いやー、いいものを見せてもらった。今年のジャパンカップ。
勝ったイクイノックスは当然として、他の出走馬たちもそれぞれにベストを尽くしたレースでした。それゆえに、見たものを感動させるのでしょう。
本当に、お馬さんたち、そして関係者の方たち、よく頑張りました!ありがとう!
ということで、そのジャパンカップを振り返りたいと思います。
レース映像はこちらをご覧ください。
レース展開
やはり、稀代の逃げ馬8番パンサラッサがスタートから一気に先頭に立ちました。そこまで無理に追っていたわけではなく、自然な感じで先頭に立てたのは馬の調子がよかったからでしょう。
続いて、これも予想どおり3番タイトルホルダーが2番手につけました。この馬が実質的なペースメーカーとなります。
そして、注目の1枠の2頭、1番リバティアイランドと2番イクイノックスはまずまずのスタートからタイトルホルダーのうしろ3、4番手につけます。
一番おどろいたのは、17番スターズオンアース。8枠から何のためらいもなくリバティの外、5番手につけました。久々の競馬でしたし、後ろから末脚にかける走りをするかと思いきや、イクイノックス、リバティをマークして積極的な競馬です。
5番ドウデュースもやはり人気2頭をマークして中団前目で進めました。
逃げた8番パンサラッサはぐんぐんと加速し、あっという間に後続を10馬身近く引き離してしまいました。隊列も縦長になります。
後続は3番タイトルホルダーを先頭に、2番イクイノックス、1番リバティアイランド、17番スターズオンアース、5番ドウデュースと続きます。イクイノックスを負かしに行った4頭がイクイノックスを取り囲み、なんだかんだでこの4頭が2~5着までを独占したというのは面白い結果です。
末脚勝負の9番ヴェラアズールと10番ダノンベルーガは中団から後方の位置どりでした。
向こう正面のバックストレッチに入ると8番パンサラッサのリードはさらに広がり、前半1,000mは57秒6という超ハイペースを刻みました。
2番手以下はほぼ隊列が変わらず、2番イクイノックスを中心に有力馬5頭が先団に固まって3コーナーに向かいます。
リードを保ったまま8番パンサラッサが4コーナーをカーブしたときには、3番タイトルホルダー以下各馬はまだ3~4コーナーの中間にいました。
有力5頭の位置は変わらずですが、内でジッとしていた5番ドウデュースは17番スターズオンアースの外に出そうとしています。後方にいた9番ヴェラアズールは内を、10番ダノンベルーガは外を狙っていました。
残り400mを過ぎても8番パンサラッサのリードは10馬身以上ありましたが、ここから往年の名馬ツインターボのごとく逆噴射モードに。一気に減速してしまいました。
すると、来た来た来た!2番イクイノックスが持ったままで前のタイトルホルダーをとらえて、さらにパンサラッサにも迫ります。
1番リバティアイランドと17番スターズオンアースもイクイノックスを追いかけますが、イクイノックスのスピードについていけません。
5番ドウデュースと10番ダノンベルーガは外に出して追い込み態勢に。
残り200mで2番イクイノックスが8番パンサラッサを一気に抜き去り先頭に。
1番リバティアイランドと17番スターズオンアースも3番タイトルホルダーを交わして追い込みますがイクイノックスとの差は広がる一方。5番ドウデュースも外からようやく来ましたがダービーの時のような強烈な末脚とまではいきません。
イクイノックスは結局肩ムチ1発だけで楽々抜け出して4馬身のリードでゴール!
リバティも最後まで他馬に抜かせることなく2着でゴール。スターズオンアース、ドウデュースが3、4着に入り、タイトルホルダーも5着に粘り切りました。
ダノンベルーガとヴェラアズールの末脚は不発に終わり、それぞれ6着と7着。注目の外国馬イレジンは、やはり日本のかたい馬場が合わなかったのか9着と惨敗しました。
リバティアイランドにも感動
多くのファンの感想を想像すると、おそらくこうではないでしょうか?
