![【1997年】相関図と名実況で振り返る競馬史【スターホース続々】](https://toproadoor.net/wp-content/uploads/2023/08/1997競馬史.jpeg)
サッカー日本代表が初のワールドカップ出場を決めた1997年。
競馬界では、フェブラリーステークスがGⅠに昇格(JRA初のダートGⅠ)、ダート界で無双状態だったホクトベガがドバイワールドカップで無念の競走中止(安楽死処分)、サクラローレルが凱旋門賞挑戦目前で屈腱炎により引退、といったニュースがありました。
前回に引き続き、当時活躍した競走馬たちの相関図とレースの名実況を見ながら、1997年の競馬を振り返っていこうと思います。
<前回の記事はこちら>
1997年競馬界の相関図
早速ですが、こちらが1997年に活躍した競走馬たちの相関図になります。
![](https://toproadoor.net/wp-content/uploads/2023/08/1997年競馬界相関図-1024x576.jpg)
・縦軸が馬の距離適性(上側が長距離向き、下側が短距離向き)、横軸が馬齢(右側が高齢、左側が若齢)を示しています。
・主に芝レースでの相関図を示しています。ダートについては、左上に別枠で記載しています。
・馬名が書いてある○の大きさは当時の年間レーティング(筆者が独自に5点満点で評価)を示していて、上の図で言うとエアグルーヴがトップの5点、マヤノトップガンが4点、バブルガムフェローが3点、ローゼンカバリーが2点となります。構成の都合上、1点の馬と2点の馬(代表的な馬を除く)は表記を省略しています。
・馬の○と○を結んでいる矢印←は、その年のレースで1着になった馬(矢印の根元)と同じレースでその馬に負けた馬(矢印の先)との関係を示しています。上の図で言うと、エアグルーヴは自らが勝った天皇賞(秋)でバブルガムフェローを負かしていますので、前者から後者に向かって矢印が伸びています。
・青い星印★はサンデーサイレンス産駒であることを示しています。
この年の年度代表馬であるエアグルーヴが力関係では上になりますが、世代別で見ると3歳世代の充実ぶりが目立っています。逆に、5歳・6歳世代の存在感が薄くなっています。
そして、1996年に大活躍したサンデーサイレンス産駒ですが、1997年はマーベラスサンデーが宝塚記念を勝ったのみで、それ以外に目立った活躍馬はいませんでした。3歳世代に至っては、活躍馬は全て非サンデーです(名馬サイレンススズカが潜んでいますが)。
と言うことで、次からは1997年の各路線を名実況とともに振り返りたいと思います。
古馬 中長距離戦線
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・牝馬としては17年ぶりに天皇賞(秋)を勝ったエアグルーヴが年度代表馬に
・マヤノトップガンがサクラローレル、マーベラスサンデーとの3強対決を制して天皇賞(春)優勝
・マーベラスサンデーが宝塚記念で悲願のGⅠ初制覇
・エリモシックがエリザベス女王杯を制し、ダンスパートナーの2連覇を阻止
・3歳馬のシルクジャスティスがマーベラスサンデーやエアグルーヴを抑えて有馬記念制覇
それでは、この年の名レースを名実況とともに見ていきましょう。
3強のデッドヒート 1997年天皇賞(春)
前年の天皇賞(春)ではナリタブライアンとの一騎打ちムードだったマヤノトップガン。
しかし、その一騎打ちムードを驚愕の強さでぶち壊したのがサクラローレルでした。
前年の年度代表馬となったサクラローレルは有馬記念からぶっつけ。一方、マヤノトップガンは前走の阪神大賞典でまさかの最後方からの競馬で圧勝。前年有馬記念2着のマーベラスサンデーは大阪杯を完勝し、2頭は万全の状態で天皇賞(春)にサクラローレルを迎え撃ちます。
では、杉本清アナウンサーの名実況とともに実際のレースをご覧くだささい。
おー、外から何か1頭突っ込んでくる。トップガン来た!トップガン来た!トップガン来た!
