせてあげないといけないと思っている。そういう意味で、3か月休みをもらって今回レースを使えることは、私個人の中ではネガティブじゃない。休みをもらって馬にとってはよかったと思っている。
レース前の共同記者会見における木村調教師のコメントより
そして、レース後に木村調教師はこうコメントしていました。
調教師の調教が間違っていました。返し馬も悪かったし、スタートも良くなかった。申し訳ない。取り返しのつかないことをしてしまった
レース後の木村調教師のコメントより
このレース後のコメントを、「(騎手や馬をかばうために)調教師が責任を全部背負おうとしている。」と見る向きもありますが、木村調教師はあのイクイノックスを育てた名調教師です。クラシックという大舞台でそんな口先だけの発言をするでしょうか?
私は、木村調教師が心から後悔している気持ちを何とか言葉として絞りだしたコメントだと受け取りました。その証拠に、「取り返しのつかないことをしてしまった」とまで言っているのですから。
つまり、木村調教師としては「馬を休ませたい」という気持ちがありつつも、「クラシックという大舞台に出す以上はしっかり仕上げなくてはいけない」という気持ちもあり、3か月のブランクは言い訳にできないと自分自身を追い込んでいたと思います。しかし、結果として馬に楽をさせてしまい、仕上がっていない中途半端な状態で本番(皐月賞)に出してしまった、という後悔があるのだと推察しています。
続いて、北村宏司騎手のコメントを振り返ります。
進路をつくりながら運んで3角から押し上げた。4角ではモタれる面がありながら伸び始めてくれたんだけど、最後は思ったより苦しい伸びになって前を捉えられなかった。
レース後の北村騎手のコメントより
北村騎手はスタートが悪かったこともコメントしていましたが、それはホープフルステークスで優勝した時も同じ状況でしたので、致命的ではないでしょう。むしろ、最後の伸びが思ったよりも苦しかった、という点が全てを物語っています。
つまり、上がり最速のタイムで追い込んでいながら、乗っている騎手の感覚としては「苦しかった」ということですから、よほど馬の動きやバランスがよくなかったのだと推察できます。要するに、馬の余力がなく最後は脚があがってしまった状態でなんとか走り切った、という感じなのでしょう。まさにブランクや調整不足から馬がバテてしまった、という症状に見えます。
パドックで感じたレガレイラの集中力のなさ
レガレイラの不調は、パドックでの様子からもうかがい知ることができました。
ちなみに、最下部にリンクを貼りましたが、私のYouTubeのライブ配信でもその点を指摘しています。
では、実際のパドックの画像を使って説明します。
レガレイラは、これまで皐月賞の敗戦を含めて4戦2勝(勝ち2回、負け2回)という成績です。
まず、レガレイラの新馬戦(勝ち)のパドックの画像をご覧ください。
ご覧のように、首をグッと折り曲げていわゆる「鶴首」の状態で気合いが入った状態です。
レースでも、のちに札幌2歳ステークスを勝つことになるセットアップを相手に、目が覚めるような末脚で完勝しています。
続いて、その約3か月後(奇しくも皐月賞出走時のブランクと同じ)の2戦目、アイビーステークス(負け)のパドックの画像をご覧ください。
確かに一瞬を切り取った画像ではありますが、新馬戦のパドックとは明確に違うことがわかると思います。
新馬戦と違う点。1つは首が高いこと。もう1つは、観客のほうをチラチラ見ていること(物見)。メンコ(覆面)をつけていないことも違う点ではありますが、これは人間の仕業ですので馬にはどうしようもないことです。
結果的に、このアイビーステークスでは3着に負けてしまうことになります。「物見」についてはアスコリピチェーノの記事(以下リンク)で解説していますが、必ずしもマイナスではありません。賢さの裏返しとも言えますが、レガレイラに関して言えば集中力を欠いている状態を意味している可能性があります。
それでは、以上を踏まえた上で、GⅠ初制覇となった3戦目のホープフルステークス(勝ち)のパドックの画像をご覧ください。
どうですか?アイビーステークスとの違いがわかりますか?
首をグッと落として(首を低くして)歩いているのはわかると思います。首にも力が入っています。
注目は、レガレイラの眼です。私には、ギョロっと血走っている眼に見えます。
アイビーステークスでは首を使って振り返るように観客の方を見ていましたが、ホープフルステークスでは目線だけで周囲の様子を見ようとしています。それだけレースに集中しているということだと思います。
それでは、最後に今回の皐月賞(負け)のパドックの画像をご覧ください。
どうですか?前述の解説を踏まえて見ると、「走るレガレイラ」か「走らないレガレイラ」か聞かれれば、後者(走らないレガレイラ)だとわかると思います。
首は高いですし、「レガレイラの眼」に注目してもらえば、ホープフルステークスのときのギョロっとした眼ではなく、なんだが眠そうな穏やかな眼をしているように見えますが、いかがでしょう?
さらに、同じく皐月賞のパドックの画像をもう2つほどご覧ください。
まさに、「物見」をしている状態です。キョロキョロして集中力がなさそうに見えます。
私は、皐月賞当日にこのレガレイラのパドックを見て、レガレイラの馬券を買わないことに決めました。その様子は、最下部にリンクを貼ったYouTubeのライブ配信でもご確認いただけます。
オークス?日本ダービー?どちらにしても次は好走を期待
以上、皐月賞でレガレイラが負けてしまった要因として、ブランク、調整不足、集中力の欠如を挙げました。
レガレイラの次走はオークスになるのか、日本ダービーになるのか、まだ明確には示されていません。
しかし、どちらに出走するにしても、少なくともブランクと調整不足に関しては解消されるでしょう。
あとは、レース当日のパドックで「走るレガレイラ」を見ることができれば、きっといい走りを見せてくれると思います。ぜひ、当日のパドックにご注目ください。
ちなみに、オークスなら十分勝てると思いますが、ダービーでジャスティンミラノを負かすことは難しいのではないかと思ってしまう私KBでした。
皐月賞2024のライブ配信はこちら
ご覧いただく場合は、再生速度を1.5倍くらいに速めていただくのをお勧めします。