「望んでいたレースになってよかった。」
イクイノックスが負ける姿は見たくないし、想像もできない。でも、リバティアイランドにはイクイノックスに食い下がってほしい。あわよくば、イクイノックスに一泡吹かせてほしい、と。
一泡を吹かせることはできませんでしたが、リバティアイランドの意地と強さは十分に見せてもらいました。川田騎手も「素晴らしい走り。素晴らしい経験」と愛馬の健闘に感動していた様子。そして、検量室に戻って来たときも川田騎手はポンポンとリバティの首筋をたたいて称え、厩務員さんは「よくやった」という感じでリバティを優しく撫でていました。リバティもどこかすがすがしい柔らかい表情をしていたのが印象的です。
イクイノックスはこれで引退するかもしれませんが、今度はリバティアイランドが世界一を目指して頑張ってくれるでしょう。
強かったスターズオンアース・ドウデュース・タイトルホルダー
忘れてはならないのは、3着~5着に入ったスターズオンアース・ドウデュース・タイトルホルダーのGⅠホースたち。
3着スターズオンアースは、イギリスNo.1ジョッキーのビュイック騎手が積極的な競馬でイクイノックスとリバティアイランドにしっかり食いついていきました。春のヴィクトリアマイル以来の競馬で12kgの馬体重増もあり心配していましたが、このレースでこの馬の強さを再認識できました。距離は長めのほうがよさそうですが、来年もリバティはこの馬の存在を無視できないでしょう、
そして、4着ドウデュース。またこの馬の強さが見られて本当によかった。天皇賞(秋)の惨敗を見て「このまま終わってしまったらどうしよう」と心配でしたが、ドウデュースは終わってなかった!武豊騎手の負傷により天皇賞に引き続いて手綱をとった戸崎圭太騎手も、今回はこの馬のレースに徹したのがよかったのでしょう。ベストは尽くしたという印象です。ただ、イクイノックスとは埋められないほどの差がついてしまいました。
5着タイトルホルダーは、おそらく東京2,400mという舞台はそこまで得意ではないはず。天皇賞(春)で競走中止してしまい、調教も思ったように負荷がかけられなかったと思いますが、それでもこのメンバーでの5着は立派です。この馬にはもう一度、天皇賞(春)に挑戦してほしいと思いますし、有馬記念に出るならかなり楽しみです。
イクイノックスはやはり世界一だった
最後に、優勝馬イクイノックスへ一言。
「ありがとう。そして、お疲れ様。あなたは、やはり世界一でした。」
もうこれ以上言うことはありません。レース後のルメール騎手と木村調教師の涙がすべてを物語っています。
ジャパンカップを最後に引退する噂がありますが、そうだとすると唯一の心残りをあえて言わせてもらえば、
「凱旋門賞でイクイノックスを見たかった」
宝塚記念で負かしたスルーセブンシーズが今年の凱旋門賞で4着に入りましたし、同2着のウエストオーバーはドバイシーマクラシックでぶっちぎった相手です。今年のパフォーマンスであれば、日本生産馬、日本調教馬初の凱旋門賞制覇が見られたような気がします。
ですが、この秋、イクイノックスの神がかった感動のレースを2つも見ることができたのは、日本でのレースに集中してくれたおかげでもあります。その点は感謝したいと思います。
イクイノックスの負ける姿は見たくない。
あとは、あなたを超えるスーパーホース、凱旋門賞馬を生産してください。その競走馬としての完璧な素質を後世に引き継いでくれれば、きっと夢の凱旋門賞制覇も叶うはずです!
それと。
忘れてはならないレースのもう1頭の主役、パンサラッサ。これで引退のようです。本当にお疲れ様。昨年の天皇賞(秋)のイクイノックスとの対決は楽しませてもらいました。最後まで逃げ続けて疲れたでしょう。種牡馬になれるかわかりませんが、これからはゆっくり過ごしてくださいね。