感動!感動!感動!いやー、今年は本当に感動のレースが多かった。
それもこれも、最強世代のイクイノックスとドウデュースのおかげです。この2頭の対決をもっと見たかったなあ。
ということで、今回は先週の有馬記念の回顧をしたいと思います。そして、私が有馬記念で本命にしていたタスティエーラを取り上げます。「果たして今年の3歳世代は弱いのか?」という疑問について考えてみました。
レース展開
5番ドウデュースは出遅れ気味。15番スルーセブンシーズや1番ソールオリエンスもスタートはあまりよくありませんでした。10番シャスティンパレスもいつもどおりの後方からの競馬です。
ハナに立ったのはやはり4番タイトルホルダー。そして、好スタートから16番スターズオンアースがなんと2番手に付けました。
先頭争いに加わると見ていた7番アイアンバローズはダッシュが悪く、内外の馬にかぶされて馬群に閉じ込められてしまいました。
1週目の3〜4コーナーで早くも4番タイトルホルダーが後続を離して逃げ始めます。16番スターズオンアースは2番手の内ラチ沿いで折り合い、5番ドウデュースも慌てることなく後方2番手で前に壁を作って折り合おうとしていました。
一方、15番スルーセブンシーズはかかり気味に大外を回って中団までポジションを上げました。14番プラダリアもかかり気味で先団の外を走ります。
大歓声の上がる正面スタンド前を通る頃にはほぼ隊列が決まり、先頭の4番タイトルホルダーは声援を背にペースを上げ始めます。
この時点でもまだ15番スルーセブンシーズはかかり気味で、グイグイとポジションを上げていきました。
1〜2コーナーで4番タイトルホルダーのリードは5~6馬身くらいまで広がり、これを見て観客からはさらに大歓声が上がります。
5番ドウデュースの武豊騎手はやや手綱を引っ張り気味でしたが、うまく前に馬を置いて後方から競馬を進めていました。16番スターズオンアースは終始落ち着いて離れた2番手に控えます。
前半の1,000mは60秒4ということで、やや早いペースですが、これはタイトルホルダーのペースでしょう。
勝負所の向正面バックストレッチでいよいよレースが動きます。
相変わらず4番タイトルホルダーがリードをとる中、3コーナー手前で2番手以下の馬群がギュッと固まり、後方にいた5番ドウデュースが馬群の外に出してタイトルホルダーの追撃体制に入りました。これを見て、ドウデュースをマークしていた10番ジャスティンパレスも外からこれを追いかけます。
2週目の3~4コーナーに入っても4番タイトルホルダーの脚色は衰えません。それどころか、リードが10馬身近くまで広がり「後ろの馬は届くのか?」という状況です。
すると、外に出していた5番ドウデュースが凄い脚でまくってきました。4コーナー手前で早くも2番手に上がる勢いで、なんだか昨年の有馬記念のイクイノックスを思い出してしまったのは私だけ?
10番ジャスティンパレスも外からまくってきますが、ドウデュースに引き離されてしまいました。すると、2番手の内でジッとしていた16番スターズオンアースがドウデュースに釣られるようにして一気にスピードを上げます。
直線に入るとスピードアップした5番ドウデュースと16番スターズオンアースが一気に4番タイトルホルダーとの差を詰めます。しかし、まだ3馬身ほどの差があります。
内からは好位で脚をためていた2番シャフリヤール、外からは大外をまくってきた10番ジャスティンパレスが追い込んできますが、前の3頭には追い付けません。
坂を上がって残り100mを切ると、ようやくタイトルホルダーの脚色が鈍り、ドウデュースとスターズオンアースが同時に並びかけます。しかし、ドウデュースの切れ味が勝り、半馬身リードを取ったところでゴール!
