【競馬用語解説】勝馬投票券(かちうまとうひょうけん)・単勝式(たんしょうしき)【国語#1】

【競馬用語解説】勝馬投票券(かちうまとうひょうけん)・単勝式(たんしょうしき)【国語#1】

国語の第1回は、競馬用語解説。
今回は、「勝馬投票券」と「単勝式」の2つの用語について、中学生でも理解できるよう分かりやすく解説していきます。

勝馬投票券(かちうまとうひょうけん)

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勝馬投票券とはいわゆる「馬券」のこと

競馬をよく知らない人にとって、「勝馬投票券(かちうまとうひょうけん)」は耳なじみのない言葉かもしれません。
しかし、競馬好きにとっては、一度は聞いたことのある言葉でしょう。

「着順が確定するまで、お手持ちの勝馬投票券はお捨てにならないよう・・・」

こういうアナウンスを、競馬場内や競馬のレース中継で聞いたことがあるはずです。

そう。
勝馬投票券というのは、私たちが「馬券(ばけん)」と呼んでいるものを指しています

「馬券」というのは通称で、「勝馬投票券」は「競馬法」という法律で定められた正式名称です。
競馬法については、以下の記事で詳しく解説しています。

「勝馬投票券」というと堅苦しくて長ったらしいので、「馬券」と縮めて呼んでいるのでしょう。
「馬券」という言葉自体は明治時代に公用語として使われていたようで、歴史的に見ると「勝馬投票券」の方が新しい言葉ということになります。

馬券とは、競馬レースで自分が勝つだろうと予想した馬にお金を賭けるときに、その代金と引き換えに配布される券(チケット)のことです。
仮に予想した馬がレースで的中したとしても、その馬の馬券を持っていないとお金は戻ってきません。ですから、レースの着順が確定するまでは、馬券を捨ててはならないのです。

馬券を買うことを「投票」といいますが、まさに選挙のように特定の馬を選んで「あなたが勝ってね!」といって票を入れるわけです。
競馬が選挙と違うのは、お金がある限り一人で何票でも投票してかまわないこと、そして、一番たくさん票が入ったからといって、その馬がレースで勝てるわけではないことですね。

しかし、なぜ「勝馬投票券」というのでしょうか

競馬に詳しい人はご存じだと思いますが、馬券は決して「勝ち馬(=1着馬)」を当てるだけのものではありません。
日本中央競馬会(JRA)が発売する勝馬投票券には、以下の種類があります。

  • 単勝式
  • 複勝式
  • 枠連
  • 馬連
  • 馬単
  • ワイド
  • 3連複
  • 3連単
  • WIN5

あとで解説しますが、このうちの「単勝式」という勝馬投票券が、ずばり勝ち馬(1着馬)を当てる買い方です。
例えば、「複勝式」という勝馬投票券は、投票した馬が2着や3着に入った場合でも当たりとなります。
つまり、勝ち馬に投票しなくても当たりとなる勝馬投票券が存在するというわけです。

なぜこのようなチグハグな名前になったのかといえば、馬券の歴史にその答えが隠されています

単勝式(たんしょうしき)

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1着馬を当てる馬券の買い方が単勝式

先ほども簡単に説明しましたが、「勝ち馬」すなわち1着馬を当てる馬券の買い方を単勝式といいます

競馬のルールは簡単。
決められたコースを馬が走って1番先にゴールに着いた馬が勝ちという、いわば「馬の駆けっこ」が競馬なのです。

レースの1着馬、すなわち一番速い馬を当てるわけですから、最もわかりやすくて、最も本質的な馬券の買い方が単勝式といっていいでしょう。

実は、競馬の本質を理解するには、単勝式について理解を深めることが最適ではないかと考えて、今回このテーマを選んだ経緯があったりします。

さて、先ほど「勝馬投票券」という名称の謎が馬券の歴史に隠されている、ということを述べました。

なぜ単勝式以外の買い方もあるのに、馬券のことを「勝馬投票券」と呼ぶのかというと、それは、日本で初めて馬券発売が合法化された1923(大正12)年当時は単勝式の馬券しか存在していなかった(他の馬券の買い方がなかった)ためです。
日本で初めて馬券発売を認めた法律「旧競馬法」については、以下の記事で詳しく解説しています。

合法化のタイミングで馬券の正式名称が「勝馬投票券」と定められ、1931(昭和6)年に初めて複勝式が導入されまでの間、勝馬投票券は文字どおり「勝ち馬に投票する券(単勝式馬券)」だったのです。

戦後になって新たに競馬法が制定された際にも、戦前の呼び名である「勝馬投票券」という言葉がそのまま採用され、現在まで馬券の正式名称として法律にその名が刻まれています。

(豆知識)勝馬投票券の1票は何円?

馬券を買うことを「投票」と言いますが、現在の馬券は1票あたり何円だと思いますか?

意外と知られていない事実ですが、正解は1票あたり10円です。

「えー?だって、馬券は100円ずつしか買えないよ?」

と反論する競馬ファンが圧倒的に多いでしょう。

ネット投票ではなく、現物の馬券を買う人は必ず目にしているはずです
1票が10円であるという証拠を。

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馬券に投票した票数(枚数)が記載されている

上の画像のとおり、馬券には必ず投票した票数(枚数)が記載されています
画像の例であれば、12番の馬の単勝式馬券を100円分購入していますが、馬券の下に「合計10枚」との記載があります。
つまり、1枚あたり10円の馬券を10枚買って合計100円分購入したという計算になるわけです。

ご承知のとおり、馬券は100円単位で買う必要があるため、実際に馬券を買う場合は10枚(10票)単位で買うことになるのですが、現物の馬券としては、購入した枚数分を1枚にまとめて手渡されます。

なぜこんなことになっているのでしょうか?

「競馬法」が定められた戦後すぐの物価を見てみると、当時の10円は現在の100円くらいの価値ですから、10円単位で馬券を買うことを前提に法律をつくったのでしょう。
その後のインフレや急激な経済成長もあって、結局は100円単位で買うことが標準になったわけです。

一方で、馬券1票を10円で買うという仕組みは払戻金を計算する上で都合がよかったりします。

例えば、単勝オッズ2.5倍の馬の単勝式馬券を100円分購入したとしましょう。
もし、この馬がレースで勝った場合の払戻金の計算は・・・
100円×2.5=250円
ということで、100円で購入した馬券が250円になって払い戻されます。

これを馬券の枚数(票数)に置き換えると、1枚が10円ですから、買った時点で10枚だった馬券がレース後に2.5倍の25枚に増えたと見ることができます。
つまり、10円単位で払戻金を計算する際に、1枚10円という”相場”があることでそれが可能になるのです。

参考書籍

「近代日本の競馬-大衆娯楽への道」(杉本竜著、創元社)
「競馬の経済学」(渡辺隆裕監修、カンゼン)
「知っておきたい競馬と法」(大蔵省印刷局)

参考サイト

日本中央競馬会(JRA)

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