
数学の第1回は、確率。
今回は、単勝式馬券の当たる確率について、中学生でも理解できるよう分かりやすく解説していきます。
単勝式馬券の当たる確率

単勝式については、以下の記事で詳しく解説しています。
簡単にいうと、単勝式とはレースの1着馬を当てる馬券の買い方のことです。
その単勝式の馬券の当たる確率を数学で求めようということですが、そもそも「確率」とは何かについて、あらためて解説しましょう。
まず、「確率」という言葉を辞書で引くと、以下のような説明がなされています。
かくりつ[確率]
三省堂国語辞典(iOSアプリ版)
ある現象の起こりうる割合。たしからしさ。公算。プロパビリティー。
「―が高い」
一般人が一番なじみのある確率と言えば、天気予報の降水確率でしょうか。
つまり、「雨が降るという現象が起こりうる割合」が降水確率で、例えば「降水確率70%」という時には、100回同じ気象条件になった時に70回は雨が降るということを意味しています。
ですから、「馬券の当たる確率70%」といったときには、100回同じレースで同じ馬券を買った時に70回は的中するということを意味するわけです。
もちろん、同じレースを100回も行うことは現実的にありえないことですので、確率が100%や0%でない限り、どんな確率の馬券であっても1回きりのレースでは当たることも、外れることもありえます(降水確率10%で雨が降っても文句を言ってはいけません)。
そうは言っても、確率が高いほうが当たるパターンが多いという考え方ですから、同じ馬券を買うなら確率が高いほうを選ぶべきですよね(降水確率70%なら傘を持ち歩くべきです)。
では、単勝式馬券の当たる確率を求めてみましょう。
確率の求め方は、全ての現象がn通りあり、その中のある現象が起こるのがa通りだとすると、【a/n(a÷n)】で表すことができます。
単勝式馬券は1着馬を当てる馬券です。
まれに2頭が同時に1着になるケース(同着)もありますが、これを無視すると、単勝式馬券の買い方(n)は出走頭数と同じだけあり、そのうち馬券が当たるのは1通りだけ(a=1)です。
したがって、単勝式馬券の当たる確率を数式で表すと、以下のようになります。
(単勝式馬券の当たる確率)=1/(出走頭数)
この式を見ればわかるとおり、1レースあたりの出走頭数が多くなればなるほど分母が大きくなり、馬券が当たる確率は低くなっていきます。
つまり、単勝式馬券を当てたいなら、できるだけ出走頭数の少ないレースを狙うべきだということですね。
例えば、10頭の馬が出走するレースにおいて単勝式馬券が当たる確率を求めると、馬券の買い方は全体で10通り(10頭分)あり、そのうち馬券が当たるのは1通りだけなので、1/10、つまり10%ということになります。
10%というのは、このレースを10回行って毎回同じ単勝式馬券を買った時に1回は的中するという確率です。
「・・・え?そうなの?」
と疑問に思った人も多いでしょう。
馬券をよく買う人にとっては、「どの馬の単勝式馬券も当たる確率は10%である」という説明は感覚的に同意できないのです。
なぜなら、どの馬にも等しくレースに勝つ能力があるはずはなく、必ず馬ごとに能力の優劣があることを知っているからです。
そうです。
先ほどの確率の計算の中で、あえて大事な条件を1つ書いていませんでした。それは、「どの馬もレースを勝つ力が同様に確からしいとする」という条件です。
この条件が成立する場合に限って、先ほどの数式を使うことができます。
「同様に確からしい」というのは、全てのパターンの現象が同じ確率で起こりうるという意味です。
先ほどの例でいえば、出走馬10頭が全て同じ確率でレースを勝つ(1着になる)能力があるとすると(同様に確からしいとすると)、そのレースの単勝式馬券を当てる確率が10%である、ということになります。
競馬はどのレースも「同様に確からしくない」

馬券を当てる確率について深く理解する上で必要だと考えたので、あえて回りくどい説明をさせてもらいました。
結論的には、単勝式馬券の当たる確率を正確に計算する数式は存在しない、ということになります。
なぜなら、先ほども述べたとおり、出走馬によって能力に優劣があるので、レースに勝つ確率は馬ごとにバラバラだからです。すなわち、競馬はどのレースでも出走馬の勝つ力が同様に確からしくないと言えます。
よく考えれば当たり前なのですが、どの馬も勝つ確率が同じなら(同様に確からしいなら)、一生懸命「ああでもない、こうでもない」といって競馬予想する必要はないわけです。

例えば、サイコロを1回振って1から6までの数字のどの目が出るか、という予想をする場合、目の出かたは「同様に確からしい」と言えるので、それぞれの目の出る確率は全て等しく1/6と計算できます。
したがって、どの目が出るかを当てる確率も1/6ということになります。
サイコロゲームは確率の計算ができます。
一方で競馬は、確率を正確に計算することはできませんが、推定することはできます。
いずれにしても、「サイコロゲームと競馬は別物だ」と認識することが、競馬の本質を理解する上で重要です。
念のため申し上げますが、サイコロゲームにお金を賭けることは犯罪(賭博罪)ですので、決して行わないでください。
確率を推定することが競馬の醍醐味
先ほどサイコロゲームと競馬の違いを述べましたが、この違いこそが、競馬の醍醐味だと言えます。
つまり、馬が勝つ確率を正確に計算することはできませんが、できるだけ正確に推定することができれば馬券が当たりやすくなるわけであって、いわば「推理力」を鍛えることが馬券を当てる確率の向上につながるのです。
この「知的推理ゲーム」を楽しむことこそが、競馬の醍醐味ではないでしょうか。この点がサイコロゲームと大きく違うところです。