関西テレビ 杉本清アナウンサー
このレースでも後方待機策を取ったマヤノトップガンでしたが、サクラローレルとマーベラスサンデーが4コーナーで並んで先頭に立とうとする中、1頭だけ後方に取り残される形となりました。
杉本アナウンサーも「これから届くのか!?」と実況していましたが、ファンもこの時には絶望感に包まれていたと思います。
サクラとマーベラスの2頭がデッドヒートを繰り広げる中、1頭だけ次元の違う脚で突っ込んできたトップガン。
この3強のレースは、杉本アナウンサーの実況とともに見ると今でも鳥肌が立ちます。
最強牝馬誕生 1997年天皇賞(秋)
サクラローレルとマヤノトップガンが故障で引退し、マーベラスサンデーも故障で休養中。
そんな中の天皇賞(秋)の1番人気は前年の覇者バブルガムフェローでした。
同じ世代の牝馬では抜けた存在だった2番人気のエアグルーヴでしたが、前走の札幌記念で牡馬相手に完勝していたとは言え、バブルガムフェロー相手では厳しいと多くのファンは思っていました。
では、JRA公式チャンネルの動画で実際のレースをご覧ください。
公式の動画はアップされていないのですが、このレースの本当の名実況はフジテレビの三宅正治アナウンサーです(非公式の動画はいくつかアップされていますので、よかったら見てみてください)。
バブルか!エアか!バブルか!エアか!エアグルーヴ!恐ろしい馬です!恐ろしい馬だ!
フジテレビ 三宅正治アナウンサー
快速3歳馬サイレンススズカが超ハイペースで逃げる中、直線残り100mはエアグルーヴとバブルガムフェローのマッチレースと化しました。
しかし、エアグルーヴはクビ差を保ったまま、バブルガムフェローに1度も抜かせようとはしませんでした。
まさに三宅アナウンサーの実況のとおり、エアグルーヴが恐ろしく強い馬だということをファンは思い知ったのでした。
古馬 短距離戦線
![](https://toproadoor.net/wp-content/uploads/2023/08/1997短距離-1024x414.jpg)
・3歳馬タイキシャトルがマイルチャンピオンシップとスプリンターズステークスを連覇
・タイキ軍団の最先鋒タイキブリザードが安田記念で悲願のGⅠ初制覇
・タイキ軍団と同じチーム(藤沢厩舎、岡部騎手)のシンコウキングが雨の高松宮記念を制覇
藤沢和雄厩舎が短距離GⅠを完全制覇した1997年でしたが、このうちの1レースを名実況とともに見ていきましょう。
悲願のGⅠ初制覇 1997年安田記念
前年の安田記念2着、前々年の安田記念は3着。
その他にも宝塚記念2着、有馬記念2着などGⅠでの好走は多いものの、なかなか1着が取れなかったタイキブリザード。
海外遠征帰りとなった前走の京王杯スプリングカップでは危なげない勝利を挙げ、レース当日は1番人気に推されました。しかし、レースでは思わぬ苦戦を強いられます。
では、JRA公式チャンネルの動画で実際のレースをご覧ください。
このレースも本当の名実況はフジテレビの青嶋達也アナウンサーです(非公式の動画はいくつかアップされていますので、よかったら見てみてください)。
今度こそ!今度こそ!今度こそ!今度こそ勝ったー!タイキブリザード、今度こそ勝ったー!
