先週は「菊花賞を勝ったドゥレッツァは化け物だ!」という記事を書きましたが、今週は「化け物」を超えた「神」ともいうべきイクイノックスの天皇賞(秋)について書きます。
さて、すでにたくさんご覧になったと思いますが、何度でも見ましょう。先週の天皇賞(秋)のレース映像です。
「イクイノックス」という馬名は、「昼と夜の長さがほぼ等しくなる時」という意味だそうです。
・・・うん、上手い例えが思い浮かびませんでしたが(苦笑)、とにかく天文学的な計り知れない強さを持った馬だということでしょう。
天皇賞(秋)のレース展開
今回も私の手書きの絵でレースを振り返りたいと思います。
大方の予想どおり外枠のジャックドールが勢いよく先頭に飛び出して行きましたが、なんとスタートからガイアフォースが追っつけて先頭に並びかけました。これがハイペースになった1つの要因でしょう。
ノースブリッジは少し控える形になり、逆にイクイノックスが馬の行く気に任せて前の方へ。
ジャスティンパレスはスタートが良くなく後方からの競馬になり、プログノーシスはあえて最後方に控える作戦を取りました。この2頭は結果的にこの位置どりが功を奏した形になります。
結局、向正面のバックストレッチでジャックドールがハナを奪いましたが、ガイアフォースを突き放そうとハイペースで飛ばします。前半の1,000mは57秒7を計測しました。
イクイノックスは楽々と3番手につけ、ライバルのドウデュースはこれをマークするように4、5番手で競馬を進めます。
追い込みにかけるダノンベルーガ、ジャスティンパレス、プログノーシスは後方でじっくり脚をためていました。
3コーナーに入っても隊列はほぼ変わりませんが、ガイアフォースがジャックドールと差を詰め、最後方のプログノーシスがジャスティンパレスの外に並びかけて追撃態勢に入ります。
4コーナーでジャックドールが一杯になりガイアフォースが先頭に変わろうとしますが、イクイノックスが絶好の手応えで持ったままガイアフォースに並びかけます。
ドウデュースはイクイノックスに付いて行きたいところですが、あっという間にイクイノックスに置いていかれました。一方、ダノンベルーガはドウデュースの後ろから良い手応えで馬群を割ろうとします。
プログノーシスは大外からややマクリ気味に追い込みをかけますが、ジャスティンパレスはその後ろで脚をため、直線に入ってからそのさらに外に出して追い込みました。
直線で一瞬ガイアフォースが先頭に立ちましたが、その外に並んだイクイノックスがあっという間に交わして先頭に立ちました。
ズルズルと後退するジャックドールに代わって、馬群を割ったダノンベルーガ、その外からプログノーシス、さらに外からジャスティンパレスが追い込んできます。ドウデュースも武豊騎手から乗り替わりで急遽鞍上を務めた戸崎騎手が必死に追いますがいつものキレがなく伸びません。
残り200mを過ぎてもイクイノックスはグングンと後続を突き放し、そのまま1着でゴール。
2着には大外から最速の上がり(33秒7)で追い込んだジャスティンパレスが入り、続いてプログノーシス、ダノンベルーガと入線。ハイペースを追走したガイアフォースが5着に粘り込みました。
なんと、イクイノックスとの一騎打ちが期待されたドウデュースは7着に沈んでしまいました。
イクイノックスは無敵なのか?
このレースを見たファン全員が思ったでしょう。
「強すぎる」と。
私も思いました。
タイムも1分55秒2という驚愕のレコード。
元騎手の方の話などを聞くと「前半あのハイペースを追走して前の馬を潰し、さらに直線で突き放して後続の馬を潰すというレースができるなんて意味がわからない」とその強さを表現されていました。
イクイノックスは、もはや人間の理解を超えた存在(神?)なのか?
ルメール騎手はレース後に「(競走馬に必要な能力)全部を持っている。本当に完璧な馬」というコメントをされていました。
ルメール騎手の発言が正しいのであれば、イクイノックスは「人間が考える理想の競走馬」ということになります。つまり、人間の理解を超えているというのは大げさで、「まさかそんな理想の馬が現れるはずがない」と思っていた馬が現れたということではないでしょうか。
私が見てきた競走馬の中で限りなく理想の馬と考えていたのはディープインパクトでした。丈夫で、スピードもスタミナもあり、強烈な末脚を発揮することもできれば、早めに抜け出して粘り込むこともできる。ただ、サンデーサイレンス譲りの強すぎる闘争心というのが少しネックになっていた気がします(これも使いようでは武器になりますが)。
イクイノックスは、いつも本当に涼しい顔をしてレースを勝っている印象があります。淡々と勝つというか、いつも冷静というか。変にスタミナをロスしてしまう「りきみ」や気負いがないというのがディープインパクトよりも優れている点のような気がします。
さて、GⅠ5連勝を決めたイクイノックスですが、どこまで連勝を続けるのでしょうか?
楽しみなジャパンカップ
今回敗れてしまったドウデュースですが、武豊騎手の直前の負傷で乗り替わりというアクシデントもあり、不運ではありました。また、京都記念以来の久々の出走だったことも影響があったと思います。管理する友道調教師も「これが実力ではありません」とコメントしており、武騎手とのコンビでジャパンカップ出走を目標としているとのことです。同じ舞台のダービーではイクイノックスを負かしていますので、ここでの逆襲を狙っているでしょう。
そして、ファンが色めき立つ馬の出走が予定されています。牝馬3冠馬リバティアイランドの参戦です。
ファンの注目は、「リバティアイランドはイクイノックスを倒すことができるのか?」ということでしょう。
リバティアイランドは、ジャパンカップと同じ舞台のオークスで6馬身差の圧勝劇を演じています。
しかし、迎え撃つイクイノックスも天皇賞(秋)で1度叩いて整った状態でジャパンカップに出走しますので、天皇賞以上のパフォーマンスを発揮する可能性があります。リバティアイランドに付け入る隙があるとすれば、天皇賞のレコード勝ちの反動でイクイノックスに疲れが残っている可能性があることですが、ルメール騎手の言うとおり「完璧な馬」だとすれば、回復力も尋常ではないでしょう。
海外招待馬として英セントレジャーを勝った日本生まれの英国馬コンティニュアスも出走を予定しています。ドウデュースとの再戦、リバティアイランドとの初対戦も含め、本当に楽しみな一戦になりそうです!