競馬とサイコロゲームの違いをイメージで伝えるために、上の絵を用意しました。
なんだか気持ち悪い絵ですが、この絵は競馬をイメージしたものです。
さて、この競馬をイメージした絵とサイコロとは、何が違うでしょうか?
「いや、違い過ぎるだろ!」
というツッコミが聞こえてきそうですが、それはわかった上で、上の絵に1から12までの数字が書かれていることにお気づきでしょうか?
サイコロの各面に1から6までの数字が書かれているように、この絵のトゲトゲにも1本1本数字が書かれています。
では、この絵に描いてある謎の物体をサイコロのように投げたときに、どの数字のトゲトゲが一番上に出てくるでしょうか?
「いや、そんなのわかんねーよ!」
というツッコミがまた聞こえそうですが、要するに、競馬とはそんなゲームなのです。
「わかんねーよ」で終わってしまったら、あとは博打(ばくち)のようにヤマを張って適当に数字を言うしかありません。
競馬の本質は、「わかんねーよ」で終わるのではなく、「なんだか面白そう。ちょっと研究してみようか」といって、この謎の物体を研究してどのトゲトゲが一番上に出そうか推定することで、できるだけ当たる確率を上げようというゲームを楽しむことにあります。
厳しい言い方になりますが、この知的推理ゲームを楽しめない人は、いくら馬券を買おうが、それは博打と同じということです。
適当に馬券を買って奇跡的に当てることができれば、それはそれで嬉しいでしょうし、そのこと自体を否定はしませんが、それは競馬の本質ではないと考えています。
応用問題

先ほど競馬に関して「出走馬によって能力に優劣があるので、レースに勝つ確率は馬ごとにバラバラ」ということを述べました。
そこで、上の画像に示したような2つの競馬レースが行われる場合に、単勝式馬券をどう買うべきかについて考えてみます。
画像の見方ですが、1番から6番までの数字は出走馬の馬番号で、その右に書かれているパーセンテージは、各馬がそのレースで1着になる確率を示しています。
いずれのレースも、1番の馬が最も勝つ確率が高く、逆に6番の馬が最も勝つ確率が低くなっています。
ですから、当然ながら、いずれのレースも1番の馬の単勝式馬券を買うことが馬券を当てる一番の近道なわけです。
それでは、1レースあたり3頭分(3通り)の単勝式馬券を買うことができるとしたら、どう買うべきでしょうか?
例えば、サイコロを振って奇数(または偶数)が出る確率はいくらかというと、全ての出かたが6通りで、そのうち奇数(または偶数)は3通りなので、確率は3/6、つまり50%です。
しかし、先ほどから述べているとおり競馬とサイコロは違いますので、6頭の中から3頭選んで単勝式馬券を買った場合に当たる確率が50%かというと、そうとは限りません。
これは感覚的に理解できると思いますが、勝つ確率が高い馬から順番に3頭(1番から3番まで)選んで買うのが正解です。
第1レースで単勝式馬券が当たる確率は、次のような計算になります。
30%(1番の馬)+25%(2番の馬)+15%(3番の馬)=70%
第2レースで単勝式馬券が当たる確率は、次のような計算になります。
75%(1番の馬)+10%(2番の馬)+7%(3番の馬)=92%
この買い方をすれば、どちらのレースも単勝式馬券が当たる確率は50%以上になりますので、2回に1回以上の確率で馬券を当てることができます。
特に、第2レースの方は90%を越えていますので、よほどのことがない限り馬券は当たるでしょう。
当たり前ですが、1レースあたり6頭分(6通り)の単勝式馬券を買えば当たる確率は100%になり、必ず当てることができます。
この時に問題になるのが、馬券を買う頭数が増えれば増えるほど馬券の購入金額が増えてしまう、ということです。
そこで、注目したいのが、第2レースの1番の馬の勝つ確率です。
なんと、この馬1頭だけで75%もの高い確率があります。
つまり、第1レースで3頭分の単勝式馬券(70%)を買うよりも、第2レースで1番の馬の単勝式馬券(75%)だけ買う方が、馬券が当たる確率が高いのです。
ですから、第1レースで馬券を買わずに、第2レースの1番の馬にその浮いた分のお金をつぎ込む方が得だ、という判断もできるわけです。
このように、各出走馬の勝つ確率をできるだけ正確に推定することができれば、馬券を当てる確率が上がるばかりか、無駄な馬券を減らしてお金を節約することもできるようになります。
では、ここで宿題です。
第1レースと第2レースで計3頭分の単勝式馬券を買う場合、どのような買い方をすべきでしょうか?
もちろん1レースだけで3頭分買うのもよいですし、レースごとに1頭と2頭に分けて買うのもよいでしょう。その代わり、3頭分は必ず買う必要がありますので、1頭だけにつぎ込むことはできません。
この問題については次回以降のところで考えていきたいと思いますので、皆さんもそれまでご自身で考えてみてください。
参考書籍
「やさしい中学数学 改訂版 電子版」(きさらぎひろし著、Gakken)