いやー、ビックリした。まったくのノーマークでした、今年のヴィクトリアマイル。
YouTubeで今回のレースのライブ配信をしていたのですが、本番中に馬の名前を口に出そうとしてスッと出てこなかったくらい、まさか1着で来るとは思っていなかった馬。その名もテンハッピーローズ。
今回は、大波乱となったヴィクトリアマイル2024を振り返ります。
以下のレース展望の記事も合わせて読んでいただくと、さらにわかりやすいかと思います。
<ヴィクトリアマイル2024のレース展望>
ヴィクトリアマイル2024 レース結果
こちらがヴィクトリアマイル2024の全着順です。
勢いのある4歳勢VS実績と経験の5~6歳勢という構図になった今年のヴィクトリアマイルは、実績と人気はないが、勢いと実力があった14番人気の6歳馬テンハッピーローズが勝ちました。勝ちタイムは1分31秒8。勝ったテンハッピーローズは、もちろんGⅠは初制覇。また、重賞初勝利がこのGⅠという大舞台になりました。
そして、テンハッピーローズで見事な騎乗を見せた津村明秀騎手は、デュー21年目にして念願のGⅠ初勝利。津村騎手は、5年前、カレンブーケドールでオークス、秋華賞、ジャパンカップと3戦連続GⅠで2着、しかもどのレースも僅差で敗れるという悔しい経験をしてきただけに、このレースの勝利は本当に嬉しかったでしょう。勝利騎手インタビューでの涙がとても印象的でした。以下にそのインタビューの映像を貼っておきます。
2着には、テンハッピーローズと同じく6歳馬の4番人気フィアスプライドが入り、3着に4歳勢で最先着となる1番人気のマスクトディーヴァが入りました。結果的には、4歳勢が年上のお姉さんたちに返り討ちに合う形に。
筆者が「1強」と考えていた2番人気のナミュールは、スタートでの出遅れも響いたのか伸びを欠いて8着に沈んでしまいました。
- 優勝馬テンハッピーローズのプロフィール
- 父 エピファネイア
母 フェータルローズ(母父 タニノギムレット)
馬主 天白泰司
生産者 社台ファーム
調教師 高柳大輔(栗東)
通算成績 24戦6勝(24’GⅠヴィクトリアマイル)
ヴィクトリアマイル2024 レース展開
全馬のゲートインが完了した直後、ゲートの中で7番ハーパーが暴れて尻もちをついてしまいます。中で馬が落ち着くまで数秒待ったのち、ゲートが開きました。
しかし、暴れている馬が気になったのか、それともゲートで待たされたことが影響したのか、2番人気の10番ナミュールと11番ルージュリナージュが出遅れてしまいます。そして、13番モリアーナもソロっとスタートして後方に馬を下げていきました。
そんな中、やはり4番コンクシェルが出ムチを打ちながらハナを奪いにいきました。また、予想どおり3番スタニングローズと14番フィールシンパシーも先行争いに加わります。
スタートを決めたルメール騎手と2番フィアスプライドは、無理に後方に下げることはせずに、好位の内に馬を入れました。一方、9番テンハッピーローズは中団の馬群の中に。
スタートが心配だった6番マスクトディーヴァはうまくゲートを出て(さすがモレイラ騎手!)、やはり中団、テンハッピーローズの前にポジションを取りました。
向正面で4番コンクシェルが先頭に立ち、そこまでリードは離さずに馬群を引っ張ります。
2番フィアスプライドはここで外に出して4番手に付けます。さすが、ルメール騎手。先日のNHKマイルカップ(アスコリピチェーノ)で前が詰まった時の失敗を繰り返さないという強い意思の表れでしょうか。
一方、6番マスクトディーヴァは中団の馬群の中にいます。「あれ?NHKマイルカップのアスコリピチェーノと同じような位置にいるよ?大丈夫?」とはレース当時思いませんでしたが、奇しくもマスクトディーヴァはこのあとNHKマイルカップのデジャヴのような展開に。
9番テンハッピーローズはスタート時よりも少し後方に下げ、外目の絶好のポジション。10番ナミュールは後方から2番手。ナミュールは本来テンハッピーローズのポジションにいたかったはずですが・・・。
4番コンクシェルが逃げる形で、馬群は少し縦長になりながら第3コーナーに入ってきます。
各馬の隊列はほぼ変わらず。前半800mは前半800m45秒4。予想よりもハイペースに。
4番コンクシェルが先頭のまま各馬は第4コーナーにかかります。
ここで、中団~やや後方にいた15番ドゥアイズと9番テンハッピーローズが外からポジションを上げていきます。この2頭に外から「蓋をされた」形の6番マスクトディーヴァは馬群の中に閉じ込められて動くことができない状態。あれ?やっぱりNHKマイルカップのデジャヴ?