2着にはスターズオンアースが入り、3着争いは接戦でしたが、タイトルホルダーが粘り込みました。外から追い込んだジャスティンパレスが4着、喉鳴りの手術で復調したシャフリヤールが脚を伸ばして5着に入り、3歳馬の13番タスティエーラは直線で不利もあり6着、出負けをして内枠を生かせなかった1番ソールオリエンスは8着に終わりました。
レース映像はこちらをご覧ください。
各馬の評価と今後
勝ったドウデュースは、中山競馬場という力のいる馬場、2,500mという距離をどう克服するかが焦点だったと思います。私はこの2点において「厳しい」と判断して馬券から外しました。しかし、ドウデュースは見事に克服しました。いや、本来の強さを取り戻したという言い方がふさわしいでしょうか。そう、秋2戦(天皇賞(秋)、ジャパンカップ)は実力を十分に発揮できていなかったのです。
来年はドバイ、そして凱旋門賞に再挑戦するプランがあるそうです。ドバイなら圧勝できるでしょう。問題は、昨年馬場に苦しんで惨敗した凱旋門賞です。今年はスルーセブンシーズが4着に入りましたが、あのレースのようなパンパンの良馬場ならきっといい勝負ができると思います。とにかく雨が降らないことを祈るだけです。
2着のスターズオンアースは、あらためて強い馬だと認識しました。16番枠という不利な枠順を好スタートからの先行策で克服したのは、この馬とルメール騎手との完璧な共同作業でした。ヴィクトリアマイルの走りを見てこの馬は中距離以上が適性距離だと思っていましたが、来年はドバイ?あるいは大阪杯→宝塚記念→天皇賞(秋)→ジャパンカップという国内連戦でしょうか。個人的にはブリーダーズカップで見てみたいです。
3着タイトルホルダーはこれで引退です。横山和生騎手がコメントしていたように本当に「かっこよかった」。今後は種牡馬として、ぜひ素晴らしい逃げ馬を作ってほしいと思います。
4着のジャスティンパレスは、この1年間で一番成長した馬ではないでしょうか?天皇賞(春)を勝ち、天皇賞(秋)でも豪脚でイクイノックスに迫る走りを見せました。課題は後方からのレース一辺倒になっているところ。天皇賞(春)は連覇も期待できますが、もっと短い距離を勝つにはスターズオンアースのような柔軟な競馬ができるようにならないと厳しいでしょう。
5着シャフリヤールは札幌記念惨敗後の喉鳴りの手術が功を奏しましたね。前走ブリーダーズカップターフの走りを見ればこのレースでも好走できることは十分期待できました。来年は6歳。この実力をキープできればまだまだGⅠ戦線でも戦えると思います。
13着に惨敗したスルーセブンシーズは、終始引っかかっていたこと、外々を回って距離ロスが大きかったこと、そして2,500mという距離が長かったことが敗因でしょう。来年はやはりドバイでしょうか?スターズオンアースよりもこの馬のほうがヴィクトリアマイルを勝てそうな気がするのですが。
私がタスティエーラを推したい理由
私がこのレースで本命にしていたタスティエーラ。直線で不利があったとは言え、ドウデュースに勝てるような脚ではありませんでした。ドウデュースが4コーナーを凄いスピードで上がっていく中、タスティエーラはモタモタしてこのスピードアップについていけませんでした。ここで前についていくことができれば、直線で不利を受けることはなかったわけです。
同世代のソールオリエンスも8着に敗れました。本当にこの世代は弱いのか?
負け惜しみではなく、私は「そうではない。きっと来年は逆襲できる」と考えるのです。その理由を掘り下げたいと思います。
大好きなナリタトップロードと重なる
この理由は完全に私の主観と思い入れだけで挙げています。
なぜナリタトップロードと重なるのか?それは3歳時の2頭の戦績を比較すればわかります。
ナリタトップロード | タスティエーラ | |
GⅡ弥生賞 | 1着 | 1着 |
GⅠ皐月賞 | 3着(テイエムオペラオーの切れに屈する) | 2着(ソールオリエンスの切れに屈する) |
GⅠ日本ダービー | 2着(アドマイヤベガの切れに屈する) | 1着(先行抜け出しで初GⅠ制覇) |
GⅠ菊花賞 | 1着(先行抜け出しで初GⅠ制覇) | 2着(ドゥレッツァの切れに屈する) |
GⅠ有馬記念 | 7着(4歳馬の強さに屈する) | 6着(4歳馬の強さに屈する) |
ダービーと菊花賞の着順こそ逆ですが、ここまで歩んできた道がそっくりなのです。さらに、末脚の切れがなく、先行抜け出しで後続を振り切る競馬が得意なところ、そしてそれゆえの取りこぼしの多さもそっくりです。
ナリタトップロードは、結局3歳時の菊花賞が唯一のGⅠ勝ちとなってしまいましたが、成長曲線が持続型だったため、ライバルのテイエムオペラオーが4歳でピークを迎えたのに対し、トップロードは6歳まで息の長い活躍を見せました。次の理由にもつながってきますが、タスティエーラもこれからどんどん成長して息の長い活躍を見せてくれるかもしれません。ダービーが唯一のGⅠ勝ちにならなければよいですが・・・。
ナリタトップロードについて、私KBのYouTube動画で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
馬体重の増加は成長の証
今回の有馬記念でファンの皆さんがギョッとしたのは、タスティエーラの馬体重がプラス18kgだったことでしょう。ちなみに今回の498kgという馬体重は、6歳時のナリタトップロードの馬体重と全く同じです。
元騎手の解説者の方々は「そこまで太くは見えない」とおっしゃっていましたが、レース結果を見ると「やはり太目だったのではないか?」という疑問が出てきます。
実際はどうなのか。そこで、パドックの画像を比較してみました。
春のダービー、秋の菊花賞、そして今回の有馬記念と3レースのパドック画像を並べてみましたが、どうでしょうか?