フジテレビ 青嶋達也アナウンサー
直線に向くと皐月賞馬ジェニュインが絶好の手応えで先頭に立ちます。
タイキブリザードで後方にいた岡部幸雄騎手は、ジェニュインの主戦騎手も務めていました。ジェニュインの強さを知っている岡部騎手は焦ります。「これは(自分は)勝てないのでないか。」と。
岡部騎手は必死にムチを打って追い上げ、タイキブリザードもそれに応えるようにゴール前50mでジェニュインを捉えて1着でゴール。
岡部騎手とタイキブリザードの絆に思わず感動したレースでした。
クラシック戦線
![](https://toproadoor.net/wp-content/uploads/2023/08/1997クラシック-557x1024.jpg)
・伏兵サニーブライアンが皐月賞と日本ダービーを勝って2冠達成(その後に故障で引退)
・メジロドーベルがオークスと秋華賞を勝って牝馬2冠達成
・快速逃げ馬キョウエイマーチがメジロドーベルをぶっちぎって桜花賞制覇
・マチカネフクキタルが神戸新聞杯、京都新聞杯に続いて菊花賞も勝って重賞3連勝
・外国産馬シーキングザパールがNHKマイルカップを圧勝
この年のクラシックはメジロライアン産駒の2頭、メジロブライトとメジロドーベルが主役になると目されていました。
しかし、牡馬クラシックは思わぬスターホースの出現でひっくり返ることになります。
それでは、そのスターホースのレースを名実況とともに見ていきましょう。
痛快な逃走劇 1997年日本ダービー
11番人気という低評価の中で皐月賞を逃げ切ったサニーブライアン。
2冠目を目指す日本ダービーでは、皐月賞がフロック(まぐれ)だったとの見方が多く、6番人気に留まりました。1番人気は、皐月賞で4着だったメジロブライト。
皐月賞と同じ18番枠から飛び出したサニーブライアンは、猛然とダッシュして先頭に立ちます。
では、三宅正治アナウンサーの名実況とともに実際のレースをご覧くだささい。
サニーブライアンだ!サニーブライアンだ!これはもう!フロックでも!何でもない!2冠達成!
フジテレビ 三宅正治アナウンサー
4コーナーで後続を引きつけたサニーブライアンは、直線に向くと抜群の手応えで一瞬にして後続を突き放します。
「直線が(皐月賞よりも)短く感じた」と語った大西直宏騎手。500mもある東京競馬場の直線を愛馬を信じて駆け抜け、鮮やかに逃げ切りました。
「1番人気はいらないから、1着だけ欲しい」と、レースぶりから騎手のコメントまで全てが痛快なレースでした。
2歳戦線
![](https://toproadoor.net/wp-content/uploads/2023/08/19972歳-1.jpg)
・外国産馬グラスワンダーが脅威的な強さで朝日杯3歳ステークスをレコード勝ち
・7番人気の伏兵アインブライドが阪神3歳牝馬ステークス制覇
外国産馬が猛威を振るった2歳牡馬路線。その中でも、飛び抜けて強い栗毛の怪物が現れました。
それでは、その怪物の走りを名実況とともに見ていきましょう。
新しい栗毛の怪物 1997年朝日杯3歳ステークス
前走の京成杯3歳ステークスで重賞勝ち馬を相手に6馬身差をつけて圧勝したグラスワンダー。
この年の3歳(現在でいう2歳)のチャンピオンを決める朝日杯は、何が勝つか、ではなく、グラスワンダーがどのくらいの差をつけて勝つかに注目が集まりました。
では、その「答え合わせ」を三宅正治アナウンサーの名実況とともにご覧くだささい
やっぱり強いグラスワンダー!これが新しい栗毛の怪物!勝ちタイムが何と、1分33秒6!見たか、このタイム!マルゼンスキーの再来です!
フジテレビ 三宅正治アナウンサー
超ハイペースで流れたレースの中で、中団から悠然とまくってくると、直線では的場均騎手のムチに応えて豪快なストライドで後続を突き放しました。
着差は前走ほどではありませんでしたが、当時の3歳レコードで勝ったその走りっぷりと、どこまでも突き抜けそうな末脚に、「怪物」という表現がピッタリのレースとなりました。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
鮮やかな記憶とともにターフから去っていった名馬、今も伝説となっている名馬など競馬の面白さがギュッと凝縮した年だったように振り返りました。
次回は1998年の競馬を振り返ってみたいと思いますので、是非そちらもご覧ください!