10番ナミュールは依然として先頭からかなり離れた位置の後方2番手にいます。ここからではなかなか前には届かないですよね。
4番コンクシェルを先頭に第4コーナーをカーブして直線に向くと、2番フィアスプライドが絶好の手ごたえで4番手の外から追い出すタイミングを計ります。
中団にいた5番ウンブライルと6番マスクトディーヴァは、フィアスプライドの手ごたえを見て「ヤバい、逃げられる!」と思ったのか、各騎手が激しく手を動かして馬にスパートを促します。
一方、楽な手ごたえで外から4コーナーを回ってきた9番テンハッピーローズは、末脚の爆発を確信したのか、津村騎手は余裕の表情(?)で手綱を持ったまま。
10番ナミュールは馬群の後ろで全く伸びそうな気配がありませんでした。
そして、今回も問題となった最後の直線。
残り400mを切って、絶好の手ごたえだった2番フィアスプライドが追い出すと、6番マスクトディーヴァのモレイラ騎手は「遅れをとるまい」と前のわずかな隙間をこじ開けようとします。しかし、その外側でスパートをかけていた15番ドゥアイズの鮫島克駿騎手もそう易々と進路を譲りません。すると、いつも冷静なモレイラ騎手も珍しくカーッとなったのか、進路を変えずにしつこくそのわずかな隙間に無理やり馬をねじ込もうとしました。結局、進路が開かなかったため、残り200m地点でようやく内側に馬を持ち出して追い込みをかけたのですが、そこですでに大勢は決していたのでした。
残り200mでフィアスプライドが先頭に立ちましたが、外からテンハッピーローズが豪脚で一気にこれに並びかけます。そして、並ぶ間もなくフィアスプライドを抜き去って1馬身4分の1のリードをとってテンハッピーローズがゴール。フィアスプライドも粘りましたが惜しくも2着に。
3着には、内に進路を変えて一気に追い込んできたマスクトディーヴァが入りました。前が壁になった時に早めに進路を変えていれば、もしかして勝っていたかも・・・と思うと、少し残念なモレイラ騎手の騎乗ぶりでした。世界的名手が、なんとも珍しい。
外から追い込んだドゥアイズが4着、11番ルージュリナージュが5着に入り、ウンブライルは6着、ナミュールは8着と人気2頭が着外に敗れる波乱に。
14番人気(単勝208.6倍!)のテンハッピーローズが勝ち、断然人気のナミュールが敗れたことで、3連単は916,640円、WIN5の的中は1票だけで配当は4億円超!なんとも凄い大波乱のレース結果でした。
YouTubeのレース映像もぜひご覧ください。
ヴィクトリアマイル2024 主な出走馬の短評
- テンハッピーローズ(1着)・・・前走の阪神牝馬S、前々走の京都牝馬Sと悪くない競馬が続いていたが、まさかここで能力が爆発するとは。1,400mの成績が目立っていたが、結果としてマイラーだったということか。この馬の末脚のキレは抜群。秋はマイルチャンピオンシップでナミュールとの再戦を期待したかったが、BCフィリー&メアターフ挑戦のプランも。以下は津村騎手のレース後コメント。
最後の直線は無我夢中で必死に追いましたが、直線がとても長く感じました。左回りが良いことは分かっていましたから末脚を信じて、4コーナーを上手くいってくれたらと思っていましたが、最高の形で直線に向けました。人気はありませんでしたが、チャンスはあると思っていました。GIレースはもう勝てないかもと、ここまで長くて長くて。でも諦めてはいけないと、GIに乗れるように朝から最終レースまで頑張ってきました。ここまで、家族の支えが一番大きいです。妻と息子二人はサッカーの試合を観に行っていますが、帰ったら抱きしめたいと思います。GIをやっと勝ちましたが、これで終わりではありません。これからも頑張ります