まず、有馬記念のタスティエーラの外観ですが、はっきりと太いとは言えない気がします。お腹周りがポッコリしている感じはありません。お腹周りだけでいえば、ダービーの時とさほど変わりません。一方で、菊花賞のときのお腹周りは他の2走と比べて細く感じます。
体重が増える理由は「太る」ということ以外に「筋肉がつく」ということもあります。筋肉は脂肪よりも比重が大きいため、同じ体積だと脂肪よりも筋肉のほうが重量が大きくなります。
筋肉量という点で比較すると、3枚の画像の違いが出てきます。結論を言うと、有馬記念の画像が一番筋肉がついているように見えます。
わかりますでしょうか?首とお尻の筋肉の量が増えているのが。
首は筋肉で太くなっているし、お尻の筋肉がモリっと盛り上がっているのです。
正直、皐月賞の頃のタスティエーラはどこか貧弱に見えました。特に首がヒョロっとしている印象が強いですね。比べるのがかわいそうですが、桜花賞の時のリバティアイランドが筋肉隆々で見栄えする馬体だったのとは対照的です。
お尻の筋肉が増えれば後脚のパワーアップになります。馬は後輪駆動ですので、後輪(後脚)がパワーアップすればスピードや推進力の向上につながります。
首の筋肉は前脚の安定性を保つのと同時に、首の上下運動をスムーズにして走るリズムを取るために使われます。つまり、首の筋肉が増えることで後脚のパワーアップをスムーズな全身運動につなげることができるわけです。
今回の有馬記念では十分に活かすことができませんでしたが、この馬体重増=筋肉量増は成長の証であり、来年以降のタスティエーラの走りにきっとプラスになるはずです。
来年は国内中長距離戦線の主役になれる
以上の理由から、私はタスティエーラが来年の国内中長距離戦線の主役になれると考えています。
「ドウデュースやジャスティンパレス、スターズオンアースに対抗できるのか?」という疑問の声に対しては、「できる。が、そう簡単には勝たせてもらえないだろう。」という答えになります。
当然、相手は強敵です。そして、同世代のドゥレッツァやソールオリエンスもこれからさらに成長する可能性があります。しかし、3歳時はセンスと能力だけで勝てていたところ、成長力を伴って経験を積んでいくことでタスティエーラは競走馬としての強さを増していくだろうと予想しています。
来年の1つ目の関門は天皇賞(春)。相手はジャスティンパレスとドゥレッツァの2頭でしょう。切れ味では劣るかもしれませんが、ダービーのような粘りを見せることができれば十分勝てると思っています。
そして、父サトノクラウンが勝った宝塚記念、ダービーと同じ舞台のジャパンカップ、そして有馬記念のリベンジへと順調に駒を進めて1つでも多くのGⅠタイトルを獲得してくれることを期待しています。
まとめ
せっかくドウデュースと武豊騎手の感動の復活劇があったと言うのに、すっかりタスティエーラの応援ブログに成り変わってしまいました。大丈夫でしょうか?
先週のシュトラウスといい、今回のタスティエーラといい、自分は大舞台で期待に応えられずに負けてしまう馬に惹かれるようです。いわゆる判官贔屓(ほうがんびいき)というやつですね。
最後に、今回タスティエーラがナリタトップロードに似ているということを書きましたが、ソールオリエンスはテイエムオペラオーに似ている気がし始めました。ソールオリエンスに騎乗していた横山武史騎手や川田将雅騎手が口を揃えて「本格化はこれから」という趣旨の発言をしていたのが気になります。
4歳になってソールオリエンスがテイエムオペラオーのように覚醒した場合、タスティエーラはナリタトップロードのように4歳以降1つもGⅠを勝てずに終わってしまう、なんてシナリオも。歴史は繰り返されるのでしょうか?
それはいいとして、ドウデュース、武豊騎手、そして関係者の皆さん、本当におめでとうございました!