【競馬用語解説】odds(オッズ)・bookmaker(ブックメーカー)・pari-mutuel betting(パリミュチュエル式勝馬投票)【英語#1】
2025.06.03投稿

英語の第1回は、競馬用語解説。
今回は、「odds」「bookmaker」「pari-mutuel betting」の3つの用語について、中学生でも理解できるよう分かりやすく解説していきます。
odds(オッズ)

「オッズ」という言葉自体は、競馬をよく知らない人でも1度は聞いたことがあるでしょう。
そして、馬券を買う人にとっては、競馬に関わる数字の中で最も興奮する数字ではないでしょうか?
そうです。
「odds」は「オッズ」とそのまま和訳される言葉で、馬券(勝馬投票券)が的中した場合に支払われる払戻金を算出するための配当率のことです。
例えば、1番人気の本命馬ならば2.5倍とか3倍、人気薄の穴馬ならば50倍とか100倍といったオッズがつけられます。
つまり、人気が上がれば上がるほどオッズは下がり、人気が下がれば下がるほどオッズは上がるという仕組みになっています。
当然ながら、人気が高い馬のほうが勝つ確率は高くなるわけですから、人気馬の馬券を当てる人の数は多くなります。逆に、人気が低い馬は勝つ確率が低くなるので、仮に人気薄の馬が勝ったとしても、その馬券を当てる人の数はかなり少なくなります。
言い換えると、的中馬券の希少性(=的中の難易度)がオッズの高さに反映されるわけです。
もっとも、的中馬券に価値があるのであって、外れ馬券はいくらオッズが高くても価値は全くありません。
例えば、1番人気の本命馬の単勝オッズが2.5倍だとした場合、この馬の単勝式馬券を100円で買って的中すると、
100円(単勝式馬券の購入金額)×2.5(単勝オッズ)=250円(払戻金)
という計算になり、その的中馬券を精算機に持っていけば現金250円が払い戻されます。
つまり、100円を支払って150円プラスになった(儲けた)ということです。
別の言い方をすれば、その的中馬券の価値は、レース前に100円だったものが、レース後に250円まで上がったわけです。
一方、人気薄の穴馬の単勝オッズが50倍だとした場合、同じように100円分の単勝式馬券が的中すると、
100円(単勝式馬券の購入金額)×50(単勝オッズ)=5,000円(払戻金)
という計算になって、なんと同じ100円しか支払っていないのに、4,900円も儲けることができるわけです。
レース前に100円だった馬券が、レース後に5,000円まで価値が上がったわけですが、そんな価値の上がり方をした馬券は珍しいので、ごくわずかな人しか持っていない希少な馬券と言えます。
先ほどの1番人気の馬の単勝式馬券を2,000円で買って的中した場合も、
2,000円(単勝式馬券の購入金額)×2.5(単勝オッズ)=5,000円(払戻金)
となって、同じ5,000円の価値の的中馬券を手に入れることができます。
しかし、希少性という意味では、単勝オッズ50倍の穴馬を的中させた馬券の足元にもおよびません。
bookmaker(ブックメーカー)

オッズがあり、その配当率に基づいて馬券的中者に払戻金が支払われるということは、オッズを決め、払戻金を支払う者が競馬場にいるということです。
その「オッズを決め、払戻金を支払う者」には2パターンあります。
このうちの1つが、「bookmaker」と呼ばれる民間の馬券販売業者で、そのまま「ブックメーカー」と和訳されます。
もう1つは、競馬の運営者が自らオッズを決め、払戻金を支払うパターンです。
日本競馬は後者のパターンで、日本中央競馬会(JRA)や地方競馬を運営する団体が自らオッズを決め、払戻金を支払っています。
ちなみに日本国内では、前者のブックメーカーによる馬券販売は、いわゆる「ノミ行為」にあたるとして「競馬法」という法律により禁止されています(罰則あり)。
競馬の盛んなアメリカでも、日本と同様に競馬運営者が自ら馬券を販売しており、やはりブックメーカーは禁止されています。
では、どこでブックメーカーによる馬券販売が行われているかというと、それは近代競馬発祥の地であるイギリスです。
実は、ブックメーカー発祥の地もイギリスで、早くも18世紀末には、イギリスのニューマーケット競馬場でブックメーカーが賭け事を取り仕切っていたといいます。
なお、かつてイギリスの支配下にあったアイルランドやオーストラリアでもブックメーカーによる馬券の販売が行われています。
ブックメーカーの大きな特徴は、業者ごとに独自のオッズを定めていることです。
日本では考えられませんが、同じレースの同じ馬の馬券を買うのに、A業者では3倍、B業者では10倍、C業者では50倍という全く異なるオッズで馬券が販売されているのです。
しかも、ブックメーカーで買った馬券が的中した場合は、日本の場合と違って、その馬券を買った時点のオッズによって払い戻されます。
この方式を、「ブックメーカー方式(ブックメーキング方式)勝馬投票」といいます。
pari-mutuel betting(パリミュチュエル方式勝馬投票)

先ほどから「日本競馬は・・・」とか「日本の場合は・・・」と言い続けてきましたが、「だから日本の馬券はどうなってんだよ!」というイライラの声も聞こえてきそうです。
イギリスの馬券はブックメーカー方式ですが、日本やアメリカの馬券は「pari-mutuel betting」という方式で販売されています。
和訳すると「パリミュチュエル方式勝馬投票」となります。
ブックメーカー方式は、良くも悪くもブックメーカーが自分勝手にオッズを決めることができます。
一方でパリミュチュエル方式は、あくまで客観的な人気度としてオッズが計算されます。すなわち、投票数に応じてオッズが変動するのがパリミュチュエル方式です。
馬券をよく買う人はご承知のことと思いますが、日本では馬券の発売が開始されると、レースの発走数分前に発売が締め切られるまで刻々とオッズが変わっていきます。
これがまさにパリミュチュエル方式です。
そしてパリミュチュエル方式では、馬券の発売が締め切られると最終オッズが算出され、馬券が的中した場合は、購入時点のオッズではなく最終オッズによって払い戻されます。
ここもブックメーカー方式との大きな違いです(先述のとおり)。
パリミュチュエル方式では、基本的に投票数が多くなれば多くなるほど、つまり、人気が上がれば上がるほど、その馬券のオッズは下がっていきます。
これは良い面もあれば、悪い面もあります。
良い面は、オッズを見ればその馬券(馬)の人気が一目でわかることです。
悪い面は、オッズがその馬券(馬)の人気を表してはいるものの、必ずしもその馬の能力を正しく表しているとは限らないことです。
つまり、オッズが低いから(人気が高いから)といって、その馬のレースを勝つ確率が高いとは限らないのです。
例えば、能力はそこまで高くないのに、アイドル的な人気がある馬の馬券がたくさん買われると、能力以上にオッズが下がることになります。そしてオッズが下がると、それに釣られて同じ馬券を買う人がさらに増え、オッズはますます下がっていきます。
このように、パリミュチュエル方式においては、オッズはあくまで人気を表しているものだという認識を持って、数字に釣られることなく、冷静に馬の能力やレースで勝つ確率を推定することが馬券を当てるために重要となります。
なお、パリミュチュエル方式におけるオッズの計算方法は、競馬の運営者によって異なります。
日本競馬については、「競馬法」に基づき法令でオッズの計算方法が定められています。
参考書籍
「ウマ用語集2023(英和・和英)」(日本ウマ科学会)
「競馬の世界史―サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで」(本村凌二著、中央公論新社)
「知っておきたい競馬と法」(大蔵省印刷局)
参考サイト
日本中央競馬会(JRA)