津村明秀騎手レース後のコメントより(netkeiba.com)
- フィアスプライド(2着)・・・東京のマイルはやはり強かった。そして、ルメール騎手の手綱さばきに脱帽。前週のNHKマイルカップ(アスコリピチェーノ)で前が詰まって2着に敗れたことを糧にして、ベストの騎乗を見せてくれた。
- マスクトディーヴァ(3着)・・・まさかモレイラ騎手が冷静さを失うとは。ある意味、「勝負根性の塊」ということも言えるか。普通に勝てていた可能性もあるだけに、惜しかった。秋は距離延長でエリザベス女王杯がよさそう。
- ドゥアイズ(4着)・・・惜しかった。マスクトディーヴァに進路を譲らなかった鮫島騎手の騎乗も見事。やはりこの馬は1,400m~1,600mが適性距離か。今後さらなる成長が期待できそう。
- ルージュリナージュ(5着)・・・外からいい脚で追い込んだ。東京適性が高い。府中牝馬ステークスあたりが面白い・・・と思ったら、次走はエプソムカップ(東京、芝1,800m)とのこと。好走を期待。
- ウンブライル(6着)・・・パドックで少しテンションがおかしかった。ハマると強いが、ムラがあるのが弱点。巻き返しは可能。
- モリアーナ(7着)・・・いい脚で追い込んできてはいるが、馬体重も増えていて体が重かったかも。距離ももっと長めがよさそう。
- ナミュール(8着)・・・出遅れは痛かったが、それにしても伸びなかった。ドバイ帰りで調整不足だったか?本来の能力はこんなものではないはず。次走は安田記念。中2週で使うということは、やはりここは一叩きか。状態の見極めが必要。
今後の見どころ
勝ったテンハッピーローズは、もしかすると「一世一代の大駆け」、悪い言い方をすると「一発屋」の可能性もありますが、あの末脚を見る限り、そしてこれまでの成長過程を見れば、今後も十分に活躍してくれるだろうと期待しています。
秋は米国ブリーダーズカップのフィリー&メアターフ(デルマ―競馬場、芝2,200m)を目指すということで、挑戦としては面白いですが、果たしてテンハッピーローズにとって適性のある舞台なのかと言われると、全く未知数です。ぶっつけ挑戦はないでしょうから、次走(ステップレース)でどのような走りを見せてくれるか楽しみです。
マスクトディーヴァは、やはりマイルは少し短い気がするので、秋はエリザベス女王杯を目指すといいと思います。同じ京都競馬場の秋華賞でリバティアイランドに迫る走りを見せていますので、距離・舞台ともに初GⅠ制覇にはうってつけでしょう。
そして、不可解な敗戦のナミュール。決して東京のマイルが合わないわけではないと思うのですが、昨年も集中力を欠いてしまうような走りを見せていましたので、出遅れなどのアクシデントに対するメンタル維持が苦手なのかもしれません。爆発力はあるだけに、次走の安田記念でアクシデントがないことを祈ります。
厳選6頭の結果
最後に、レース展望でピックアップしたヴィクトリアマイル2024の厳選6頭の結果をお伝えします。
さすがに今回は当たりませんでしたが、ドゥアイズは惜しかったなあ。YouTubeのライブ配信もぜひご視聴ください。切り抜き動画もおすすめですよ。
- ヴィクトリアマイル2024 厳選6頭の結果
- S評価 10番ナミュール→8着
A評価 6番マスクトディーヴァ→3着 13番モリアーナ→7着
穴評価 15番ドゥアイズ→4着 5番ウンブライル→6着 7番ハーパー→15着