先週のマイルチャンピオンシップは、人気のシュネルマイスター、セリフォスがそろって惨敗。
まさかの展開の中、直線で最後方にいた単勝5番人気の4歳牝馬ナミュールがすべての馬を豪快に差し切ってGⅠ初制覇を果たしました。
ナミュールにとってはGⅠ挑戦8回目にしてようやく勝ち取った栄冠です。
しかも、騎乗予定だったムーア騎手がレース直前に負傷して、急遽ピンチヒッターで騎乗した藤岡康太騎手が見事に勝利に導いたというドラマのような展開。
レースの中でいろいろなポイントがあったと思いますので、恒例(?)となりました私の手描きの絵を使いながらまずレースを振り返りたいと思います。
レース映像はこちらからどうぞ。
レース展開
テレビでレースを見ていた方は「ヒヤッ」としたでしょう。
「シュネルマイスターがゲートの中で立ち上がっています!」
先にゲート入りした9番シュネルマイスターが待たされている間にゲートの中で暴れていたのです。
あわや大出遅れを覚悟しましたが何とかゲートを出ました。しかし、その直後に隣にいた8番ソーヴァリアントがよれて体が2回くらいぶつかってしまったのです。すると、シュネルマイスターは「シュン」とした感じでトボトボ最後方を追走していきました。
そして、大方の予想どおり13番セルバーグがハナを奪いに行きましたが、それよりも激しく追って14番バスラットレオンが一気に先頭に立ちました。
10番マテンロウレオも思ったよりも前目につける中、シュネルマイスターとぶつかった8番ソーヴァリアントと人気の11番セリフォスがかかり気味に前へ上がっていきます。
一方、前に行くかと思った1番ソウルラッシュと7番エルトンバローズが中団の位置取りとなりました。
勝った16番ナミュールは後方から2番手の位置です。
隊列はほぼ変わらず、14番バスラットレオンを先頭に3コーナーの頂上から4コーナーに向かって下り坂を各馬が進んでいきます。
前半の800mは46秒5。後半の800mは46秒0ですので時計だけ見ればほぼイーブンペースなのですが、結果的に見れば前の馬には厳しい流れだったようです。
私は本命の11番セリフォスに注目してレース実況を見ていたのですが、終始かかり気味に見えました。位置的にはいい位置なのですが、鞍上の川田騎手がずっと手綱を引っ張っていたのです。
9番シュネルマイスターはここで外目に持ち出しています。この時点では大外から追い込むイメージだったのでしょう。が、実際はそうならず。
4コーナーでもほぼ隊列は変わらず、下り坂で各馬が勢いをつけたまま直線に飛び込んでいきました。
14番バスラットレオンと13番セルバーグは直線入口で一杯になりズルズル下がりましたが、変わって外から11番セリフォスが一気に先頭に立ちそうな勢いに見えました。しかし、思いのほかモタモタしています。
その代わりに1番ソウルラッシュがモレイラ騎手に導かれて馬群を割って一気に先頭に立ちました。
7番エルトンバローズが予想外に外から追い込む態勢を見せ、その外から12番レッドモンレーヴ、15番イルーシヴパンサーも最後の末脚にかけます。
16番ナミュールと9番シュネルマイスターは最後方の位置から追い込み態勢に入りますが、勢いはナミュールのほうが断然良く、シュネルマイスターは手ごたえが悪いのか、ルメール騎手は大外ではなくナミュールの後ろを付いていく形で馬群に突っ込んでいきました。
残り200mで1番ソウルラッシュが先頭に立ちましたが、内側の先行馬たちが軒並みバテて後退する中、馬場の中央から猛然と追い込んできたのは5番ジャスティンカフェでした。
11番セリフォスはまったく伸びず、9番シュネルマイスターにいたっては姿すら見えません。
大波乱を予感したその瞬間、大外から1頭だけ別次元の脚で飛んできたのが16番ナミュールでした。藤岡騎手に導かれてあっという間にソウルラッシュらをとらえて先頭でゴール。
粘った2着ソウルラッシュ、追い込んだ3着ジャスティンカフェに続いて、外から7番エルトンバローズ、馬群を割って6番ダノンザキッドが4着、5着で入線しました。
結局、1番人気シュネルマイスターは7着、セリフォスは8着に沈みました。
人気2頭の誤算
勝ったナミュールよりも、惨敗した人気の2頭が皆さんは気になるのではないでしょうか?
「あんなに強い馬がなぜ負けた?」と。
かく言う私もその1人。
それぞれに敗因はあると思いますが、私なりに考察してみます。
7着シュネルマイスター
ゲートの中の様子やスタート直後の接触を見て私は「あ、これはメンタルやられたな。ダメかも。」と思いました。予感はあたり、道中も行きっぷりが悪くて「今日やる気ねー。」とでもシュネルが言っているように見えました。まさに「シュネルがスネル(拗ねる)」ですね。
どんなレースでも最後は必ず目の覚めるような末脚をみせるシュネルですが、この日は最後まで末脚が爆発しませんでした。
ぶつかってきたソーヴァリアントが悪いようにも見えますが、あれだけ隣のシュネルがゲートで暴れていれば落ち着いてはいられなかったでしょう。
他馬と体がぶつかることで火がつく馬もいるようですが、シュネルはそうではなかったようです。やはりこの馬はソロっとスタートさせて馬群を避けた後方待機の競馬しかできないかもしれません。それがこの馬の持ち味でもあります。
爆発力は間違いないだけに、名馬になりきれないのが惜しいですね。
あと、馬体重増も多少影響があったのでしょうか。
8着セリフォス
この馬はスタートが決まって前に壁がなくなると「かかってしまう」ようです。今回もそうでした。
昨年4着に負けたNHKマイルカップのレースを見ても同じ「症状」が見られます。
一方で、前に壁を置いて脚をためることができると、直線で前が開いた瞬間に爆発的な末脚を発揮できるので、ぜひ次に乗る騎手はその戦法でお願いしたいですね。
キャリアも少ないので、ためる競馬を教えることができれば、まだまだ活躍できるでしょう。このレースだけで見切るのは早すぎると思います。
調教はすごくいい走りだったんですけどねー。休養明けというのもあったでしょうし、叩きで富士ステークスが使えなかったのが痛かったとは思いますね。
ナミュールの強さは本物
せっかく勝ったのに、負けた馬ばかり注目されて気分はよくないでしょうが、ナミュールの強さには疑いがありません。
正直、春の段階ではあまりにも競馬関係者の評判がよいので、「そんなにいい馬か?」と疑問を持っていました。
その疑念が払拭され、「あ、この馬強い」と確信したのが前走の富士ステークスの走りです。
2着レッドモンレーヴとの差は見た目以上にあるなと思いました。どこまでも抜かせないし、どこまでも伸びるような最後の直線の末脚に見えました。
春のレースはいろいろと不運もありましたが、まだまだ成長途上だったのだと思います。素質はあるが、馬体も精神もまだ成長しきっていない状態だったかと。
夏を越して一気に成長したのでしょう。そのくらい富士ステークスのレースは見違えてよく見えました。同じコースで開催された2月の東京新聞杯の走りと比べれば明らかです。
京都競馬場がこの馬に合うかという心配もありましたが、広くて平坦なコースがこの馬の末脚を発揮するのに向いていたのだと思います。
藤岡康太騎手も素晴らしい騎乗でした。この馬との相性もいいのでしょう。なんだかナミュールが気持ちよさそうに最後の直線を走っているように見えたのは私だけでしょうか。
来年のヴィクトリアマイルはこの馬が最有力になるでしょう。リバティアイランドさえいなければ、ですが。昨年の阪神開催の秋華賞でも2着でしたし、大阪杯という選択肢もありだと思います。
まとめ
結果的に後ろからいった馬たちが上位に来て、先行した馬たちが下位に沈むというレースになりました。
2着のソウルラッシュは、中団に控える競馬をして正解だったことになりますが、モレイラ騎手の好騎乗ということでしょうか。それとも偶然?
なかなか読めない展開のレースでしたね。セリフォスが外を回る展開は予想していたのですが、かかり癖を読めていなかった私です。でも、そこが可愛くてセリフォスは好きです。
シュネルマイスターがこれから出るレースでやる気をなくしてしまわないか心配です。年齢も年齢ですし、頑張ってはいますがそろそろ引退が近いかもしれませんね。
さあ、来週はいよいよジャパンカップ。イクイノックスとリバティアイランドの対決が本当に楽しみです!
https://toproadoor.net/2023/10/01/2023autumn_midokoro_sprintmile/